ワイン好きのあの人は、ワインと共にどんな本を楽しんでいるのでしょうか。ワインが登場する本はもちろん、ワインでほろ酔いになることでより世界観に没入できる小説など、その楽しみ方も組み合わせも様々です。
今回はワイン好きとして知られる眞鍋かをりさん、ワインライターの葉山考太郎さん、二子玉川 蔦屋家電の文学コンシェルジュ松本泰尭さんに、〝ワインが飲みたくなるおすすめの本〟をお伺いしました。
芸術の秋はワインを飲みながら読書を楽しんでみませんか。
タレント 眞鍋かをりさんが語る、ワイン×本の楽しみ方
愛媛県西条市出身。横浜国立大学卒業。大学在学中からタレント活動を始める。 30歳から海外一人旅にハマり、訪れた国と地域は20以上。その経験を綴った『世界をひとりで歩いてみた』(祥伝社)も話題となる。また、趣味が高じてチーズとワインの資格も取得。パリ発祥の名門ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」でも講座を持つなど、活動の幅を拡げている。
読書家というほどではないけれど、旅のお供に本は欠かせません。普段は小説よりも、エッセイやノンフィクション、そして漫画を手に取ることが多いです。家でゆっくりページをめくる時間はなかなか取れないので、読書の大半は移動中。仕事で新幹線や飛行機に乗っている間は貴重な読書タイムですが、やはり旅の道中やホテルの部屋でKindleを開く瞬間のほうが、贅沢な時間に感じます。
旅先で読む本は、その土地の空気や風景と溶け合い、深く記憶に残ります。「この本を読んでいたとき、窓の外に見えたのはロンドン・アールズコートの煉瓦造りの建物だったな」とか、「アテネのカフェでヨーグルトを食べながら読んでいた本だな」とか。本と五感が自然と結びついて、旅の記憶に奥行きをもたらしてくれます。
エッセイや軽やかな読みものには、爽やかでフレッシュな白ワインがよく合います。なかでも好きなのは、南アフリカやニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン。グラスから広がる華やかな香りに、気分もふわりと軽くなります。
読みながらつまむのは、やっぱりチーズ。お気に入りは、フランス・ローヌ地方の「サン・マルスラン」。フレッシュなのにコクがあり、クリーミーな舌ざわりがたまりません。とろけるようなチーズをスプーンで少しずつすくいながら、ワインと交互に味わう。ページをめくる手を止めて、その土地の景色や空気にふっと意識を向ける――そんな瞬間が、読書の時間をより豊かなものにしてくれます。
このチーズ、ヨーロッパの都市ではスーパーで売っていたりもしますが、日本ではなかなかレアなので、いつもオンラインで取り寄せています。気になるチーズがありすぎて毎回迷ってしまうし、せっかく送料をかけるならと、つい多めに注文してしまうのもお決まりのパターン。でも、チーズもワインと同じように、造り手のこだわりや情熱が詰まっていて、選ぶ時間もまた楽しいものです。なかには「熟成士」と呼ばれるプロによって仕上げられたチーズもあり、その風味の深さには驚かされます。
一方で、本の世界に深く入り込みたいときは、しっかりした赤ワインをゆっくり楽しみながら、重めのテーマの本を読みます。量子力学や生命科学といった理系分野の最新研究を文系にもわかりやすく解説した本に惹かれることが多いです。そんなときのお供には、「江丹別の青いチーズ」を使ったレアチーズケーキやバスクチーズケーキが最高。ブルーのほのかな塩気とクリーミーさが、赤ワインに驚くほどよく合います。デザートとワインに満たされながら、人類がたどり着いた最新の叡智に酔いしれるのもいいものです。
ワインも本も、いまの自分の気分を映し出し、ときにはそっと引き上げてくれるもの。これからも人生にそっと寄り添い、彩ってくれる存在でいてほしいなと思います。
眞鍋さんのワインが飲みたくなる本:『君の名前で僕を呼んで』
映画が素晴らしかったので、思わず小説も手に取りました。北イタリアの夏の眩しさと、少年の繊細で甘酸っぱい心の揺れが、より鮮やかに描かれ、瑞々しい果実のように香り立つ一冊。
ペアリングはこんなワインがおすすめ!
チャーミングな果実感がイメージに合うフランチャコルタ。
眞鍋さんのワインが飲みたくなる本:『宇宙一わかりやすい「量子力学」大全』
目に見えない力や“なんとなく”で片づけていた現象に、科学がここまで迫れるのかと感動。きっとワインが私たちを幸せにする理由にも、量子の秘密があるはず。
ペアリングはこんなワインがおすすめ!
しっかりとした深みを感じるカリフォルニアのジンファンデル。
ヴィントナーズ・リザーヴ ジンファンデル
赤
リッチ&グラマー
幅広いラインナップを手掛ける、カリフォルニアのワイナリーの人気シリーズ。カリフォルニアの代表品種から生み出される、深い凝縮感を備えた甘美な味わい。 詳細を見る
4.2
(47件)2022年
4,290 円
(税込)
眞鍋さんのワインが飲みたくなる本:『フロマジェが教えるおいしいチーズの新常識』
チーズがもっと好きになる一冊。わかりやすくておいしそうで、読むのが楽しい。日本のチーズショップの草分け「フェルミエ」で接客してくれたあの素敵なフロマジェさんの本だ!と気づいて、なんだか嬉しくなりました。
ペアリングはこんなワインがおすすめ!
懐が深くどんなチーズにも合わせやすいふくよかなシャルドネ。
ピュリニー・モンラッシェ
白
エレガント&ミネラリー
ドメーヌ・ルフレーヴの流れを汲む、白ワインの名手。ピュリニー・モンラッシェ村のブドウをブレンドした、エレガントな果実味とミネラル感が特徴の気品漂う味わ 詳細を見る
4.5
(44件)2022年
18,700 円
(税込)
JS 94
ワインライター 葉山考太郎さんが語る、ワイン×本の楽しみ方
年間400リットル超のシャンパーニュとブルゴーニュを飲むお笑い系ワインライター。 2010年にシャンパーニュ騎士団オフィシエを受章。座右の銘は「棚からボタ餅」と「漁夫の利」。 主な著書に『クイズでワイン通』『今夜使えるワインの小ネタ』(講談社)。
世界で最も贅沢な読書は、まず土曜日の朝、携帯電話のアラームじゃなく自然に目を覚ます。キッチンで昨晩の残り物を一皿に盛り、カチカチに冷えたシャンパーニュを1本持って、ベッドへ戻る。コルクを抜き、残り50ページになったミステリーをゆっくり読む。いよいよ犯人が分かるぞ、犯人がどこでヘマをした? 作者はどうやって密室の伏線を回収するの? 1ページ繰るたびに、シャンパーニュを一口飲み、食べ物を小さく切って口に入れ、ダラダラ楽しむのだ。
この「王様の2時間」を過ごすには、一週間前から準備が欠かせない。日曜日はミステリーとシャンパーニュを仕入れる。
本を読み始めるのは月曜日の朝の通勤電車の中なので、「明日は月曜日かぁ」という「日曜の夜の憂鬱」は、「明日、読む本はどんな本? 土曜のシャンパーニュはどんな香り?」とのワクワクに大変身する。翌週の金曜の夜は、最終章を残しておくこと。300ページの本なら、通勤の行きと帰りで1日50ページ。土曜日に最後の50ページが残る。なお、仕入れるミステリーとシャンパーニュは、衝動買いしよう。いつも通りじゃない予想外の逸品に出会える。
葉山さんのワインが飲みたくなる本:『不連続殺人事件』
坂口安吾は『堕落論』『桜の森の満開の下』を書き、芥川賞の選考委員も務めたガチの純文学作家。実はミステリーも多数書いていて、代表作が本書。トリックが秀逸(反対意見あり)。最初は坂口特有の文体で読みにくいが、実は、この文体もトリックなのだ。
ペアリングはこんなワインがおすすめ!
熟成感のあるノミネ・ルナールのヴィンテージ・シャンパーニュ。
葉山さんのワインが飲みたくなる本:『そして誰もいなくなった』
初めて推理小説を読むなら本書で決まり。ミステリーの禁じ手を連発するクリスティーだが、本書は正統派。「孤島の全員が死ぬ」プロットが秀逸。話が上手く、謎解きも絶品。英国が誇る推理小説界の「ラ・グランダム(偉大な女性)」にはこの泡を。
ペアリングはこんなワインがおすすめ!
推理小説の女王にはヴーヴ・クリコのラ・グランダム。
葉山さんのワインが飲みたくなる本:『占星術殺人事件』
拙宅の図書室には千冊超の推理小説があり、三千人以上が殺されている。その中で最も印象的な方法で6人を殺すのが本書。読了後「ウマく騙された!」と爽快になる。日本が誇る古典的名作ミステリーには、爽快感と熟成感のある泡がピッタリ。
ペアリングはこんなワインがおすすめ!
熟成感と爽快感のあるポール・デテュンヌのブラン・ド・ブラン。
文学コンシェルジュ 松本さんが語る、ワイン×本の楽しみ方
二子玉川 蔦屋家電 店長・文学コンシェルジュ。海外文学と映画とファッションとMLBが好き。好きな作家は絲山秋子、長嶋有、ジョナサン・フランゼン、J.M.クッツェーなど。ワインは食前酒にスパークリング、肉には赤、魚には白の冒険しない派。 【二子玉川 蔦屋家電】 2015年5月、複合商業施設「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」内にオープン。 BOOK & CAFEの空間で、コンシェルジュがライフスタイルを提案する新しいスタイルの家電店です。
日々仕事をしていると一日の中で本を読める時間は限られていて、なにかの隙間時間に本を読むことが多いです。私の場合はだいたいが通勤中か入浴中になるので、どちらもワインを飲むには適さない環境です。ただ飲めないとなると逆に飲みたくなるのが人間の性というもので、美味しそうな描写を読むと、つい喉がアルコールを求めてしまいます。
私は海外文学が好きでよく読むのですが、海外の小説には実に様々なお酒が出てきます。銘柄には詳しくないので、お酒の名前が出てくるとそれがどんな見た目で、どんな味なのだろうと想像しながら読むのも楽しみのひとつです。ワインというと格式高いイメージがありますが、私はどちらかというとそんなに高くないワインのボトルをお店で頼んで、みんなで他愛のない会話をしながらグイグイと飲んでいくのが好きです。それもこれもやはり今まで読んできた小説の登場人物たちがガブガブとワインを水のように飲んでいる姿からの影響なのでしょう。飲みすぎてぐでんぐでんに酔っぱらっている姿もまた人間くさくて、それを描くのが文学だよなぁと実感できるのも読書の醍醐味です。
松本さんのワインが飲みたくなる本:『日はまた昇る』
この本を読んだのはちょうど大学生になったばかりの頃。酒ばかり飲んでいる登場人物たちが、むき出しの命で放埓な日々を送る姿に若き日の自分の感受性は鷲掴みされました。こんな風に気取らずにワインをあおってみたい。はじめてワインの飲み方を学んだ1冊です。
ペアリングはこんなワインがおすすめ!
芳醇なアロマが魅力のエレガントで女性的なボルドーワイン。
レゼルヴ・ムートン・カデ・マルゴー
赤
パワフル&ストラクチャー
格付け第一級シャトーが手掛ける、ムートン・カデの上級シリーズ。銘醸地マルゴーのブドウを贅沢に使用。芳醇なアロマ漂う、エレガントな味わい。 詳細を見る
3.8
(19件)2021年
7,700 円
(税込)
松本さんのワインが飲みたくなる本:『勝手に生きろ!』
ブコウスキーの小説に気品は存在しません。あるのはダメ男が仕事でヘマをしながらも悪びれずに女と遊んでワインばかり飲んで過ごす話ばかりです。はっきり言って自分とは遠い世界の話ですが、だからこそ憧れを持ってしまいます。一度でいいからこんな風に生きてみたい!そんな思いが詰まった1冊です。
ペアリングはこんなワインがおすすめ!
デイリーワインにもおすすめの豊かな果実味を感じる赤ワイン。
ロッソ・アンド・ビアンコ ロッソ
赤
リッチ&グラマー
映画界の巨匠、コッポラ氏が設立したワイナリー。ジューシーな果実味に甘いスパイスが融合した、しなやかなスタイルが魅力。 詳細を見る
3.8
(11件)2,640 円
(税込)
松本さんのワインが飲みたくなる本:『火山の下』
お酒に溺れた主人公がメキシコの狂乱の中で過ごす一日を描いた小説ですが、これが長大かつ難解。正直読みながらヘトヘトになる内容ですが、それこそ主人公よろしくお酒の力を借りながらちびちび読むぐらいがちょうどいいのかもしれません。とにかくお酒がこれでもかというぐらい出てきます。
ペアリングはこんなワインがおすすめ!
シャルドネを使ったリッチでクリーミーなボリューム感のある白ワイン。
エスクード・ロホ・グラン・レゼルヴァ・シャルドネ
白
リッチ&コンプレックス
ボルドー最高峰の技術を惜しみなく注ぎ込み、チリの豊かな陽光で育まれたブドウで造る、リッチでクリーミーなシャルドネ。 詳細を見る
4.1
(91件)2023年
2,310 円
(税込)
V 90
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