ボルドー右岸の代表産地「サン・テミリオン」で造られるワインの魅力

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公開日 : 2020.12.24
更新日 : 2023.1.20
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ボルドー右岸の代表産地「サン・テミリオン」で造られるワインの魅力

ボルドーの格付けと言えば5大シャトーを有するメドックの格付けが有名ですが、ソーテルヌやグラーヴなどボルドー内の他のエリアにも格付けはあります。


中でも、ボルドー右岸のサン・テミリオンの格付けは他のエリアの格付けに比べて非常に厳しく、ボルドーの格付けの中では最も信頼できるものと言われています。


今回はそんなサン・テミリオンのワインと格付けについて解説します。


サン・テミリオンの一覧を見る
目次

サン・テミリオンとは?

サン・テミリオンの地図

フランス南西部の大西洋沿いに広がるボルドーのブドウ畑は、ピレネー山脈から流れるガロンヌ川と中央山塊から流れるドルドーニュ川、そしてその二つの川がボルドー市のすぐ北で合流して大西洋に注ぎ込むジロンド川、これら三つの川の周囲に広がっています。


サン・テミリオンはドルドーニュ川右岸に位置する歴史的な町サン・テミリオンを拠点に広がるワイン産地で、ドルドーニュ川の支流バルバンヌ川を挟んで北側には、サンテミオンの名がつく四つのA.O.C.があり、それらをサン・テミリオン衛生地区と呼んでいます。

サン・テミリオンの風景

ボルドー右岸と呼ばれるエリアの中でもサン・テミリオンは非常に広大で、5000haの土地に約1000ものシャトーが密集しています。


A.O.C.サン・テミリオンはサン・テミリオンの町を中心とする九つの市町村に認められており、1999年にはリブルヌ市を除く8町村が世界で初めてワイン産地としてユネスコの世界遺産に登録されました。


ボルドーの気候は大西洋を流れる暖かなメキシコ湾流の影響により温暖な海洋性気候ですが、他のエリアに比べてサン・テミリオンは内陸に位置するため、昼夜の気温差はやや大きくなります。


また、土壌はサン・テミリオンもその衛生地区も概ね石灰岩を母岩にもつ粘土石灰質ですが、サン・テミリオンの丘の斜面や台地、ドルドーニュ川に近い平野部などで土壌は異なり、同じサン・テミリオン内でも複雑で変化に富んでいます。


サン・テミリオンは大きく二つの地域に分けられます。一つは「コート」と呼ばれるサン・テミリオンの町を囲む石灰岩系の丘陵地帯。一方は、ポムロルと隣接する北西部の「グラーヴ」で、言葉の通り石灰質と砂利・粘土質の土壌です。

ワインの特徴

赤ワイン

サン・テミリオンで栽培されている主なブドウ品種はメルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベック(コット)、カルムネール、プティ・ヴェルド。これらの六つの黒ブドウ品種がA.O.C.サン・テミリオンを名乗るのに認められています(※1)。


ただ、実際にはサン・テミリオンの多くのワインがメルロ主体で、それにカベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドして造られています。


一般的にサン・テミリオンのワインは、ボルドー左岸のカベルネ・ソーヴィニヨン主体で造られる力強くタンニンが豊富なワインに比べて、柔らかく滑らかでふくよかなワインとなります。


サン・テミリオンの土壌の違いは前述の通りで、粘土石灰質土壌の「コート」はメルロの栽培に適しており、芳醇でまろやかなタンニンが特徴のワインが生まれます。


一方、粘土砂利質の「グラーヴ」ではカベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンが多く栽培されており、繊細ながら長期熟成に耐えうるワインが生み出されています。


海の影響を受けにくく寒気が溜まりやすいサン・テミリオンでは、土壌が冷たくなるため晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンには不向きと言われてきましたが、近年は温暖化の影響で、粘土石灰質「コート」の土壌ながらカベルネ・ソーヴィニヨンに植え変える生産者も増えています。

※1  プティ・ヴェルドは補助品種として10%未満まで使用することが認められています。また、A.O.C.サン・テミリオンは赤のみ認めらており、白やロゼはA.O.C.ボルドーに格下げになります。

サン・テミリオンの格付け

サン・テミリオンの格付けは、1855年のパリ万国博覧会を機に制定されたにボルドー左岸のメドック(およびグラーブ)の格付けの約100年後の1954年に法定されました。

サン・テミリオンの格付けの最も大きな特徴は10年ごとに見直しが行われること。


メドックの格付けが150年以上経った今でも一部の例外を除いてほとんど変わっていないのに対し、サン・テミリオンの格付けはこれまでに1969年、1986年、1996年、2006年、2012年の6回にわたって改訂されました。

サン・テミリオンの格付け

格付けは第一特別級のプルミエ・グラン・クリュ・クラッセと特別級のグラン・クリュ・クラッセからなりますが、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセは上級のAと下級のBに分かれるため、実際には3階級となります。


最高位のプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAはこれまでシャトー・オーゾンヌシャトー・シュヴァル・ブランの2シャトーとなっていましたが、2012年の最新の格付けで新たにシャトー・アンジェリュスシャトー・パヴィが加わりました。


その他、現在はプルミエ・グラン・クリュ・クラッセBが14シャトー、グラン・クリュ・クラッセが64シャトーとなっています。

プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA

サン・テミリオンの格付けでトップに君臨するプルミエ・グラン・クリュ・クラッセA。


1958年の格付け制定当初から2012年まではシャトー・シュヴァル・ブランとシャトー・オーゾンヌのみが認められ、まさにボルドー右岸の最高峰ワインと認知されてきましたが、両者の性格は明らかに異なります。


ここでは、2012年にプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに加わった2つのシャトーも合わせて紹介します。

シャトー・オーゾンヌ

シャトー・オーゾンヌ

サン・テミリオンの最高峰と讃えられる歴史の古い小規模シャトー。年間生産量がおよそ2万本強と非常に少ないため入手困難なワインです。


シャトー・オーゾンヌのブドウ畑は、サン・テミリオンの町のすぐ近くにあるサン・テミリオンの丘の最高に立地の良い場所に位置し、石灰を含んだ粘土質の土壌「コート」で栽培された良質なブドウからワインが造られています。


栽培面積はわずか7haで、メルロとカベルネ・フランがおよそ半々の割合で作付けされており、カベルネ・ソーヴィニョンは栽培されていません。


相続による所有権の分割などにより20世紀半ばから後半にかけては低迷しましたが、1995年以降は品質が回復。さらに著名なワインコンサルタントであるミシェル・ローラン氏を迎えたことで名実ともにサン・テミリオン最高峰のワインと称されるまでになりました。

シャトー・シュヴァル・ブラン

シャトー・シュヴァル・ブラン

フランス語で「白馬」を意味するシュヴァル・ブラン。その名前はブルボン王朝アンリ4世(1553年~1610年)が白い馬にまたがり、現在のシャトーの場所にあった宿屋に立ち寄ったことに由来しています。


シュヴァル・ブランは、同じ一族が長きに渡ってシャトーを所有してきたボルドーでも数少ないシャトーのうちの一つで、1832年にもともとシャトー・フィジャックの一部だった16haの小作地を買い取ったことが今日の基礎となっています。


ポムロル地区との境界に位置する39haの所有地は、ボルドー右岸のメドックと同じギュンツ氷期の砂利が見られる粘土砂利質土壌の「グラーヴ」に属しており、カベルネ・フランとメルロを中心にカベルネ・ソーヴィニヨンも少量栽培されています。


シャトー・シュヴァル・ブランの最大の特徴は、補助品種として使用されることが多いカベルネ・フランを主体とし、ボルドー右岸ワインの特徴であるメルロを補助品種にするという世界的にみても非常に珍しいセパージュで造られていることです。


メルロよりもカベルネ・フランが多い異例なブレンドから生み出されるワインは、華やかな香りが特徴で非常にエレガント。


飲み頃の期間が長いことでも知られており、ボルドーの5大シャトーやサン・テミリオンの他のプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAのワインに比べて、若いうちから楽しめるとともに数十年の熟成も可能です。そのスタイルから「ボルドーで最も深遠なワイン」とも評されます。

シャトー・アンジェリュス

シャトー・アンジェリュス

1996年にプルミエ・グラン・クリュ・クラッセBに認定されて以降、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAの実力を持つシャトーと言われ続けてきたシャトー・アンジェリュス。


2012年に行われた格付け見直しの際に、見事プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに昇格しました。


サン・テミリオンの美しい三つの教会がある丘に囲まれたこの土地では、1日3回、朝、正午、夕方に、神への祈りと感謝を込めて鳴らされるアンジェリュス(鐘の音)を聴くことができます。このことが、アンジェリュスという領地名の由来となりました

シャトー・アンジェリュスのエチケットにも描かれたシンボルマークである鐘には、祈りや感謝という意味が込められています。


シャトー・アンジュエリュスの品質の向上は1985年に当主となったシャトー一族の7世代目であるユベール・ド・ブアール・ド・ラフォレの努力によるところが大きく、近年のワインはしっかりとした果実味と綺麗に溶け込んだタンニンが魅力のモダンなスタイルとなっています。

シャトー・パヴィ

シャトー・パヴィ

4世紀に古代ローマ人によってブドウが植えられた記録が残っているほど歴史のあるシャトー・パヴィ。


サン・テミリオン地区の東の丘陵斜面に37haのブドウ畑を所有しています。その畑は有名な“プラトー・ド・サンテミリオン(サン・テミリオンの台地)”の中でも、特に“コート・パヴィ(パヴィ丘陵)”と呼ばれている土地で、丘の上部には土には粘土、下層には粘土質石灰岩があるという、ブドウ栽培には最適な土壌となっています。


シャトー・パヴィは、1954年にサン・テミリオンのプルミエ・グラン・クリュ・クラッセBに格付けされました。そして1979年以降は、たくましく凝縮感のあるフルボディなワインを産出。


特に1998年にジェラール・ペルス氏がシャトーを購入してからより一層味わいに磨きがかかり、モダンでより重厚なワインへと変化しました。

プルミエ・グラン・クリュクラッセB

プルミエ・グラン・クリュ・クラッセBは以下の14シャトーです。

シャトー・ボーセジュール
シャトー・ボーセジュール・ベコ
シャトー・ベレール・モナンジュ
シャトー・カノン
シャトー・カノン・ラ・ガフリエール
シャトー・フィジャック
クロ・フルテ
シャトー・ラ・ガフリエール
シャトー・ラルシ・デュカス
シャトー・ラ・モンドット
シャトー・パヴィ・マカン
シャトー・トロロン・モンド
シャトー・トロットヴィエイユ
シャトー・ヴァランドロー

グラン・クリュ・クラッセ

グラン・クリュ・クラッセは以下の64シャトーです。

シャトー・ラロゼ
シャトー・バレスタール・ラ・トネル
シャトー・バルド・オー
シャトー・ベルフォン・ベルシエ
シャトー・べルヴュ
シャトー・ベルリケ
シャトー・カデ・ボン
シャトー・カップ・ド・ムルラン
シャトー・ル・シャトレ
シャトー・ショーヴァン
シャトー・クロ・ド・サルプ
シャトー・ラ・クロット
シャトー・ラ・コマンドリー
シャトー・コルバン
シャトー・コート・ド・バロー
シャトー・ラ・クスポード
シャトー・ダッソー
シャトー・デステュ―
シャトー・ラ・ドミニク
シャトー・フォジェール
シャトー・フォリ・ド・スシャール
シャトー・ド・フェラン
シャトー・フルール・カルディナル
シャトー・ラ・フルール・モランジュ
シャトー・フォンブロージュ
シャトー・フォンプレガード
シャトー・フォンロック
シャトー・フラン・メーヌ
シャトー・グラン・コルバン
シャトー・グラン・コルバン・デスパーニュ
シャトー・グラン・メーヌ
シャトー・レ・グランド・ミュライユ
シャトー・グラン・ポンテ
シャトー・ギュアデ
シャトー・オー・サルプ
クロ・デ・ジャコバン
クーヴァン・デ・ジャコバン
シャトー・ジャン・フォール
シャトー・ラニオット
シャトー・ラルマンド
シャトー・ラロック
シャトー・ラローズ
クロ・ラ・マドレーヌ
シャトー・ラ・マルゼル
シャトー・モンブスケ
シャトー・ムーラン・デュ・カデ
クロ・ド・ロラトワール
シャトー・パヴィ・デュセス
シャトー ペビ・フォジェール
シャトー・プティ・フォリ・ド・スタール
シャトー・ド・プレサック
シャトー・ル・プリウレ
シャトー・キノー・ランクロ
シャトー・リポー
シャトー・ロシュベル
シャトー・サン・ジョルジュ・コート・パヴィ
クロ・サン・マルタン
シャトー・サンソネ
シャトー・ラ・セール
シャトー・スタール
シャトー・テルトル・ドーゲイ
シャトー・ラ・トゥール・フィジャック
シャトー・ヴィルモリーヌ
シャトー・ヨン・フィジャック

まとめ

同じボルドーワインでも強いタンニンを持ち、飲み頃を迎えるまでに時間がかかるメドックのワインに比べて、メルロ主体で造られ重厚ながらも柔らかなタンニンを特徴とするサン・テミリオンのワインは、ボルドーの赤ワインを飲み慣れない方にとてもおすすめです。


また、サン・テミリオンの格付けは他の格付けに比べて非常に信憑性は高いと言えます。大切な人へのプレゼントや、記念日に何か特別なワインをという時に選んでみてください。

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2020

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