20年程前にはまだまだ少なかった女性醸造家。今でも決して多数派ではありませんが、世界各地でワイン造りの指揮を執る女性が確実に増え、目覚ましい活躍を遂げています。 

そこで今回は、エノテカ・オンラインがおすすめする新進気鋭の女性醸造家7名を厳選。彼女達が手掛けるワインと共にご紹介します。日本から南アフリカ、タスマニア、イタリア、フランスまで、初入荷の2生産者を含む、7生産者11銘柄をご用意しました。女性ならではの細やかな造りが活きる上質なワインの数々を、この機会にぜひお楽しみください。

日本固有の品種「甲州」を世界に向けて発信し、コンクールや評価誌において数々の賞を受賞する、日本を代表するワイナリーである中央葡萄酒。 そんな中央葡萄酒の4代目当主、三澤茂計氏の長女であり、同ワイナリーの取締役栽培醸造部長、グレイスワイン醸造責任者、三澤農場栽培責任者を務める三澤彩奈女史。

「甲州」に命を懸ける祖父や父の背中を見て育った彼女は、ボルドー大学ワイン醸造学部DUAD卒業後、世界各国のワイナリーで経験を積んだのち帰国。幾多の困難を経て仕上げた「キュヴェ三澤 明野甲州2013」が、日本の生産者として初めてデキャンター・ワールド・ワイン・アワード2014にて金賞を受賞するという快挙を達成。その後も数々の世界的コンクールの賞を獲得しており、甲州の伝導者として世界的な注目を集めています。 

日本を代表するワイン産地、山梨県の小規模の生産者ながら並々ならぬこだわりによりワインを生み出し注目を集めるキスヴィン・ワイナリー。 そんなキスヴィン・ワイナリーで醸造責任者を務めるのが斎藤まゆ女史です。彼女は、早稲田大学在学中に日本でのワイン造りを目指し同大学を中退。カリフォルニア州立大学でワイン醸造学科卒業後、成績優秀により同校ワイナリーの醸造アシスタントに抜擢。その後はフランス・ブルゴーニュなどで研鑽を積みキスヴィン・ワイナリーの醸造責任者に就任しました。

そんな彼女は、「質の高いブドウが出来さえすれば、醸造とはシンプルかつ平易なもの」という考えのもと、醸造家自らも日常的に畑へ出向き、スタッフと連携しつつ栽培に参加。特に収穫時期には果実の成分分析を細かく実施し、ブドウの適熟期に収穫を行うことを第一としています。そんな彼女が仕立てたワインを、伝説のソムリエ、故ジェラール・バッセ氏がワイナリーを訪れ試飲した際、「才能豊かな醸造家が造ったこのワインはユニークでセンセーショナル」と絶賛ーしたことで、世界中で大きな話題となりました。

ベイ・オブ・ファイアーズは、近年ワイン界で注目の冷涼産地であるタスマニアに位置するワイナリー。彼らが手掛けるすべての銘柄が金額ベースで2ケタ成長を遂げている(※)という、オーストラリア国内で人気急上昇中の造り手です。

そんなベイ・オブ・ファイアーズでワインメーカーを務めるのが、タスマニア出身のペニー・ジョーンズ女史。アデレード大学で醸造を学び、南オーストラリアのペタルマ社で約10年間醸造の修業を積んだ後、2010年にベイ・オブ・ファイアーズのワインメーカーに就任。オレゴンやフランス、ドイツ、イギリス、ベトナム、インド等、世界各国のワイン造りの現場を精力的に巡り、特に冷涼な産地については深く研究。ベイ・オブ・ファイアーズのワインの品質向上に貢献しています。

そんな彼女のワイン造りで大切にしているのは、タスマニアの多様なテロワールとブドウそれぞれの品種の魅力を表現すること。そのための一つの手段として、収量を極力抑えるために大胆な選定が行われています。造り出されるワインは、テロワールの個性が見事に反映された、バランスの取れたスタイルが特徴です。

※参照元：Aztec Scan Data Total Australia and Independents MAT to 05/04/2015 

アスリナは、南アフリカで黒人女性として初めて自らのブランドを確立したヌツィキ・ビエラ女史が手掛けるワイナリー。

ケープタウンの大学で醸造学を学んだことがきっかけでワイン造りを志したヌツィキ女史は、クラスメイトのほとんどが白人且つ、授業は彼女の知らない言語で行われるという厳しい状況の中、言語とワイン造りを猛勉強し、大学卒業後にワインメーカーに就職。

その2年後には既に頭角を現し始め、彼女が初めて手掛けた赤ワインが南アフリカ唯一の国際品評会で金賞を受賞。そして2009年には国内誌にて「ウーマン・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」に選出されるという快挙を成し遂げたのです。

その後、ヌツィキ女史のワイン造りへの並々ならぬ努力が実を結び、2015年についに自らのブランド、アスリナを南アフリカの地に設立。雄大な山脈が連なり、畑の向き、標高、そして土壌が多様性に富んだ恵まれた産地のブドウを使用し仕立てるワインは、世界各国で高評価を獲得しています。自分の力で未来を切り拓いてきた彼女が手掛けるワインには、造り手の情熱、上品さ、逞しさ、しなやかさ、そして壮大な夢に溢れているのです。 

キアラ・コンデッロは、パルマの生ハムやパルミジャーノ・レッジャーのをはじめ、食豊かな州エミリア・ロマーニャの小さな町、プレダッピオに位置するワイナリー。サンジョヴェーゼ発祥の地ともいわれる歴史あるこの地で、100％サンジョヴェーゼにこだわりワイン造りを行っているのがキアラ・コンデッロ女史です。

キアラ女史自らワイナリーを立ち上げた初のヴィンテージである2015年ヴィンテージから、世界的なワイン評価誌であるヴィノスにて91+点、デキャンタにおいても91点という高得点を獲得。次ヴィンテージとなる2016年は、なんとイタリアワインの権威であるガンベロ・ロッソのヴィ二・ディタリアで最高評価トレ・ヴィッキエリを獲得。若手ながらも堅実かつ実直なワイン造りは、早くから高い評価を受けており、注目度抜群の女性醸造家と言えるでしょう。 

ブルゴーニュ、ムルソーの頂点を極めるドメーヌ・デ・コント・ラフォンの当主である、ドミニク・ラフォン氏。そんな彼がブルゴーニュ、マコンの地のポテンシャルの高さに感銘を受け設立した「レ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォン」にて、2006年から醸造責任者を務めるのが、カロリーヌ・ゴン女史です。

カロリーヌ女史は、アグリカルチャーエンジニアの学位を修めたほか、ワイン醸造の勉強も行っていた才女。採用の際、「私は学校での成績が良かったので、両親は期待して、私により良い場所で勉強して欲しいと願い、私もその期待に応えようと思い勉強してきた。でも彼等の望みは十分叶えてきたと思う。だから私はこれから自分の意思で、自身の手を使って、畑、現場で働いていきたい。」と述べたそうで、その情熱や思考力に驚かされたそう。

ドミニク氏いわく、「彼女がレゼリティエールの品質の一部を担っているのは間違いないし、そして彼女の柔軟性、オープンな考え方、課題を発見した時の取り組み方も素晴らしく、限りある時間の中で、畑、そしてセラーの中でも活躍してくれている。私も彼女と働いてとても楽しい。」と、ブルゴーニュきっての偉大な生産者であるドミニク氏から、絶大な信頼を寄せられている、今後の活躍が益々楽しみな醸造家なのです。 

ブルゴーニュ愛好家を魅了して止まないヴォーヌ・ロマネの名門老舗ドメーヌ、ジャン・グリヴォ。イギリスで最も権威のあるワイン評価雑誌『デキャンター』誌にて、「時代を通じて活躍するブルゴーニュの10大ドメーヌ」に選ばれるなど、正統派ブルゴーニュワインの造り手として、確固たる地位を築いています。マティルド・グリヴォ女史は、父エティエンヌ・グリヴォ氏の意思を引き継ぎ、弟ユベール氏と共に2017年からドメーヌの指揮を執る、美人女性醸造家。

乗馬でフランス代表に選出されたこともあるという彼女は、ブドウ栽培とワイン醸造学を学んだ後、醸造家のインターンでボルドーのヴュー・シャトー・セルタンや アメリカオレゴンのドルーアン・オレゴンで学び、経験の為イギリスのワイン商でも働いた経歴を持ちます。「夏のバカンスを返上してでも、畑に出ることが大好き」という彼女は、「ワインを作るためには、ブドウとテロワールを熟知し、それらと完全に調和して、醸造中にそれぞれの可能性を理解し表現する必要がある」と語ります。

そんな彼女は、父の代から受け継いだ素晴らしいワインに、新鮮さ、優雅さ、洗練さ、純粋さと複雑さをもたらすことを追求。偉大なドメーヌの更なる進化に向け、完璧にバランスの取れたピノ・ノワール造りに日々邁進しています。