ニュージーランドと聞いて、何を思い浮かべますか?
広大な自然や人口よりも多いという羊、ラグビーなどいろいろな魅力がある国ですね。そして近年ニュージーランドは、ワインでも世界的な注目を集めています。
冷涼な気候と豊かな自然が生み出すソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールは、フレッシュな酸味が特徴です。
今回はそんなニュージーランドのワインについて、ソムリエの解説付きで詳しくご説明します。
ニュージーランドのワイン一覧
解説してくれるのは、田邉公一さん
J.S.A認定ソムリエ 飲と食の様々な可能性を拡げていく活動をしています。 2003年 J.S.A認定ソムリエ資格取得 2007年 第6回 キュヴェ・ルイーズ・ポメリー ソムリエコンテスト優勝 2018年 SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL資格取得 著書『ワインを楽しむ 人気ソムリエが教えるワインセレクト法』(マイナビ出版)2023年12月発売 X(旧Twitter):@tanabe_duvin Instagram:@koichi_wine
気候と風土
ニュージーランドはオーストラリア南東に位置する島国。同じ島国の日本と同様に国土は南北に伸びていますが、南半球のため北が温暖で南が冷涼な気候となっています。
北島と南島という2つの主要な島から成り立つこの国は豊かな自然環境に恵まれ、ワイン造りに理想的な条件が揃っています。
また、全土で気候の違いが大きく、土地によってさまざまなブドウ品種が栽培されています。
ワイン造りの歴史は比較的短く、19世紀後半にいくつかのワイナリーが設立されたことで商業的なワイン生産が始まりましたが、長らく国内消費主体の小さな産業にとどまっていました。
世界のワイン市場にニュージーランドワインが本格的に並ぶようになったのは1980年代後半にソーヴィニヨン・ブランが登場するようになってから。
それ以降、先人が積み上げてきた知見や革新的な栽培・醸造技術の導入によって、わずか20年程で品質が飛躍的に向上し、現在では世界中のワイン市場で高い評価を受けるようになりました。
そして近年のニュージーランドワインの特徴とされているのが、環境に配慮した持続可能なワイン生産。
「サステイナブル・ワイングローイング・ニュージーランド(SWNZ)」という認証制度のもと、多くのワイナリーがオーガニックやビオディナミ農法に取り組んでいます。
栽培されている主なブドウ品種
ニュージーランドでは国際品種であるソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールを中心にワイン造りが行われています。
ソーヴィニヨン・ブラン
フランスのボルドー地方やロワール地方などで古くから栽培されている白ブドウ品種の一つです。
比較的温暖な気候を好むため、現在ではニュージーランドの他チリなどでも栽培されています。
緑がかった果実からは、柑橘系の果実やハーブのような香りと爽やかな酸味が特徴のワインが造られます。
1980年代後半に登場してからニュージーランドワインの世界での評価を高めた立役者で、国内生産量は7割以上を占めており、中でも南島のマールボロ地区でその半分以上が栽培されています。
ピノ・ノワール
高品質なワインを生み出す赤ワインの代表的なブドウ品種で、フランス・ブルゴーニュなどをはじめ世界各地で栽培されています。
繊細で気難しい品種のため栽培のハードルが高いことが特徴です。
良質なブドウを育てるためには冷涼か温和な気候が必要で、病気にも弱いことから、他の品種に比べて栽培するのも醸造するのも難しく、限定的な条件の環境でしか栽培されていません。
ニュージーランドではソーヴィニヨン・ブランに次ぐ栽培面積で、北島・南島の各地でそれぞれ特徴的なワインが造られています。
代表的な産地
「世界最南端のワイン産地」と言われるニュージーランド。
南北1,200kmの土地に細長く広がるワイン産地では、多様な気候と土壌により様々なブドウが栽培されています。その中でも特に品質の高いワインを生産する、代表的な産地をご紹介いたします。
マールボロ
ニュージーランドのブドウ栽培面積の約7割がマールボロにあり、ニュージーランド最大のワイン産地です。
この地域では、特にソーヴィニヨン・ブランが重要な存在で、全体の約8割を占めるソーヴィニヨン・ブランの一大産地でもあります。
マールボロは南島の東端に位置し、北南に囲まれた山々により、悪天候や太平洋からの強風から守られており、年間を通して非常に乾燥した気候が特徴です。
このような環境が、ブドウの品質に大きな影響を与えます。
この土地で造られるソーヴィニヨン・ブランから、ニュージーランドは「ソーヴィニヨン・ブランの名産地」として世界的に認知されました。
特にマールボロ産のソーヴィニヨン・ブランは、爽やかな味わいに加え、トロピカルフルーツのような香りが特徴的です。
田邉さんおすすめワイン セラー・セレクション・ソーヴィニヨン・ブラン / シレーニ・エステーツ
ニュージーランドにおけるブドウ栽培面積第1位を誇るソーヴィニヨン・ブラン。 その中心地として知られるのがマールボロであり、同国のワインが世界的に注目されるきっかけとなった産地でもあります。 このシレーニのソーヴィニヨン・ブランは、日本でも長年に渡って高い人気を誇っており、レモンやライム、パッションフルーツ、ミントの香り、豊かな果実味と爽やかな酸味が感じられ、シーフードとの相性も抜群です。
セラー・セレクション・ソーヴィニヨン・ブラン
白
アロマティック&ピュア
日本で一番売れているニュージーランドワインブランド、シレーニが手掛ける人気の白ワイン。フレッシュでクリアな味わいが幅広い料理と合う1本。 詳細を見る
4.5
(238件)2023年
2,200 円
(税込)
ホークス・ベイ
ニュージーランドで2番目に広い栽培面積を誇るホークス・ベイは、北島東部に位置する重要なワイン産地です。
この地域は、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーの栽培面積と生産量が国内で最大であり、特に赤ワインが世界的に高い評価を受けています。
ホークス・ベイの赤ワインは、バランスの取れた風味と豊かな果実味が特徴です。
ホーク湾に流れ込む3本の河川流域にブドウ畑が広がり、地域ごとの個性が反映された多様なワインが生まれています。
これにより、ホークス・ベイのワインは、地域ごとの特性を楽しむことができるのが魅力です。
田邉さんおすすめワイン セラー・セレクション・シラー / シレーニ・エステーツ
国内外のワインコンクールで多数の受賞歴がある、日本でも知名度が高いニュージーランドの有名生産者。 黒ブドウの中では、主にピノ・ノワールの栽培が有名なニュージーランドの中でも、特にシラーの銘醸地として知られているホークス・ベイで生まれたのがこちらの赤ワインです。 熟したベリーフルーツのアロマと風味に加え、この品種特有のスパイシーさが料理との相性を高めてくれます。
セラー・セレクション・シラー
赤
パワフル&ストラクチャー
日本で一番売れているニュージーランドワインブランド、シレーニ。スパイス感とジューシーな果実味広がる、親しみやすさが魅力。 詳細を見る
3.8
(16件)2021年
2,200 円
(税込)
オークランド
ニュージーランドの中でも最も温暖な亜熱帯気候の北島北部に位置する産地。オークランドは都市としても非常に栄えています。
特にカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シャルドネの栽培が盛んな地域で、ブドウ畑は大きく3つのエリア(クメウ、マタカナ、ワイヘケ・アイランド)に分かれています。
それぞれで土壌・気候が大きく異なるため、土地によって個性が反映されたワインが造られています。
田邉さんおすすめワイン プロヴィダンス・プライベート・リザーヴ / プロヴィダンス
日本のワイン造りにも大きな影響を与えた赤ワインで、著名なワイン評論家が「ニュージーランドのシャトー・ル・パン」と評価して以来、世界中から注目を浴びています。 こちらのワインは良年のみ生産され、複雑性のある香りと凝縮した果実味、見事な味わいのバランスといつまでも続く余韻は、まさにボルドーのトップクラスの赤ワインを彷彿とさせます。
ワイララパ
ワイララパは、首都ウェリントンの南東に位置し、ニュージーランドを代表するピノ・ノワールの産地であるマーティンボローを擁する重要なワイン産地です。
この地域は山に囲まれた半海洋性気候をしており、昼間は北西からの風と太陽光に晒され、夜間は急激に冷却されるため、寒暖差が非常に激しい気候が特徴です。
この気候条件が、ブドウの果皮を厚くし、酸味と果実味の豊かな味わいを生み出します。特に、ピノ・ノワールにとっては最適な栽培環境になります。
マーティンボローは、マーティンボロー・テラス地区、ドライ・リヴァー地区、テ・ムナ・テラス地区の3つに分かれ、特に有名な生産者の畑はマーティンボロー・テラス地区に集中しています。
この地区は水はけのよい土壌と、強い太陽光線と風の影響により、品種を問わずしっかりとした骨格を持つブドウが栽培されています。
田邉さんおすすめワイン クリムゾン・ピノ・ノワール / アタ・ランギ
ニュージーランドのワイン産地の中でも特にピノ・ノワールの赤ワイン造りで世界的に成功を収めているワイララパ。 その中でも先駆者的な存在として有名なのが、このアタ・ランギであり、世界的なワインコンクールでも何度も高い評価を得ています。 こちらのワインは、赤い果実や紅茶を思わせる豊かな風味となめらかなテクスチャーが魅力。ニュージーランドのピノ・ノワールのポテンシャルの高さを存分に体感いただけます。
セントラル・オタゴ
セントラル・オタゴは、南緯45度に位置し、世界最南端のワイン産地の一つとして知られています。
ニュージーランドが南半球に位置するため、南に行くほど気温が低く、非常に冷涼な気候です。
この地域は、ニュージーランドの中でも唯一の半大陸性気候で、昼夜の寒暖差が激しく、年間を通して雨が少なく乾燥しています。
この厳しい気候条件が、ブドウに酸をしっかりと保持させ、特にエレガントで繊細な味わいを生み出します。
栽培面積の約8割を占めるピノ・ノワールは、この土地に特に適しており、冷涼な気候の影響で酸味と果実味のバランスが良く、繊細な風味を持つワインが造られています。
また、セントラル・オタゴはその冷涼な気候により、ピノ・ノワール以外にもシャルドネやリースリング、ピノ・グリなどの白ワイン品種も栽培されており、これらの品種も個性豊かなワインを生み出しています。
田邉さんおすすめワイン ピノ・グリ / プロフェッツ・ロック
プロフェッツ・ロックは、セントラル・オタゴを代表する生産者の一人であり、フランスのブルゴーニュの著名生産者とのコラボレーションでも話題となりました。 こちらのワインはリリース当初から非常に高い評価を得ているニュージーランド有数のピノ・グリで、私もレストランやワインスクール等でゲストにお出ししてきた経験があります。 ピノ・グリ特有の豊かな果実の風味、まろやかで旨味と奥行きを感じる味わいが魅力です。
ニュージーランドワイン豆知識
ニュージーランドワインの豆知識を田邉さんに聞いてみました!
ソムリエ解説!どんな飲み方がおすすめ?
ソーヴィニヨン・ブランやピノ・グリ等のブドウ品種から造られた爽やかなタイプの白ワインは、やや小ぶりの細身の万能型グラスで、よく冷やして(8~10度程度)飲むことで、フレッシュでフルーティなスタイルを活かして、より美味しく楽しむことができます。 ピノ・ノワールから造られる赤ワインは、中庸のブルゴーニュ型のグラスがおすすめ。飲用温度に関しては、赤い果実のアロマが豊かで、穏やかな渋みと豊かな酸味をもつため、赤としてはやや低めの14~16度程度が理想的です。 一方、シラーやメルロから造られた赤ワインは、中庸のボルドー型のグラスを使用し、温度は16〜18度程度にすることで、香りと味わいのポテンシャルをより引き出すことができます。デカンタージュは基本的に必要としないタイプが主流です。
ソムリエ解説!スクリューキャップのワインってどうなの?
現在、ニュージーランド産のボトルワインの95%以上にスクリューキャップが使用されています。 そのメリットとしては、まず何より開栓がしやすいこと、そしてコルク臭のリスクがないことです。そして、コルクのように乾燥するリスクがないため、ボトルを立てて保存が可能であり、その点から考えると冷蔵庫での保存もしやすいと言えます。 ただ、その開栓のしやすさや見ためのイメージから、スクリューキャップが増え始めた2000年代は、低価格のワインに対して使用されているイメージをもたれやすかったのですが、現在では高価格帯のワインへの採用も進み、使用実績や品質のアップによって熟成のポテンシャルが認められるようになり、かつてのイメージもほぼ払拭され、そのクオリティの高さが広く認識されています。
ニュージーランドワインにピッタリの料理
最後にニュージーランドのワイン(ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール)にピッタリな、田邉さんおすすめの料理をご紹介します。
ソムリエ解説!ソーヴィニヨン・ブランに合う料理は?
ニュージーランドのフルーティで爽やかなスタイルのソーヴィニヨン・ブランの白ワインには、特にシーフードを使ったお料理との相性が抜群です。 サーモンやホタテのカルパッチョ、シュリンプやツナを添えたグリーンサラダ、フレッシュオイスター レモン添え等が特におすすめです。 魚介類の味わいにワインの塩味を伴うミネラル感が相乗し、柑橘フルーツのニュアンスが、料理にレモンを絞るように風味を補完します。加えて、料理にディルやミント等のハーブを添えることで、ワインのハーブフレーヴァーと同調してさらに風味が広がります。 少し意外な組み合わせとしては、ニュージーランドで有名なラムをグリルにして、レモンをたっぷり絞り、グリーンサラダを添えた一皿との組み合わせもおすすめしたいです。
ソムリエ解説!ピノ・ノワールにあう料理は?
ニュージーランドのピノ・ノワールから造られた赤ワインの持ち味である豊かな果実味と緻密できめ細かいタンニンは、適度な脂質とまろやかな味わいを持つ鶏肉を使ったお料理とよく合います。 樽のニュアンスが控えめなスタイルには、赤ワインでじっくりと煮込むような調理法が特におすすめ。ワインの果実風味と繊細なタンニンが煮込み料理の味わいの中に溶け込んで深みをもたらし、豊かな酸味が、肉の旨味をさらに引き出してくれます。さらにマッシュルームやニンジン、玉ねぎを加えて、ピノ・ノワールのワインと一緒に煮込むことで、より相性が高まります。 一方で、ややしっかりとしたボディをもつタイプに対しては、ニュージーランド産のラムの骨付きグリルに、軽くコショウをきかせてブラウンマッシュルームのソテーを添えたお料理がよく合います。
まとめ
ニュージーランドのワインは、初心者から愛好家まで楽しめる幅広い種類が揃っています。
また、ニュージーランドワインは和食とも非常に相性が良く、日常的に楽しむデイリーワインから、特別な日を彩るプレミアムワインまで、シーンに合わせて幅広く楽しむことができます。
ぜひ、ニュージーランドワインの奥深さを堪能してみてください。
ニュージーランドのワイン一覧
文=岡本名央