ブドウ品種を知ろう!ガメイ

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公開日 : 2023.11.13
更新日 : 2024.3.18
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ガメイ

ガメイと言えばボジョレー・ヌーヴォー。そんなイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。日本では1980年代のボジョレー・ヌーヴォーブームによって、ガメイというブドウ品種は一躍有名になりました。


しかし最近ではヌーヴォー以外にも高品質で飲み心地の良いワインが多数造られており、世界的に人気を博しています。


今回はそんなガメイについて、ソムリエの解説付きで詳しくご紹介します。

ガメイのワイン一覧

解説してくれるのは、田邉公一さん


田邉公一さん

J.S.A認定ソムリエ 飲と食の様々な可能性を拡げていく活動をしています。 2003年 J.S.A認定ソムリエ資格取得 2007年 ルイーズ・ポメリー ソムリエコンクール優勝 2018年 SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL資格取得 X(旧Twitter):@tanabe_duvin Instagram:@koichi_wine

目次

特徴

ガメイ

ガメイはブルゴーニュ地方南部のボジョレー地区を原産とする黒ブドウ品種で、正式な名称はガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブラン(=白い果汁の黒いガメイ)と言います。


以前は、ガメイと言えば風味の乏しいワインに色を添加するために栽培されていた果肉の赤いガメイ・タンテュリエ種を指していたことから、それと区別するためにこの名前が付けられました。


果粒が大きく果皮が薄いガメイは、果皮や種子に対して果汁の比率が高く、出来上がるワインは一般的に他の赤ワインと比べて色調が薄くなります。


生育においては発芽と成熟が早く、涼しい気候でも繁茂するため豊作になりやすいことが特徴です。


ボジョレー地区の中でガメイを用いて造られた新酒はボジョレー・ヌーヴォーと呼ばれ、フランスワインの中で最も熟成期間が短く、ガメイの魅力を最大限味わえる果実のようにフレッシュでジューシーな味わいが、世界中で人気を博しています。

ソムリエ解説!ボジョレー・ヌーヴォーって?

「ボジョレー」はブルゴーニュ地方の南部エリア、食の街リヨンの近くにあるワイン産地の名前で、「ヌーヴォー」はフランス語で「新しい」という意味があります。 つまり、ボジョレー・ヌーヴォーとは、ボジョレー地区で造られている「新酒」に対する呼称であり、日本でも長年に渡り人気を誇っています。 ボジョレー地区では秋の収穫祭の時に、その年のブドウの豊作を祝う習慣がありました。当初は解禁日を定めていなかったため他の生産者より早く販売しようとする者が現れ、発酵が不十分な状態のワインが出回り始めてしまうことになります。 その対策として、11月15日が解禁日と制定されましたが、当日が休日に重なってしまうと運送がストップして売れ行きに影響が出てしまうため、その後さらに解禁日が「11月の第3木曜日午前0時」に改定され、現在に至ります。 収穫から出荷までの期間が短いボジョレー・ヌーヴォーは、発酵や熟成の時間を長く取ることができないため、通常のワインと同様に造ろうとするとうまくいきません。 そこで、渋み成分を抑えながら色素を効率よく抽出する「マセラシオン・カルボニック」と呼ばれる製法を採用。新酒ならではのフレッシュでフルーティーなワインを生み出しています。

ガメイの特徴

新酒のボジョレー・ヌーヴォーや若いガメイで造られたワインはタンニンが少なく酸味も適度な軽い味わいで、一般的には早飲み向けとされています。


しかし一方でピノ・ノワール顔負けの複雑な香りと力強い味わいのワインも生み出されており、長期熟成をさせて楽しむこともできます。

ソムリエ解説!ガメイから造られたワインは熟成させるとどうなるの?

赤ワインが長期熟成するために必要な要件の一つとしてまず挙げられるのが、タンニン(渋みの成分)の豊富さ。 ワインに含まれるタンニンが豊かであれば、酸化に対抗する力が強くなり、より長い熟成に耐えることができます。 ガメイから造られた赤ワインは、緻密なタンニンを持っているものの控えめで、酸味のレベルは中程度、基本的に熟成はさせずに持ち前のフルーティーさを生かしたスタイルが主流です。 しかし、「クリュ・ボジョレー」と呼ばれるボジョレー地区の中でも選りすぐりの畑のブドウから造られたワインは凝縮感があり、豊かな風味を備えているため、長期熟成にも耐えることができ、より複雑な風味が発展しているものも存在します。

代表的な産地

代表的な産地

ガメイの代表的な産地と言えば、フランスのブルゴーニュ・ボジョレー地区ですが、同じくフランスのロワールやスイスでも高品質なガメイのワインが多く生産されています。


ここではガメイの代表的な産地をご紹介します。

フランス・ブルゴーニュ

フランス・ブルゴーニュ

ブルゴーニュの赤ワインは基本的にピノ・ノワール単体で造られることがほとんどですが、ガメイをブレンドして造られるワインも生産されています。


中でも特に有名なのが、最南端に位置するボジョレー地区。ガメイの栽培面積において世界の半分以上を占めており、原産地でもあります。


地区ごとに異なる特徴のある土壌はガメイの栽培に非常に適しており、ボジョレー地区産の赤ワインのほとんどはガメイから造られています。


日本でもとりわけ有名なボジョレー・ヌーヴォーはボジョレー地区内の生産量の約3分の1にあたり、フレッシュでフルーティーな早飲み向けのワインだけでなく、骨格のしっかりした複雑なワインや熟成能力の高いワインも多く生み出されています。

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フランス・ロワール

フランス・ロワール

フランス最長の河川ロワール川に沿って広がるワイン産地ロワール地方では、中流域のトゥーレーヌ地区や、フランスの中央部に位置するサントル・ニヴェルネ地区でガメイが栽培されています。


この地で栽培されるガメイの多くは、カベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨン、グロローやコットなどとブレンドされます。

スイス

スイス

スイスワインの約50%を生産しているスイス最大のワイン産地、ヴァレー州。ブドウ畑は標高650〜800mの傾斜地に広がっており、ヨーロッパの中でも標高の高い産地です。


ヴァレー州のワインとして有名な「ワイン・ドール」は、ガメイとピノ・ノワールのブレンドによって造られています。

ソムリエ解説!産地による味わいの違いは?

ガメイは現在、フランスのブルゴーニュ地方のボジョレー地区が圧倒的な主力産地と言えます。 ガメイから造られる赤ワインに共通するのは、イチゴのような赤い果実やフローラルな香りと風味、優しいタンニンとフレッシュな酸味、なめらかなテクスチャー。 新酒である「ヌーヴォー」は、よりフレッシュでフルーティー、「ボジョレー」のみ表記されたワインは広域エリアで造られた軽やかなタイプ、「ヴィラージュ」と表記されているワインは、より立地の良い畑のブドウから造られ風味が豊か、さらには「クリュ」と呼ばれる特別に選ばれた10ヵ村のワインは、ピノ・ノワールを彷彿とさせる豊潤さを持ち、長期熟成にも耐え得るポテンシャルを備えています。 フランス以外の産地としては、近年オーストラリアやカナダのガメイにも注目が集まってきています。どの国のワインにも共通する、赤い果実の香りとジューシーでフルーティーさを感じる味わいのスタイルは健在です。

相性の良い料理

相性の良い料理

控えめなタンニンと適度な酸味のバランスが良いガメイは、幅広い食事と合わせて楽しむことができます。


洋食、和食、中華それぞれどんな料理が合うのか、田邉さんに聞いてみました。


相性の良い料理

ソムリエ解説!洋食ならどんな料理が合う?

ガメイから造られた赤ワインの持ち味であるフルーティーでなめらか、ほんのりと感じられる甘いスパイス感、緻密なタンニンは、ハムやサラミ、パテ・ド・カンパーニュ等、冷製の肉前菜との相性が良く、それらの味わいに優しく溶け込み、旨味と風味をより豊かに広げてくれます。 樽のニュアンスを強くつけないスタイルが主流のガメイのワインには、お肉を香ばしく焼くのではなく、上記のような加工肉がおすすめ。 ブルゴーニュを代表する名物料理「シャルキュトリ(食肉加工品)」の盛り合わせとの組み合わせは定番であり、唯一無二の相性を誇ります。

ソムリエ解説!和食ならどんな料理が合う?

ガメイの特徴である緻密で繊細なタンニンと綺麗な酸味、まろやかな味わいは、和食との合わせやすさにも定評があります。 特におすすめしたいのが、焼き鳥のもも肉のタレ焼きとのペアリング。ももの繊細な味わいに寄り添いながら、緻密なタンニンと酸味が鶏肉の旨味を引き出し、タレの甘旨味にしっかりと同調します。 その他にも、すき焼きのような甘く煮込んだ料理ともよく合い、卵の味わいにもうまく溶け込んでいきます。 ワインの個性の観点から見て、日本のマスカット・ベーリーAの赤ワインと共通するマリアージュを楽しむこともできるでしょう。

ソムリエ解説!中華ならどんな料理が合う?

ガメイから造られた赤ワインがもつ芳醇な赤い果実や甘いスパイスの香りと風味、そして味わいに感じるジューシーさと繊細なタンニン、生き生きとした酸味、フルーティーな味わい。 こちらに対して中華料理で合わせる場合、酢豚をおすすめします。豚肉のまろやかさと旨味にワインの持つ果実味が調和し、ガメイ特有のフルーティーさと酸味が、酢豚のフルーツや野菜の味わいとよく合います。 あんのとろみに対してもワインのやわらかいテクスチャーが重なり、余韻を心地よくしてくれます。

おすすめワイン

最後に、田邉さんおすすめのガメイを使ったワインを3本ご紹介します。

ボジョレー・ヌーヴォー ロゼ / タイユヴァン

赤ワインで有名なボジョレー・ヌーヴォーですが、実はロゼワインの生産も法律で認められており、そのクオリティ高さは赤ワインにも決して引けをとりません。 その中でも今回おすすめしたいのが、1946年に創業した歴史あるレストラン「タイユヴァン」の名を施した稀少なロゼ。もう一つのヌーヴォーの世界をぜひ体験してみてください。

ボジョレー・ヌーヴォー ロゼ
750ml

ボジョレー・ヌーヴォー ロゼ

  • ロゼ

    リッチ&フルーティー

  • 2023

    5,500

    (税込)

ブルゴーニュ・パストゥーグラン レ・エクセプション / ミッシェル・ラファルジュ

数あるブルゴーニュワインの中でも、珍しいピノ・ノワールとガメイのブレンドによって造られた赤ワイン。 両品種の魅力がしっかりと表現されたスタイルに仕上がっています。19世紀初頭に遡る長い歴史を誇るドメーヌが生んだこちらのワインは、長期熟成由来の複雑な香りと味わいを楽しめるのも魅力。

ブルゴーニュ・パストゥーグラン レ・エクセプション
750ml

ブルゴーニュ・パストゥーグラン レ・エクセプション

  • エレガント&クラシック

  • 2012

    3,630

    (税込)

ボジョレー・ヴィラージュ・キュヴェ・ジジ / ジョルジュ・デコンブ

ボジョレー地区において、ヴァン・ナチュールの礎を築いた故マルセル・ラピエール氏の1番弟子が造る秀逸なボジョレー。 野イチゴや野性の草花のような自然界の香り、生き生きとした果実の風味が豊かに感じられます。ボジョレーのガメイの本質的な魅力を味わえる1本。

ボジョレー・ヴィラージュ・キュヴェ・ジジ
750ml

ボジョレー・ヴィラージュ・キュヴェ・ジジ

  • チャーミング&パフュームド

  • 2019

    3,520

    (税込)

まとめ

ボジョレー・ヌーヴォーのように「飲みやすくて軽いワイン」のイメージがあるガメイですが、それは一面にすぎず、他にも様々な味わいがあります。


ボジョレー地区以外で造られたものや、熟成されたものなどぜひいろいろなガメイのワインを試してみてくださいね。

ガメイの商品一覧

参考文献 :ワイン用葡萄ガイド / ジャンシス・ロビンソン

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