シェリー酒ってどんなお酒?

ヘレス

近年ロンドンでは、スペイン料理ブームに乗りタパスやピンチョスごとに違うシェリー酒を合わせるレストランやバーが流行の兆しを見せています。

そこで今回は、ワイン愛好家でも馴染みのない方が多いシェリー酒について解説します。

シェリー酒とは

シェリー酒とは、スペイン・アンダルシア地方のヘレス周辺で造られる酒精強化ワイン(注1)の1種です。

一言にシェリー酒と言っても、辛口のフィノから極甘口のペドロ・ヒメネスまで、非常に多様なタイプがあり「シェリー酒の味わいはコレ!」と一括りにできない難しさがあります。

そのせいか、日本ではシェリー「酒」と呼ばれることが多く、独自のカテゴリーと認識されがちですが、実は立派なワイン。

ボルドーやブルゴーニュと同じようにシェリーと呼ばれるワイン(産地)なのです。

原産地呼称制度上はヘレス・ケレス・シェリー(Jerez-Xerez-Sherry)が正式名称で、これはスペイン語、フランス語、英語でそれぞれヘレスを意味する地名を並べたものになっています。

(注1)醸造過程でアルコールを添加することでアルコール度数を高めたワインのこと。

シェリーの産地

ヘレスのブドウ畑

シェリーの産地は、スペイン南西部のアンダルシア地方にあるヘレス・デ・ラ・フロンテラとサンルカール・デ・バラメーダ、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアの3つの街(通称シェリー・トライアングル)を中心に約6,700haほど広がっています。

スペイン内陸部のワイン産地と比べると、大西洋沿岸に位置するヘレスの年間降雨量は多い方ですが、ブドウの生育期に雨は降らず、年間300日以上晴れが続く乾燥した気候です。

そんなヘレスでは、保水力に優れた「アルバリサ」と呼ばれる真っ白な白亜質土壌(注2)がブドウ栽培の鍵。

アルバリサが、冬に降った雨を吸収し夏まで蓄えることで、ブドウの生育期に雨が少ないヘレスでのブドウ栽培を可能にしています。

このような土壌は世界的に見ても珍しく、ヘレスやフランスのシャンパーニュ地方、イギリス南部以外のワイン産地では見られません。

そのため、シェリーとシャンパーニュは同じ土壌、複数年のワインをブレンドして造るなどの類似性が語られることがよくあります。

なお、アルバリサは産地全体の90%以上を占めていますが、ヘレスにはその他に、砂質のアレナス、粘土質のバロスといった土壌もあります。

(注2)一般的に言われる石灰質土壌より高い純度の石灰を含有している土壌

シェリーのブドウ品種

シェリーのブドウ

シェリーは主にパロミノという白ブドウ品種から造られていますが、シェリーの種類によってはペドロ・ヒメネス、モスカテルといった品種も使用されています。

シェリーはこれらの品種をブレンドせず、それぞれ単一でワインに仕上げます。

 パロミノ

パロミノはヘレスで栽培されているブドウの大部分を占めています。

果皮が薄く、特徴的な香りもなく酸味が穏やかで、シェリー造りに適したニュートラルなワインを造ることができる品種です。

実はパロミノ・フィノとパロミノ・デ・ヘレスの2品種があり、後者の方がレアで生産性が低いですが、高品質だと言われています。

ペドロ・ヒメネス

ヘレスでの栽培面積はそれほどないブドウですが、お隣のモンティーリャ・モリレスという産地で造られたブドウもシェリー造りに使うことができるユニークな法律が認められています。

果皮が薄いのを利用して、天日干しでレーズン状にし、糖度を極限まで高めたブドウが、極甘口ワインに使われています。

 モスカテル(マスカット・オブ・アレクサンドリア)

世界中で栽培されているマスカット系ブドウの一種で、花や桃をイメージさせる芳香が最大の特徴です。

日本でも食用として販売されているので、よく見る名前ではないでしょうか。

他のブドウと比べると干ばつに強いため、保水力の弱いアレナス土壌の畑で栽培され、ペドロ・ヒメネスと同様に甘口ワインの生産にのみ使用されています。

シェリーの種類

シェリー

シェリーの魅力の一つは、何と言ってもその多様性!

一言でシェリーといっても辛口ワイン、天然甘口ワイン、これらをブレンドした甘口ワインの3カテゴリーがあります。

さらに、天然甘口ワインは上述のペドロ・ヒメネス、モスカテルの2種類に。ブレンド甘口ワインはクリーム、ミディアム、ペイルクリームの3種類に分けられます。

しかし、近年注目されているのは、やはり辛口タイプのシェリーです。

辛口タイプは大きく分けると、酵母を使って熟成させたシャンパーニュのような風味を楽しむタイプ、酵母の影響を与えずに熟成させた酸化熟成タイプの2つに分類できます。

今回は、その中から基本の4種類をご紹介します。同じシェリーと言えど、飲み比べてみると驚くほど味わいが違うので面白いですよ。

フィノ

フィノは酵母を使った熟成を経て造られたタイプ。アルコール度数は約15%、軽めで繊細なスタイルです。

レモン色の色調で、リンゴやレモン、ハーブとシャンパーニュのようなイーストのニュアンスがふんだんに感じられます。

シェリーの中でも幅広い食事と合わせることができますが、特に生ハムや軽めのタパスと相性が良いです。

アルマセニスタ フィノ・デル・プエルト 1/143 / エミリオ・ルスタウ

マンサニーリャ

シェリー産地の中でも、海に近いサンルカール・デ・バラメーダの街で造られたフィノが、マンサニーリャを名乗ることができます。

フィノよりもさらに繊細でフレッシュ、海風のような塩気を感じる味わい。新鮮なシーフードとの相性が良いワインです。その中でもパサダと名前に付くものは、熟成が進んだタイプでより芳醇で肉類との相性が良くなります。

マンサニーリャ シェリー

アルマセニスタ マンサニーリャ・パサダ・デ・サンルカール 1/80 / エミリオ・ルスタウ

オロロソ

オロロソ=香り高いという意味を持つ、酵母の影響を与えずに熟成させた酸化熟成タイプ。

アルコール度数もフィノと異なり17~21度のフルボディなワインです。

酸化したワインの色調は琥珀色で、パンのような酵母の風味は一切なく、クルミなどのナッツ類やコーヒー、カラメルのような香りをもっています。

北京ダックのような香ばしく焼いた肉類と合わせるのがおすすめです。

オロロソ シェリー

アルマセニスタ オロロソ・パタ・デ・ガリーニャ 1/38 / エミリオ・ルスタウ

アモンティリャード

アモンティリャードは、フィノを酸化熟成させた中間タイプ。

見た目も味わいもフィノとオロロソの中間で、酵母と酸化熟成の両方の複雑な香りが楽しめます。

 合わせる料理もチキンや赤身の魚など中間的な食材が良いでしょう。

アモンティリャード シェリー

アルマセニスタ アモンティリャード・デル・プエルト 1/10 / エミリオ・ルスタウ

 

オロロソやアモンティリャードなど、酸化的に造られているシェリーは抜栓後も長持ちするので、ホームパーティでタパスやピンチョスを作った際は、ぜひ本格的にシェリーを合わせて楽しんでみてくださいね。

シェリーの飲み方

レブヒート

それでは実際にシェリーの飲み方をご紹介します。

ストレートで飲む

もっとも基本的な飲み方ですが、シェリーはワイン。ワイングラスに注いでそのまま飲みましょう。

使用するグラスは白ワイン用グラスで、温度も白ワインと同じくらいがおすすめです。

シェリー酒というと小さなグラスに入れて飲むイメージがあるかも知れませんが、小さなグラスでは香りを十分に楽しむことが出来ないため、あまり推奨できません。

カクテルにして飲む

シェリーはカクテルにして飲むことも多いワインです。

アメリカではシェリー原産地呼称統制委員会が主催し、シェリーのカクテルコンペティションが毎年開催されているほど。

特に地元スペインで一般的な飲み方が、フィノ(またはマンサニーリャ)を炭酸飲料で割る「レブヒート」です。

氷を入れたグラスにシェリーと炭酸飲料7UPを1:2の割合で注ぎ、ミントの葉を添えれば、暑い季節においしいレブヒートの出来上がりです。(炭酸飲料はサイダーで代用可能)

アイスクリームと一緒に

最後は、極甘口シェリーのペドロ・ヒメネスの飲み方。

世界の甘口ワインの中でも、かなり甘い部類に入るペドロ・ヒメネスをそれだけで飲むのは辛い場合もあります。

 そこでおすすめなのがアイスクリームにかける方法。ペドロ・ヒメネスの濃縮したレーズンのような味わいと、アイスクリームの味わいが完璧にマッチし、ワンランク上の大人のデザートに変身します。

試したことがない方はぜひ一度お試しください。

有名生産者

シェリーの飲み方や種類はわかったけれど、どれが美味しいかわからない!という方のために、最後に代表的なシェリー生産者を紹介します。

エミリオ・ルスタウ

シェリー屈指の名門メーカーが、エミリオ・ルスタウ。

世界的に権威のあるインターナショナル・ワイン・チャレンジ・コンペティションにて、最優秀賞を7年連続で受賞するなど、名実ともにヘレスを代表する生産者です。

日本でも広く流通しているので入手が容易なのも嬉しい点です。

エキポ・ナバソス

エキポ・ナバソスは、生産者というよりシェリー愛好家のグループ。

彼らは、シェリーのワイナリーを巡り、テイスティングをして選び抜いた古い樽に入ったとびきりのシェリーを買い取り、瓶詰し販売しています。

販売本数も限られており値段も相応ですが、最高品質で稀少なシェリーを販売していると言えるでしょう。

まとめ

シェリーは、ワイン愛好家でも飲む人が少なく、日本人にとっては少し馴染みの薄いお酒です。

ところが、驚くことに日本には「ベネンシアドール」というシェリーの有資格者が世界で最も多くいます。そんな彼らのおかげか、ここ数年の日本へのシェリー輸出量は大きく右肩あがり。

気が付けば、本格的シェリーブームが始まっているかも知れませんよ?