変化した伝統産地、ドイツワインの特徴

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公開日 : 2023.4.4
更新日 : 2023.4.4
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ドイツの風景

ドイツは世界のワイン産地の中でも北に位置し、その冷涼な気候に由来する美しい酸と繊細な芳香を備えた白ワインの産地として知られています。


「ドイツワイン=甘口」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、それはもう一昔前の話。


現在は辛口ワインの生産が主流になり、甘口ワインに特化されていたドイツワイン法も2021年に改定されました。


そこで今回はドイツワインの特徴と現状についてお伝えしたいと思います。

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目次

ドイツってどんなところ?

ドイツのブドウ畑

ドイツは現在のヨーロッパの主なワイン生産国の中で、イギリスに次いで北に位置する伝統的なワイン生産国です。ドイツのワイン生産地域は、世界のブドウ栽培地の中でも北に位置しており、北緯47~52度にあります。


ワイン生産地域の大半が分布するフランス寄りの南西部は、大西洋と大陸の両方の気候的影響を受けて、冬は温暖で夏は涼しく乾燥しています。


ドイツの年間平均気温は9〜10度と他国のワイン産地に比べると冷涼です。また、ドイツではブドウの成長期にあたる夏から秋にかけて雨が降りやすく、年間日照時間も1300〜1800時間と比較的短いのが特徴です。


このような気候条件のドイツでは、かつてはブドウが完熟するのは非常に稀で、糖度の高いブドウを得ることは困難でした。そのため、当時のドイツワイン法では、最も糖度の高いブドウから造られた甘口ワインが最高位の肩書きとなったことで、生産者は甘口の白ワイン生産に力を入れていました。


「ドイツワイン=甘口」というイメージがあるのはそのためです。


しかし、1990年半ば頃からは世界的な赤ワインブームの影響で、ドイツでも赤ワイン用品種の栽培が急速に増えました。と同時に、ワインの消費スタイルも変化し、フランスやイタリアのように食事と一緒に楽しむための辛口ワインの需要が急増したのです。現在、ドイツワイン全生産量の約7割が辛口・中辛口ワインとなっています。

ドイツワインの特徴

白ワイン

今も昔もドイツは白ワインの生産が主流で、2018年の統計では全生産量の3分の2が白ワインとなっています。


冷涼で日照時間の短いドイツでは、ブドウはゆっくりと成熟します。そのため、果実が熟す前の綺麗な酸を保ったまま、エキスとアロマが蓄積され、果実の甘みと酸味のバランスのとれたワインが生まれるのです。


また、赤ワインも注目されています。というのも、近年のナチュラル志向な食のトレンドに、ドイツの冷涼な気候のもとで造られるライトなスタイルの赤ワインがマッチしており、世界的な需要が高まっているからです。


オーガニックブドウを原料とするワインやナチュラルワインの生産量も増えています。

温暖化の影響

ドイツの風景

ドイツに限らず、世界中のワイン産地で温暖化の影響は避けられず、生産者はその対応に迫られています。


冷涼な気候のドイツでも、夏の最高気温が40度近くまで上昇することが珍しくなくなりました。以前はドイツでブドウが完熟するのは非常に稀でしたが、近年は熟しやすくなっています。そういう意味ではドイツは温暖化の恩恵を受けている産地かもしれません。


また、温暖化の影響を受け、これまでドイツでは栽培するのが難しいとされてきたメルロやカベルネ・ソーヴィニヨンなど、ヨーロッパの比較的温暖な産地で栽培されている品種に挑戦し始める生産者も出てきました。


ただ、気温上昇により美しい酸と繊細な芳香を備えたドイツワインのスタイルが変わってしまうという懸念もあります。


温暖化の恩恵を受けていると言われるドイツでも、この地球規模の問題に向き合わなければならないのです。

代表的な品種

ドイツを代表するブドウ品種はリースリングとシュペートブルグンダーです。この二つの品種についてご説明します。

リースリング

リースリング

ドイツ国内はおろか、世界最大の栽培面積を誇るのがリースリング。


ドイツワインと言えば、細長いボトルに入ったリースリングの白ワインをイメージされる方も多いでしょう。ドイツではリースリングを原料として、辛口から極甘口まで幅広いスタイルのワインが造られています。


リースリングはドイツのライン川流域原産の白ブドウ品種で、豊富な酸と、花や香水に例えられるような華やかな芳香を持ちます。


リースリングはたいてい単一で用いられ、ドイツのような冷涼な産地では豊富な酸味とミネラル感、時に石油香と呼ばれるこの品種特有の香りを持ったワインが生まれます。


アイスワインや貴腐ワインに仕立てられると、10年〜20年程度の長期熟成も可能です。

リースリングのワイン一覧

シュペートブルグンダー

シュペートブルグンダー

ドイツで最も栽培面積の広い黒ブドウ品種はシュペートブルグンダーで、ピノ・ノワールの別名です。884年にカロリング家のカール3世がシュペートブルグンダーの苗をフランス・ブルゴーニュ地方からボーデン湖畔地方に持ち帰ったと言われています。


シュペートブルグンダーは果皮が薄いブドウのため、ドイツのような冷涼な気候のもとでは、一般的に色合いは薄めで、赤系果実の豊かな香り、フレッシュな果実味と酸味を持ち、タンニンは控えめでなめらかな口当たりのワインとなります。


ドイツ国内では比較的温暖な南部のアール地方やバーデン地方で多く栽培されています。

シュペートブルグンダーの一覧

代表的な産地

ドイツ産地の地図

ドイツには13の特定ワイン生産地域があり、原産地呼称保護ワインであるクヴァリテーツヴァインとプレディカーツヴァインはこの特定ワイン生産地域でのみ生産することができます。


13地域のうち11地域がドイツ南西部のライン川とその支流の流域にあり、2地域がチェコ・ポーランド寄りのドイツ東部にあります。代表的な四つの生産地域を紹介します。

モーゼル

フランス・アルザスのヴォージュ山脈を水源とするモーゼル川に沿って広がるワイン産地。川の流れに沿って様々に向きを変える渓谷の急斜面に畑が広がっています。


この地域のブドウ畑の約60%をリースリングが占めており、かつてはエレガントな甘口白ワインの生産が主流でしたが、近年は高品質な辛口の白ワインが多く造られています。また、シュペートブルグンダーの栽培面積も増えています。

モーゼルのワイン一覧

ラインガウ

北緯50度に沿って西南西から北北西へと流れるライン川の右岸(北側)に広がるワイン産地。ヨハニスベルク、カイゼンハイム、リューデスハイムといった有名なブドウ畑や大学がある村が続いています。


ラインガウのブドウ畑の78%をリースリング、12%をシュペートブルグンダーが占めています。最高峰のリースリングを生産する地域と言われており、ドイツを代表する銘醸地です。

ラインガウのワイン一覧

ラインヘッセン

ドイツ最大のワイン生産地域。温暖な気候、石灰質を含む肥沃なレス土壌で、1980年代まではリープフラウミルヒに代表される量産型甘口ワインの主要生産地でしたが、現在はテロワールを反映させた高品質なワインが生産されるようになりました。


白ブドウはリースリング、ミュラー・トゥルガウ、シルヴァーナー、黒ブドウはドルンフェルダーの栽培面積が広いです。

ラインヘッセンのワイン一覧

ファルツ

ドイツで2番目に大きいワイン産地。ラインヘッセンの南側に地続きで広がっており、ブドウ畑は山地の麓の斜面から東西に約15km、南北に約85kmに渡っています。南端はフランスとの国境に接し、一部のブドウ畑はフランス側にあります。


1980年代まではミュラー・トゥルガウ等の交配品種による甘口ワインが、主に協同組合によって盛んに造られていましたが、1990年代後半からは伝統品種による辛口ワインの生産にシフトしました。


近年はとりわけ若手生産者の活躍が著しく、ダイナミックな産地に変貌しました。

ファルツのワイン一覧

まとめ

20世紀以降、時代の移り変わりと共に、ドイツワインのスタイル、品質は常に変化してきました。


そして現在は、ドイツは洗練された辛口ワインの産地として世界から注目されています。この波に乗り遅れないよう、ドイツワインをチェックしてみてくださいね。

参考文献:日本ソムリエ協会 教本 2022

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