2024年はワインを知って楽しむそんな1年になりますように!と思いを込めて、タイプや産地、テクノロジー、サステナブル、ペアリングなどワインにまつわる情報をまとめました。
今年もワインをもっと楽しみたい、そんなあなたにエノテカタイムス編集部が注目するワイントピックスをお届けします。最後に後編です。
目次
持続可能なワイン生産の可能性を秘めた「PIWI品種」
PIWI(ピーヴィー)品種とは、ドイツ語のPilzwiderstandsfähige Rebsortenの略称で「真菌耐性ブドウ品種」のことを指します。通常、ブドウ栽培では菌類による病害を防ぐため、農薬を使用することが多いとされています。しかしPIWI品種はブドウの代表的な病害であるうどんこ病やべと病、灰色かび病などに対して高いレベルでの耐性を備えており、農薬の使用を大幅に削減することが可能です。
環境保護の観点からドイツでは、この品種に対して1980年代以降積極的な研究が行われてきました。農薬散布量が減ることで、散布に使用する機器類の使用回数が減り、CO2排出量も節減されます。
また、農薬散布による健康被害や労力も少なく済むため、あらゆる面でコスト削減が可能です。近年、フランス・ボルドーのシャトー・テューレイでは、カベルネ・ソーヴィニヨンとPIWI品種であるソラリスの交配で生まれた、灰色かび病への耐性のあるハイブリット品種を実験的に栽培しています。そして今後もサステナブルな取り組みの一環として積極的な取り入れが検討されています。異常気象の影響が顕著なワイン業界において、持続可能な農業に大きく貢献するとして、今後も期待が高まります。
参考:PIWI International
食中酒として再注目!プロセッコ
世界で最も売れているスパークリングワイン、プロセッコ。気軽に飲める軽やかな味わいとお手頃な価格から、ワインラヴァーはもちろんワインに親しみのない方や若い世代にも人気のスパークリングワインです。
近年、生産国のイタリアでは、仕事やライフスタイルの変化によってTPOに合わせてワインを楽しむ飲み方が主流になってきています。プロセッコはそれまで食前酒として飲むことが一般的でしたが、シンプルな味わいでガス圧も低いことから、最近は食中酒として楽しまれることも多いとか。
このスタイルは北イタリア周辺の諸国にも広がっており、生産量もますます拡大しています。日本でも2020年にプロセッコ専門のバーが誕生し、より気軽に楽しめるワインとして注目が集まっています。
参考:月刊たる2023年10月号特集「イタリアワインの現在」
おすすめのプロセッコはこちら
名門アレグリーニが手がける、ヴィンテージ・スパークリングワイン。フルーティーな果実味と爽やかな酸味がバランス良く調和した、繊細で上品な味わいのプロセッコです。
世界で続くロゼワインブーム
世界ではロゼワインの消費量が10年以上増加傾向にあります。その人気は衰えず、一時的な流行ではない定番として定着してきています。
2000年代に国内のタイプ別消費量でロゼワインが白ワインを抜いて第2位となって以来、フランスではその飲み口の軽さと華やかな味わいから、特に若者の間で選ばれることが多いとか。
2020年にはロゼ・シャンパーニュに特化したメゾン「フルール・ド・ミラヴァル」が誕生し、話題となりました。名生産者を筆頭に広がり続けるロゼワインの世界に2024年も大注目です。
参考:The drinks business「French prefer rosé to red wine」2023年9月26日記事
スクリューキャップの進化
ひねるだけで開く上、再栓も容易なスクリューキャップ。オーストラリアやニュージーランドにおいての普及率は90%以上にのぼり、近年では各国の名門生産者もスクリューキャップを使用するケースが増えています。
イタリアの名手イエルマンも積極的に研究に取り組んでおり、2023年現在ほとんどのワインにおいてスクリューキャップを採用しています。イエルマンの研究により挙げられたスクリューキャップの利点は、余分な酸化を防ぐため理想の味わいを表現できることや、ブショネがほぼないこと。また、酸化防止剤の使用量を約25%軽減することが可能なため、持続可能な開発目標の1つとしても、スクリューキャップが非常に有用であるということです。
北イタリアの白ワインの名手イエルマンを代表する、フレッシュな果実味と豊かな酸味をもったキレのある味わいが魅力の白ワインです。華やかな果実とハーブの風味が、上品な余韻を演出します。
ワインとNFT
NFT(Non-Fungible Token)とは「非代替性トークン」という意味で、保有証明書や鑑定書が付いたデジタルデータのことを指します。NFTの大きな特徴は、同様にブロックチェーンを使用する仮想通貨とは異なり「代替不可能」であること。
NFTは見た目は全く同じデジタルアートであっても、それぞれに紐づけられている識別情報があり価値が異なるため、仮想通貨のように交換することができません。そのためNFTを付与することによってコピーや改ざんができなくなり、一点物としての価値を付与できるようになったのです
。ワイン業界においても、ワインに唯一性を与えることができる技術として近年注目を集めています。
2023年にはルイ・ロデレールを含む3つの大手シャンパーニュ・メゾンもNFTを取り入れることを発表しました。NFTに紐づけられた識別情報は深刻な偽造ワイン問題の解決策となります。また、この技術は現代に即した手段として、生産者と消費者の距離をより近づけることも期待されています。
参考:Decanter「Champagne Louis Roederer heads the line-up at new platform selling wine NFTs」2023年2月6日記事
注目を集める低アルコールワイン
健康志向が消費者のトレンドとなっている昨今、サステナブルやオーガニックというキーワードと並んで、低アルコールワインが注目を集めています。例えばイタリアで造られるモスカート・ダスティの基本的なアルコール度数は約5%となっており、通常のワインの半分以下です。
アルコール度数が1%変わると、ワインの味わいの印象は大きく変わってしまうのではないか?アルコールの低いワインっておいしいの?と思われるかもしれませんが、使用されているブドウの甘さをしっかりと楽しむことができるため、近年人気を博しています。ワイン初心者やお酒に弱いけどワインが飲みたいという方にもおすすめです。
おすすめの低アルコールワインはこちら
プルノットは名門アンティノリが手がける、ピエモンテで100年以上続く老舗ワイナリー。こちらのワインは微発泡の優しい口当たりが特徴の、ビスケットやクッキーと相性抜群な甘口ワインです。
定番料理に+1でワインと合わせる
ご家庭で作る定番料理をワインと一緒に楽しみたい!そんな時に役立つ、調味料+1アイデアをご紹介します。
シェフ監修
レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京シェフ。大学卒業後料理の道に進み、前職ではホテルのフレンチレストランに勤務。ワインが好きでエノテカに入社し、フレンチをベースに様々な国の料理からヒントを得たメニューを提案しています。
定番の家庭料理も身近な調味料を+1することで、酸味や果実味、風味が変わり、ワインとの親和性が生まれます!
鶏の照り焼き+マーマレード
甘辛い照り焼きの調理の仕上げにマーマレードを適量加えることで、芳醇な果実感と爽やかな香り、ほのかな苦みをプラス。白身肉と相性の良い柑橘が旨みも引き出してくれます。
温暖な地域で造られたリッチなシャルドネや、味わいがしっかりとした色みの濃いロゼワインにベストマッチ!
肉じゃが+サワークリーム
お皿に盛り付けた後に適量加えることで、出汁の旨みにまろやかさと程よい酸味が加わり、軽やかな口当たりに。肉じゃが自体に和風だしではなく、鶏ガラ・コンソメなどを使うとより洋風な仕上がりになります。
すっきりとした味わいのスパークリングワインをしっかり冷やして、一緒にどうぞ。
麻婆茄子
仕上げにエキゾチックなスパイスを振りかけて独特な中華の風味と調和させることで、ワインの香りも際立ち複雑味も増して感じられます。
スペインのガルナッチャを用いた赤ワインなど、スパイシーでジューシーなワインと合わせていただくのがおすすめ!