デザートワインってどんなワイン?

甘口ワイン

ブドウ本来の自然の甘味が凝縮されたデザートワインは、ワイン愛好家はもちろん、ワインを飲み慣れない方、お酒が強くない方にもファンが多いお酒です。

しかしデザートワインはレストランで飲む特別な飲み物で、日常のワインライフに取り入れるのはハードルが高いと思っておられる方が多いかもしれません。

そこで、今回はデザートワインを詳しく解説するとともに、デザートワインを身近に楽しむ方法をご紹介したいと思います。

デザートワインとは

デザートワインとは、一般的に甘口ワインのことを指します。甘口ワインと一口で言っても、ほのかに甘いものから極甘口まで、またアルコール度数の低いものから高いものまで、世界のワイン産地では多様な甘口ワインが造られています。

デザートワインに明確な定義はありませんが、共通していることは原料となるブドウの糖度を残して甘口に仕上げたワインということです。

どうして甘くなる?

甘口ワイン

では、甘口ワインはどのように造られるのでしょうか?その方法は大きく分けて二つあります。

一つは、原料となるブドウの糖度を上げる方法です。

ワインはブドウに含まれる糖分が酵母の働きで発酵しアルコールと二酸化炭素に変わることで生まれるお酒です。マスト(ブドウ果汁)の糖分が全て消化される、もしくは、容量パーセントで15度前後になると発酵は停止します。

一般的に、糖度25度でアルコール度数15度前後のワインとなりますから、糖度が25度以上のブドウでワインを造れば糖分が残り、甘いワインができます。

もう一つの方法は、ブドウのアルコール発酵を途中で止める方法です。

ブドウの糖分がアルコール発酵により全て消化されると辛口のワインになりますが、途中で発酵を止めれば糖分が残るため甘口になります。発酵を途中で止める方法は、冷却する、二酸化硫黄を添加する、あるいはブランデーなどアルコール度数の高いお酒を添加するという方法があります。

いずれにせよ気をつけなければならないのは、どちら方法でもワインには糖分が残っているため、瓶内で再びアルコール発酵が始まってしまう可能性があるということです。

予定していた味わいと異なるワインになってしまうリスクを避けるため、細かいフィルターを通して微生物を完全に取り除いたり、二酸化硫黄を多めに添加するといった処理が行われます。

デザートワインの種類

デザートワインは世界中で造られていますが、そのタイプや造り方は産地のテロワール、主に気候と深く関係しています。

貴腐ワイン

貴腐化したブドウ

貴腐ワインとは貴腐菌が付着したブドウから造られる極甘口のワインです。

貴腐菌に由来する蜂蜜やメロンなどの芳ばしく複雑な香りとしっかりとした酸を持つ長期熟成にも耐えうるワインで、フランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイワインは世界三大貴腐ワインと呼ばれています。

貴腐菌はボトリティス・シネレア菌というブドウの果皮に付着するカビの一種で、この菌が果皮に付着すると果皮の組織が破壊され、そこからブドウの水分が蒸発します。そのため、エキスが凝縮された糖度の高いマストが得られます。

しかし、この貴腐菌は特別な環境下でなければブドウは生育しません。具体的には、明け方に霧が発生して菌の生育に都合の良い温度や湿度状態になっており、さらに日中は晴天で乾燥してブドウの水分が蒸発するような奇跡的な環境でなければならないのです。

このような環境でない場合に付着したカビは灰色カビ病と呼ばれ、ブドウのみならずイチゴやレタスなどにも生える病害です。

貴腐ワインは貴腐菌が生育する限られた場所でしか造ることができない上に、収穫や選果はもちろん、醸造にも非常に手間がかかります。

最上級の貴腐ワインはブドウ樹1本からグラス1杯分のワインしかできないと言われており、非常に高価です。デザートワインの最高峰と言っても過言ではないでしょう。

アイスワイン

凍ったブドウ

アイスワインは、ブドウが樹上で凍結した状態の時に収穫し、凍ったまま圧搾して造られる甘口のワインです。外気でブドウが凍るわけですから寒冷な地域でなければ生産することができません。主な生産国はカナダ、ドイツ、オーストリアです。

規定の気温で凍結したブドウを圧搾すると、ブドウ果粒内の水分は凍っていますが、その他のエキス分は凍っていないため、非常に凝縮した糖度の高いマストが得られます。

原料ブドウはドイツやオーストリアでは主にリースリング、カナダではヴィダルが主流で、いずれも耐寒性に優れた品種です。ただ、熟したブドウを収穫せずにおくことは霜による冷害や鳥などの野生動物の被害に合うなど大きなリスクが伴う上に、収穫を遅らせても収穫時に規定の気温まで下がるかどうかもわかりません。

その上、ブドウ一房から得られるマストはわずかスプーン1杯程度と極めて少量です。そのため、アイスワインは非常に希少価値が高く、高価になるのです。

希少性が高まっている理由には地球温暖化も挙げられます。ドイツでは2019年の冬は過去2番目の暖かさだったため、アイスワインの生産はほんの数軒に留まりました。2019年だけでなく、ドイツではここ数年温暖化の影響でアイスワインの生産は困難な状況が続いているのです。

アイスワインはブドウを過熟させるわけではなく、ブドウが適度に熟した状態で凍結するため、搾汁したマストにはピュアな果実味と高い酸が残ります。そのため、出来上がるアイスワインは甘味と酸味のバランスが優れており、甘口ながらすっきりとした味わいになります。

また、ドイツ産のアイスワインは最低アルコール度数5.5%となっており、通常のワインよりアルコール度数が低くなっています。お酒の弱い方にもおすすめのデザートワインです。

遅摘みワイン

遅摘みブドウ

遅摘みワイン(=レイトハーヴェスト)とは、完熟したブドウの収穫時期を遅らせ、水分が蒸発し糖度の上がった遅摘みのブドウから造られる甘口ワインです。

フランスの南西地方ジュランソンやドイツが代表的な産地で、ドイツではシュペートレーゼと呼ばれます。

イタリアやチリ、ニュージーランド等、世界各国で生産されており、濃厚な甘味のものからほのかに甘いものまで残糖度には差があります。日本でも北海道で遅摘みのケルナーから良質なデザートワインが造られています。

ストローワイン

藁にのったブドウ

ストローワインとは、干しブドウから造られる甘口ワインのことを言います。収穫したブドウを藁(straw)の上で乾かしてから造られるためこのように呼ばれるようになりました。

現在は藁の上で干したブドウからだけでなく、吊るして干したブドウなどから造られたワインもストローワインと呼ばれます。

乾燥して水分が蒸散した干しブドウは糖度が高いため、醸造すると通常のワインよりもアルコール度数が1〜3%程度高くなり、赤ワインの場合でも白ワインの場合でも味わいは非常に濃厚で、長期熟成にも耐えうるワインとなります。フランス、イタリア、スペイン、オーストラリアなどで主に生産されています。

収穫したブドウを2〜3ヶ月陰干しし、エキスを凝縮させることをアパッシメントと言いますが、そのアパッシメントによって得られた濃厚なマストから造られる甘口のワインのことをイタリアではパッシートと言います。また、パッシートと同じく陰干ししたブドウから造られる甘口ワインで、ヴェネト州で造られたものをレチョートと言います。

因みに、イタリアのヴェネト州ヴァルポリチェッラ地区で、アパッシメントにより果実味と糖分を凝縮させたブドウから造られる赤ワインをアマローネと言いますが、糖度の高いマストはほぼ全て発酵させるため辛口となり、必然的にアルコール度数も14%以上と非常に高くなります。

酒精強化ワイン

グラスに入ったワイン

世界の三大酒精強化ワインと言われるスペインのシェリー、ポルトガルのポート、マデイラはいずれも甘口から辛口まで様々なタイプが造られていますが、甘口タイプはデザートワインとしてヨーロッパでは古くから嗜まれています。

そもそも酒精強化ワインは、通常のワインよりアルコール度数の高い保存性に優れたワインで、マストの発酵途中または発酵後にアルコールを添加して造られます。マストの発酵途中にアルコールを添加した場合は、糖度が残った状態で発酵が止まるため甘口となります。

フランスではヴァン・ドゥー・ナチュレルと言い、ローヌ地方のミュスカ・ド・ボーム・ド・ブニーズや南仏ルーション地方のモーリィーやバニュルス、リヴザルトがこれにあたります。

また、未発酵のマストにアルコールを添加して造られる甘口ワインをフランスではヴァン・ド・リキュールと言います。添加するアルコールは地方によって異なりますが、オー・ド・ヴィやマール、コニャックやアルマニャックが用いられます。

ジュラ地方のマックヴァン・ド・ジュラは地元産(フランシュ・コンテ産)のオー・ド・ヴィを添加して造られるヴァン・ド・リキュールです。また、コニャック地方でコニャックを添加して造られるピノー・デ・シャラント、アルマニャック地方でアルマニャックを添加して造られるフロック・ド・ガスコーニュが有名です。

デザートワインの楽しみ方

甘口ワインの楽しみ方

ここからはデザートワインを飲むときのポイントから合わせて美味しいおつまみまで、楽しみ方をご紹介します。

デザートワインをまだ飲んだことがない方はぜひ参考にしてみてください!

食前・食後酒に

甘いデザートワインは食後酒のイメージが強いですが、食前酒としてもおすすめです。

食前にアルコール度数の低いフレッシュな甘口ワインを飲めば心身ともにリラックスしますし、焦がしたカラメルのような心地良い苦味のあるストローワインや、アルコール度数が高めのヴァン・ド・リキュール等は、胃を刺激し食欲を増進させます。食前に飲む少量のデザートワインは1日の疲れを癒してくれるでしょう。

また、食後酒としてのデザートワインは言わずもがな。デザート代わりの1杯でも良いですし、デザートと一緒に楽しめればより至福の一時となるでしょう。

食後酒は料理を食べた後の口直しの役目もありますが、デザートワインは何よりその優雅で甘美な香りや味わいが、食後の満腹感を心理的にも落ち着かせてくれます。

よく冷やして飲む

甘味の強いデザートワインは、温度が高いと酸味がぼやけ重い口当たりになってしまいます。デザートワインは甘味だけでなく酸味も重要で、適度な酸味があるからこそすっきりとした飲み口となるのです。

そのためにも、しっかりと冷やしてからグラスに注ぎましょう。ワインの甘さにもよりますが概ね7度前後が目安です。

合わせるおつまみ

デザートワインは軽いおつまみがあるとより楽しめます。甘いワインにフォアグラは定番の組み合わせですが、最近は少し重く感じる方が多いようです。

もっとカジュアルにデザートワインを楽しむなら、チーズやフルーツ、アイスクリーム等が簡単でおすすめです。

チーズなら塩味の強いブルーチーズがよく合います。ワインの強い甘味とブルーチーズのピリリとした塩味が驚くほどマッチします。

また、フルーツはフレッシュなら甘味の強いパイナップルやマンゴーなど、フルーツ菓子なら例えばフルーツのタルトがデザートワインと良く合います。

フルーツのソルベやアイスクリームとも最高の相性をみせます。ペドロ・ヒメネスなどの濃厚な甘味のデザートワインはバニラアイスクリームのソースにすると驚きの美味しさです。是非お試し下さい。

抜栓後ゆっくりと楽しむ

一般的にワインは抜栓すると酸化し始め、少しずつ風味は劣化します。ですから、辛口のスティルワインは抜栓したらできるだけ早く飲み切るのがベターです。

しかし、デザートワインは糖度が高いため抜栓後1ヶ月程度は風味が保たれ美味しく飲むことができます。これなら、慌てずに少しずつ楽しむことができますね。ただし、抜栓後は必ずしっかり栓をして冷蔵庫で保管するようにしましょう。

まとめ

甘美なデザートワインは、単なる食前・食後酒ではなく、心と身体を癒す特別な力があるように思えてなりません。

デザートワインの造り方に始まり、その歴史的文化的背景や希少性を知れば、なおさら感慨深い一口になるでしょう。

毎日忙しくしている人こそ、日常のワインライフにデザートワインを取り入れてみてはいかがでしょうか?