【号外】シュロスフォルラーツの会

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レポート
公開日 : 2017.3.20
更新日 : 2022.5.19
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エノテカのワインバイヤーが、ワイン界で活躍する人々をインタビューしてとことん語り合う企画「ワインバイヤーズトーク」。今回は号外として、バイヤーが参加したディナー会の模様を実況中継する「一人バイヤーズトーク」をお届けします!

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ヨナヨナ美食会が行われる東京のグルメ激戦区、麻布十番。この地で20年以上日本料理店を経営する宮下氏が2015年にオープンしたモダン和食「可不可(Kafuka)」。星付きレストランでシェフソムリエを歴任し現在はプロデューサーとして活躍する森上久生(Morigami Hisao)。ドイツが誇る高貴な白ワイン品種、リースリングを題材に一晩限りのハイパークリエイティブ料理が提供されたディナーに参加。シュロスフォルラーツの栽培・醸造責任者のロヴァルト・ヘップ氏は、自身でレストランも経営するフーディーズだがそんな彼に”天才的マリアージュ!”と言わせた料理とは???

目次

1218年創業の超名門ワイナリー

ヘップ氏が唯一知っている日本語「こんにちは」の発声でディナーは和やかにスタート。シュロスフォルラーツは1218年創業の超名門ワイナリーで、ヘップ氏は1999年に醸造責任者に就任。辛口リースリングの味わいに磨きをかけ、フードフレンドリーなワイン造りを信条にしています。

今晩のために空輸されたゼクト

一杯目のウエルカムドリンクは1861年より生産しているゼクト。フランスではシャンパーニュ、イタリアではフランチャコルタと呼ばれる瓶内二次発酵の製法で丁寧に時間をかけて造られたドイツ産スパークリングワインです。通常販売はされておらず、今晩のために空輸されたボトルに合わせたのは、えんどう豆とマッシュルームの温製スープ。

えんどう豆とマッシュルームの温製スープ

会が行われた3月某日夜は比較的寒く、凍えた参加者がホッコリした逸品。えんどう豆だけではゼクトの濃厚さに勝てないのであえてマッシュルームのコクを加えたのがポイント。さらにすだちの皮をすりゼクトの柑橘系アロマに同調させたのは繊細な感性の日本人的超マイクロマリアージュでした。

タラの芽 こごみ 白エビの天ぷら

天ぷらにして下さい、と言わんばかりの美味しい春の山菜。緑色から連想される清涼感のある味わいと適度な苦味がゼクトのミネラル感と良く合いました。

淡路の真鯛と辛口リースリングカビネット

真鯛の刺身に蕪 菜花 煎り梅酒 柚子を添えて

日本酒の磨き○割○分の感性に近いピュアリズムの世界観。厳しい海流で育ち旨味とコリコリした歯ごたえが美味しい淡路の真鯛と辛口リースリングカビネット。梅と柚子が豊富に含むクエン酸を異なる食材からダブル注入したソースは、ワインの甘酸っぱさとピッタリの相性。菜花の苦味がリースリングのミネラルと溶け合うのはゼクトと同じ感覚でした。

白ワインに肉?

鴨胸肉と帆立グリル 人参のピュレ 姫人参 ブラッドオレンジ

白ワインに肉?こんな挑戦的なペアリングを考えるのは森上さんだけかも。フランス産鴨肉の赤身はクセが少なく、リースリングシュペトレーゼの繊細な味わいを邪魔せず、どちらかと言えば皮に近い白い脂分とワインの甘酸っぱさの相性がスゴく美味しい。普通は「白ワインと帆立は定番の相性」と思われがちですが、動物性脂分とドンピシャの相性を体験した後だとホタテの存在感がかすむ。ブラッドオレンジを添えたのは、フレンチの定番料理鴨のオレンジソース添えからインスパイヤーされた料理で、酸味の目線で合わせる料理人のセンスにウットリ。

偉大な畑シュロスベルグ

甘鯛のロースト 新ごぼうと独活(ウド)のロースト カルダモン

今晩は青魚ではなく肉厚で筋肉質、プリッとした食感が楽しめる甘鯛をあえて選んだ。ゆっくりと火入れをしてクリーミーでしっとりとさせた質感に偉大な畑シュロスベルグで育てられたブドウのワインが旨味の接点で最高に合う。隠し味で振った白胡椒がワインのポテンシャルを開花させてくれ、シンプルに食材にフォーカスをあてたシェフの心意気が嬉しい。

13年の時を経た黄金色のリースリング

デュロック豚炭焼き 紅はるか 黄ビーツ クレソン 北条マデラトリュフソース 蕗(フキ)のとうおにぎり

デュロック豚とはアメリカのニュージャージー州の赤色の豚で、適度な脂分が甘くワインに合わせやすい豚肉。試作段階で炭火焼の豚肉にリンゴのピューレを添えたら、リンゴ感が強く出過ぎてクドかったのは、肉本来のフレーバーにリンゴの香りがあったから。本番ではピューレを止めシンプルに焼いた肉と肉汁のソースのみに仕上げた。13年の時を経て注がれ黄金色に熟成したワインはアプリコットやアカシアの甘い香りがあり、豚肉の豊潤な味わいに完璧な相性でした。

世界最高峰のトロッケンベーレンアウスレーゼ

杏仁豆腐 パパイヤ添え

一般的なワインディナーは、スパークリングワインから始まり白ワイン、赤ワイン、場合のよっては甘口ワイン、と生産地が異なったりブドウ品種が異なったりするものですが、今回の様に同じ生産者の同じ品種でディナーが組み立てられ、しかも白ワインのみとはニッチでマニアックな構成でした。しかしだからこそ、想像をはるかに越える斬新な発見に来場者の好奇心は刺激されたのではないでしょうか。
 そしてドイツワインの新たなポテンシャルが和食の料理人、日本人ソムリエによって創造されたのはグローバルに進化する現代グルメやワインペアリングの象徴だと感じました。
 この様な機会を提供いただいた可不可のスタッフの皆様、そして森上様に心より感謝申し上げます。

   

森上 久生(もりがみ ひさお)

レストランサンパウやベージュアランデュカス東京などでシェフソムリエを歴任。数々のソムリエコンクールで受賞経験を持つ。2013年に独立し櫻井翔 主演 大使閣下の料理人では主演者の所作指導を行なう。第一回国際ソムリエ協会認定ディプロマ。

伊藤憲二(いとう けんじ)

大阪、京都、鳥取などの日本料理店での勤務を経て2002年オーストラリアのメルボルンに渡る。Restaurant Hanabishi, Taxi Kitchenでシェフを務め2012年帰国。料理人として大切にしているのは「小さなサプライズを加えること」。可不可オープニングシェフ。

ロヴァルト・ヘップ

1999年にシュロスフォルラーツ社の栽培・醸造責任者に就任。かつて国立ワイン醸造所のダイレクターを務めていた経験を活かし、辛口リースリングの品質向上と高級甘口ワインの革新も実践中。

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