ブドウ品種を知ろう!サンジョヴェーゼ

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公開日 : 2024.11.25
更新日 : 2024.11.25
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サンジョヴェーゼ

イタリアの赤ワインといえば、サンジョヴェーゼから造られたワインをイメージする人が多いのではないでしょうか?


それもそのはず、イタリアで最も多く栽培されているブドウ品種がサンジョヴェーゼなのです。土壌や気候によって異なる表情を見せ、酸味と果実味のバランスがとれた味わいで世界中のワイン愛好家を魅了しています。


この記事では、サンジョヴェーゼの特徴や代表的な産地、そして相性の良い料理について、ソムリエの解説付きでご紹介します。

サンジョヴェーゼのワイン一覧

解説してくれるのは、田邉公一さん


田邉公一さん

J.S.A認定ソムリエ 飲と食の様々な可能性を拡げていく活動をしています。 2003年 J.S.A認定ソムリエ資格取得 2007年 第6回 キュヴェ・ルイーズ・ポメリー ソムリエコンテスト優勝 2018年 SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL資格取得 著書『ワインを楽しむ 人気ソムリエが教えるワインセレクト法』(マイナビ出版)2023年12月発売 X(旧Twitter):@tanabe_duvin Instagram:@koichi_wine

目次
サンジョヴェーゼの特徴

特徴

サンジョヴェーゼ

サンジョヴェーゼは、イタリア中部地方を原産とする赤ワイン用ブドウ品種です。


その栽培は主にイタリア国内に集中していますが、土壌に対する適応力が高い多産品種であるため、近年ではアメリカやオーストラリアでも栽培され、イタリア原産のブドウ品種としては珍しく国際的な広がりを見せています。


長い歴史をもつサンジョヴェーゼですが突然変異をしやすいブドウ品種としても知られています。大きく分けて「サンジョヴェーゼ・グロッソ」と「サンジョヴェーゼ・ピッコロ」の二つに分類されます。

ソムリエ解説!サンジョヴェーゼ・グロッソとサンジョヴェーゼ・ピッコロとは?

サンジョヴェーゼは非常に多くのクローン(遺伝的に同じ性質を持つもの)が存在し、トータル88のクローンがあると言われています。 「サンジョヴェーゼ・グロッソ」の系統と「サンジョヴェーゼ・ピッコロ」の系統の主な違いは、果粒の大きさで、「ピッコロ」はその名の通り粒が小さく、比較的軽やかなタイプのワインに仕上がるのが特徴。「グロッソ」は粒が大きく、より力強いスタイルのワインになる傾向があります。

サンジョヴェーゼ・グロッソとピッコロの違い

栽培においては、成熟が遅いため、暑い年には濃厚でアルコール度が高く、長期熟成に適したワインが造られますが、冷涼な年には酸味とタンニンが強調された味わいになる傾向があります。


また、サンジョヴェーゼの主産地であるイタリア半島中部は、東西に狭く、中央にはアペニン山脈が走っているため、地形が海沿いから平野、丘陵地、山岳地帯と多様に変化し、ブドウ畑のテロワールも非常に多彩です。


さらに、イタリア各地で異なる栽培文化が根付いており、同じサンジョヴェーゼを用いたワインであっても、産地ごとに異なるスタイルや味わいが生まれます。

サンジョヴェーゼの特徴

例えばサンジョヴェーゼ・ピッコロから造られる手頃な価格のキャンティは、スミレやチェリーのフレッシュな香り、豊かな果実味と酸味が特徴です。


一方、サンジョヴェーゼ・グロッソから造られるブルネッロ・ディ・モンタルチーノはプラムのような香りと豊富なタンニンを備え、重厚な味わいを持つワインとして知られています。


また、ワイン法にとらわれないスーパータスカンの生産者たちは、サンジョヴェーゼとフランス系の国際品種をブレンドし、より濃厚で凝縮感のあるワインに仕上げるなど、造り手によっても異なる味わいが楽しめます。

ソムリエ解説!サンジョヴェーゼは熟成させるとどうなるの?

サンジョヴェーゼは、渋みと酸味が豊かで、骨格のある赤ワインを造ることができます。渋みと酸味が豊富であるということは、酸化にも強く、長期熟成に耐えるワインを造るポテンシャルを備えているということにもなります。 熟成することで、香りは複雑性が増し、干しプラムや乾燥イチジクを想わせるドライフルーツやマッシュルームのニュアンスが現れ、タンニンは次第に果実味に溶け込んで調和がとれてなめらかな印象になり、複雑性のある風味が感じられるようになります。 ただし畑の立地等によっては、比較的軽快で、早く飲むのに適したタイプに仕上がるものも多く存在しています。

代表的な産地

サンジョヴェーゼの代表的な産地

サンジョヴェーゼの原産地であるイタリア中部のトスカーナ州が主要産地として有名ですが、トスカーナ州に隣接するラツィオ、ウンブリア、マルケ州でも栽培されています。


また、近年ではイタリア国外にも栽培地が広がり、イタリア文化の影響が強いフランスのコルシカ島やアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどでも生産が増えています。

イタリア・トスカーナ州

トスカーナの風景

トスカーナ州は、赤ワインの生産量が約9割と際立って多く、キャンティやブルネッロ・ディ・モンタルチーノといった有名なD.O.C.G.(※1)をはじめとする高品質なワインが数多く生産されています。そして、その高品質な赤ワインのほとんどがサンジョヴェーゼを主体にして造られています。


また、トスカーナ州の海岸部では、土着品種とカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどの国際品種をブレンドして造られる「スーパータスカン」と呼ばれるワインが盛んに生産されています。この地では、サンジョヴェーゼが国際品種とブレンドされることで、独自のスタイルが生み出されています。

※1 イタリアのワイン法で定められた「統制保証原産地呼称」のこと。ブドウの収量、ワインの収量、アルコール度などが厳しく制約された上級ワイン。なおかつ、出荷の際に国の検査を必要とするワインに与えられる最上級の格付け。

ソムリエ解説!キャンティとブルネッロ・モンタルチーノどう違う?

トスカーナ州を代表する赤ワインである「キャンティ」と「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。同じ州内で同じブドウ品種サンジョヴェーゼから造られるワインでありながら、それぞれが違ったスタイルを生み出しています。 キャンティはトスカーナ州の中央部に位置し、生産エリアが広く、畑の立地や生産者によってワインのスタイルの幅がとても広いのが特徴です。 一方、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、トスカーナ州の中央からやや南に位置するモンタルチーノ村周辺のブドウから生まれる赤ワインで、凝縮した果実感と力強さを感じる、長期熟成タイプに仕上がる傾向があります。

キャンティとブルネッロ・ディ・モンタルチーノの違い

相性の良い料理

サンジョヴェーゼと相性の良い料理

サンジョヴェーゼにピッタリな料理を田邉さんに教えてもらいました。

サンジョヴェーゼにピッタリな料理

ソムリエ解説!洋食ならどんな料理が合う?

サンジョヴェーゼの故郷であるトスカーナ州は、郷土料理であるビステッカ・ア・ラ・フィオレンティーナ(厚切りTボーンステーキ)を代表とする牛肉を使った料理でも有名です。 樽熟成したサンジョヴェーゼの赤ワインは牛肉のステーキと相性が良く、スパイスの風味と豊かなタンニンと酸味が、ステーキの香ばしい風味に同調しながら肉の旨味を引き出してくれます。こちらに黒オリーブやトマトを一緒に添えることでより相性は高まるでしょう。 サンジョヴェーゼのワインに感じられるトマトのニュアンスと豊かな酸味が、トマトを使った料理にもとてもよく合うため、カリカリのベーコンを加えたトマトソースのパスタとのペアリングもおすすめです。

ソムリエ解説!和食ならどんな料理が合う?

サンジョヴェーゼの赤ワインの中でも、和食に合わせる場合は、樽のニュアンスがやや控えめで、程良く熟成したタイプを推奨します。 こちらのワインには、モツ煮込みとのペアリングがおすすめ。モツの味わいと独特のテクスチャー、出汁の風味に、ワインの果実味とほのかなスパイス感、緻密なタンニンと酸味が調和し、双方の味わいがより引き立ちます。にんじんや大根、ゴボウ等のお野菜が持っている味わいにも、ワインの果実味と程良い熟成からくる香りや風味がよく合います。

ソムリエ解説!中華ならどんな料理が合う?

サンジョヴェーゼの赤ワインの香りに感じられるレッドプラムやドライフルーツ、トマトやパプリカ、ほのかなスパイスのニュアンス、緻密なタンニンとしなやかな酸味、骨格のある味わい。 この個性に対して中華料理をペアリングする場合は、牛肉のオイスターソース炒めがおすすめ。牛肉の旨みと鉄分的なニュアンス、オイスターソースのヨード感、赤パプリカやナスの風味に、ワインに感じられるさまざまな風味とほのかなヨード香、スパイス感が調和し、緻密で溶け込んだタンニンと酸味が肉と野菜の味わいを引き出し、双方の味わいがより豊かに広がります。

おすすめワイン

最後に、田邉さんおすすめのサンジョヴェーゼを使ったワインを3本ご紹介します。

キャンティ・クラシコ・アマ / カステッロ・ディ・アマ

キャンティ・クラシコの名だたる生産者の中でも、世界的に高い知名度を誇るワイナリーの一つ。 こちらのワインは、フラッグシップであるサン・ロレンツォの畑の若樹のブドウを使用して造られる秀逸な赤ワイン。私自身も、これまでにレストランやワインスクールの授業で何度もセレクトして供出してきた経験のある、お気に入りのキャンティ・クラシコの一つです。

キャンティ・クラシコ・アマ
750ml

キャンティ・クラシコ・アマ

  • エレガント&クラシック

  • 2021

    4,730

    (税込)

  • JS 93

レ・ディフェーゼ / テヌータ・サン・グイド

元祖スーパータスカンとして世界的な人気を誇るイタリアワインの至宝「サッシカイア」。こちらのワインは、気候や土壌、栽培から醸造まで、サッシカイアとほぼ同じ条件の中で生まれたワイン。 カベルネ・ソーヴィニヨンとサンジョヴェーゼを絶妙なバランスでブレンドし、ボルドー品種を使用しながらもトスカーナらしさを感じるスタイルで、素晴らしい完成度に仕上がっています。

レ・ディフェーゼ
750ml

レ・ディフェーゼ

  • パワフル&ストラクチャー

  • 2022

    4,950

    (税込)

  • V 92

サン・ロレンツォ キャンティ・クラシコ グラン・セレツィオーネ / カステッロ・ディ・アマ

こちらのワインは、先述したキャンティ・クラシコの名門 カステッロ・ディ・アマが生み出す上級キュヴェ。果実の凝縮感と複雑性、豊潤さとエレガントさを兼ね備えています。 アメリカの有名なワイン評価誌ワイン・スペクテーターが選出する2014年度TOP100ワインにおいて、第6位という快挙も成し遂げた実績のある同生産者を代表する1本。キャンティ・クラシコの真骨頂をぜひ体感してみてください。

サン・ロレンツォ キャンティ・クラシコ グラン・セレツィオーネ
750ml

サン・ロレンツォ キャンティ・クラシコ グラン・セレツィオーネ

  • エレガント&クラシック

  • 2019

    8,250

    (税込)

  • JS 97

まとめ

サンジョヴェーゼは順応性と生産性の高さから、イタリアではかつて質より量を重視して栽培されていた時期がありました。


しかし、時代に応じて高品質を目指した生産に切り替わったことで、サンジョヴェーゼのワイン全体の品質向上につながりました。


イタリアワインの定番でありながら日々進化を続けるサンジョヴェーゼのワインをぜひお楽しみください。

サンジョヴェーゼのワイン一覧

文=川畑あかり

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