ポートワインってどんなお酒?

ポートワイン

みなさん「ポートワイン」ってご存知ですか?

ポルトガルで生まれたポートワインは濃厚な甘さと深いコクで、イギリスをはじめとした世界中の国々で食後酒として愛されています。

甘口ゆえに馴染みのない方も多いかと思いますが、今回は世界3大酒精強化ワインの一つ、ポートワインについて解説します。

ポートワインとは?

ポートワイン

ポートワインとは、ポルトガルのドウロ地方で造られる酒精強化ワイン(ブランデーを添加したワイン)の一種。

「ポルトガルの宝石」とも称され、世界3大酒精強化ワインに数えられるポルトガルを代表するワインです。

ポートワインは、アルコール発酵中にブランデーを添加することで糖分がアルコールに変換されるのが中断。ブドウ果汁の甘みをそのまま残しているため、甘口ワインに分類されます。

ポルトガルのワインですが、元々イギリスに輸出する為に造られ始めたワインで、現在でも高品質なポートワインの最大のマーケットはイギリス。

日本では、ポートワインを模した「赤玉ポートワイン」が爆発的ヒットをしたので、そちらの方が馴染み深い方も多いでしょう。

なお、「赤玉ポートワイン」は原産地保護の観点から、現在は「赤玉スイートワイン」に名称を変更しています。

ポートワインの種類

ポートワインというと赤がイメージされますが、実はホワイトポートや近年開発されたロゼポートも存在しており、種類が豊富です。

しかし、やはりポートワインというと生産と販売のどちらも赤が主体。大きく分けると以下のルビータイプとトゥニータイプに区別できます。

ルビータイプ

ルビータイプは、通常のワインと同じように短期間の樽熟成をして出荷されるタイプ。

ルビー(Ruby)、レイト・ボトルド・ヴィンテージ(L.B.V.)、ヴィンテージ(Vintage)とったラベル表記をされたワインが該当します。

フレッシュな味わいを楽しむ安価なルビーポートや、100年以上の熟成が可能と言われている高級なヴィンテージポート、その中間のL.B.Vなど飲み頃は様々です。

特にヴィンテージポートは、人生と同じくらいの長期熟成が出来るワインとしては安価なため、子供のバースデーヴィンテージなどにオススメ。

イギリスの上流階級では、子供の誕生年のヴィンテージポートを買っておく習慣もあったそうです。

通常のルビータイプは赤や黒果実のフルーティなアロマを、少し高級なLBVとヴィンテージは黒系果実とスパイスの凝縮した香りを楽しむことができます。

瓶熟成した期間の長いルビー系ポートは、通常のワインと同じように澱が発生しているのでデキャンタージュしてから飲みましょう。

もし熟成したヴィンテージポートを飲んだことがなければ、甘口と馬鹿にせずにぜひ一度試して頂きたいワインです。

トゥニータイプ

トゥニータイプは、長期間の樽熟成によって意図的に酸化熟成させたタイプ。

ドライフルーツやナッツ、コーヒーやカラメルなどの甘くて香ばしい風味や熟成感が楽しめます。

このカテゴリに含まれるのは、トゥニー(Tawny) + 10年、20年、30年、40年のように熟成年数を表記したものと、コルヘイタ(Colheita)。

年数表示はブレンドで造られたポートワインの平均年数を表していますが、コルヘイタは単一年から造られるトゥニーポートで、通常のワインと同じようにヴィンテージを表示しています。

ルビーとは違い、全てワイナリーの樽で熟成され、出荷された段階で飲み頃と判断された状態です。澱は瓶詰め時に取り除かれるのでボトル内にはありません。

ヴィンテージポートを造っていない生産者にとっては、年数表示トゥニーが代表的なキュヴェなこともあり見逃せません。

自宅で何十年も保管する必要がなく、熟成感のあるワインが気軽に楽しめるのが何よりも魅力です。

ポートワインの楽しみ方

ポートワイン

ポートワインは甘口の赤ワインと、珍しいカテゴリのワインです。

そこで、何と合わせれば良いのかわからないという方のために、ポートワインの代表的な楽しみ方をご紹介します。

甘口ワインなんて1本飲めない!という方もご安心ください。ブランデーを添加しているポートワインは、通常のワインに比べて頑丈。

冷蔵庫で保存すれば抜栓後も1ヵ月程度は問題なく、食後や就寝前に少しずつお楽しみいただけます。

ブルーチーズと合わせる

イギリスで鉄板の組み合わせとして知られているのがコチラ。

イギリスを代表するブルーチーズ、スティルトンとポートの組み合わせは一度試す価値があります。

少し熟成したヴィンテージやLBVのように力強さと複雑さのあるポートワインがおすすめです。

スイーツと合わせる

赤果実の香りが感じられる軽めのルビーポートは、チェリーパイなど甘酸っぱさのある果実を使ったスイーツとあわせましょう。お互いに濃厚すぎず、バランスの取れたペアリングです。

葉巻と合わせる

紳士の嗜み方として外せないのが葉巻とポートワインです。

葉巻と言えばダークラムとの相性が知られていますが、ポートワインも葉巻やダークラムと共通するアロマが多く素晴らしい相性です。

ルビーポートよりも、コーヒーやカラメルの香りが顕著に感じられる年数表示トゥニーポートがおすすめです。

代表的生産者

ブドウ畑

ポートワイン産業は、フランスのシャンパーニュ地方と同じように30,000を超えるブドウ栽培農家と、彼らからブドウ(またはワイン)を買ってワインを造る90ほどのシッパーと呼ばれる商社(ネゴシアン)という構造になっています。

特に、ポートワインの味の違いは「ブドウ品種よりシッパー」と言われるほど重要。押さえておきたい代表的な2生産者を紹介します。

テイラー

テイラーは1692年にイギリスのワイン商によって設立された名門中の名門。

設立時から現在に至るまで、創業者一族によって受け継がれている唯一にして最古のポートハウスです。

ポートワインのラフィット・ロートシルト(※ボルドー格付け1級シャトー)と呼ばれており、ポートワイン愛好家から厚い信頼を得ています。

ラモス・ピント

ラモス・ピント社は1880年にアドリアーノ・ラモス・ピント氏の手によって設立。1898年にはポルトガル王室御用達になりました。

「ドウロの教皇」と称された、ジョゼ・ラモス・ピント・ローザス氏によるブドウ品種の選別(後述)など、革新的なワイン造りを取り入れドウロ全体の発展に貢献したワイナリーです。

1990年からはルイ・ロデレールがオーナーとなり、現在は世界最高峰の醸造家ジャン・パティスト・レ・カイヨンが醸造責任者に着任しています。

名実ともに最高のポートワイン生産者の一角です。

もっと詳しくポートワインを知る!

いかがでしたか?ここまででポートワインに少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

ここから先はポートワインをもっと詳しく知りたい!という方のために、歴史や産地、品種の違いをご紹介しています。よろしければお付き合いください。

ポートワインの歴史

帆船

ポートワインは、ポルトガルで造られるワインですが、その成り立ちにはイギリスが密接に関係しています。

ポートワイン最大の消費国イギリスが、どのようにポートワインの歴史に関わっているのかをご説明します。

ポートワインの起源は17世紀末。イギリスとフランスが第2次百年戦争と呼ばれる植民地を巡る争いをはじめたころに遡ります。

当時イギリスは、ボルドーをはじめとしたフランスワインへの強い需要があるにも関わらず、敵国だったフランスのワインの輸入を禁止しました。

そのため、イギリスのワイン商はボルドーに代わるワインを探す必要がありました。

そんな彼らが辿り着いたのが、ポートワインの原型となる色素や渋味の強い「辛口」ワインです。

彼らはこの辛口ワインの品質を保ったままロンドンまで輸送するために、船積み前のワインにブランデーを添加し、安定させることもありました。

元々渋味の強いワインにブランデーを添加したものは、さぞかし強烈な飲み口だったことでしょう。

そんな時、イギリスのワイン商が出会ったのが、ドウロ川沿いのシトー派修道院が造っていたワイン。

シトー派の修道院でも同じように、ブランデーを添加したワインを造っていました。

しかし、イギリス人のワインと異なり、船積み前の完成したワインにではなく、発酵途中のワインに添加していたのです。

これによって、酵母がアルコールで殺菌され発酵が中断し、ブドウ果汁の糖分が残り、渋みやアルコールとバランスの取れた、まろやかなワインに仕上がります。

この手法を知ったイリギスのワイン商は彼らのワインにも応用し、今のポートワインの形となったようです。

その後、ポートワインはイギリスで爆発的な人気を獲得し、ボルドーの格付けより100年も早い1756年に世界初となる原産地統制制度を導入したことで知られています。

このように、ワインの製法や産地の確立まで、イギリスのワイン商たちが深く関わっているのです。ポートワインがイギリスで愛されているのも納得ですね。

 ポートワインの産地

ポルトガル風景

ポートワインの畑は、ポルトガルのドウロ川沿いに約26,000ha拡がっています。

気候は乾燥した大陸性気候で、急斜面かつ排水性に優れたシスト土壌の畑です。そのため、若いブドウ樹は水分不足が問題になることもありますが、根を深く張ったブドウ樹は高品質で凝縮したブドウを実らせます。

下流から上流に向かって、バイショ・コルゴ、シマ・コルゴ、ドウロ・スペリオーレの3つのサブリージョンに分かれており、それぞれ特徴が異なります。

また、ラベルに表示されないのであまり知られていませんが、ポートワインの畑にはカダストロと呼ばれる格付けが存在しています。

カダストロは畑の方位やブドウの平均樹齢など12の基準で採点し、A~Fまでに格付けする独自のシステムです。

なお、ポートワインの産地で通常のスティルワインを造ると「ドウロ」という地理的表示ワインになります。

バイショ・コルゴ

バイショ(低い)・コルゴは、3つの中で最も下流、大西洋側に位置する産地。

大西洋の影響があり、3地域の中では雨が多くマイルドな気候です。この地域のブドウから造られるワインは軽めで、比較的安価なポートワインのブレンドに利用されることが多いそうです。

シマ・コルゴ

シマ(高い)・コルゴは、最も広いポート生産の中心地で古くから名声のあるエリア。

西側のバイショ・コルゴと比較すると、雨量が大幅に減り気温も高いため、凝縮感のあるブドウが収穫できます。そのため、LBVやヴィンテージポートといった高級ポートの原料に使われています。

世界最高峰のポートワインとして知られているキンタ・ド・ノヴァルも、このエリアにあります。

ドウロ・スペリオール

ドウロ・スペリオールは最も東側、ドウロ川上流に位置する地域。歴史がある地域ではなく、新しく開墾されているポート産地の最前線です。

極度に乾燥し、昼夜の気温差が激しい気候と険しい斜面という過酷な栽培条件ですが、高品質なワインを造るポテンシャルを見込まれています。キンタ・ド・ヴェスヴィオがこの地域にある代表的な畑です。

ポートワインに使われるブドウ品種

ブドウ

ポートワインには、主に5種類の品種が使用されていますが、認可されているブドウ品種の数はなんと80種類以上!

他のワイン生産地では考えられない数字ですが、ドウロ川では伝統的に20-30品種を1つの畑で混植栽培していたため、多様性があったのです。

しかし、1970年代には上述したラモス・ピントによって、その中から特に優良であるとされたトゥーリガ・ナショナル、トゥーリガ・フランカ、ティンタ・ロリス、ティンタ・バロッカ、ティント・カンが選抜され、現代ではこの5品種が主要品種になりました。

ホワイトポートには、ゴウベイオ、マルヴァジア、ヴィオシンホといったブドウ品種が使用されています。

トゥーリガ・ナショナル

トゥーリガ・ナショナルは果皮が厚く、酸味もあり、ドウロ川で最も高品質と考えられていますが、果実が小さく収量がやや少ないブドウ品種です。

それ故に、ドウロ・スペリオーレなどの畑には新しく植樹されていますが、ドウロ川全体での栽培面積は約1,440haと大変少なくなっています。

トゥーリガ・フランカ

トゥーリガ・フランカはトゥーリガ・ナショナルの子品種でよく似た特徴を持っています。

トゥーリガ・ナショナルと比較すると収量が多いため、ドウロ川で最も広く栽培されているブドウです。

ティンタ・ロリス

ティンタ・ロリスはスペイン原産のテンプラニーリョの別名です。

ポートのブドウ品種の中ではタンニンが控えめで、ブレンドに使用することでフィネスを与えます。

ティンタ・バロッカ

ティンタ・バロッカは、成熟が早く糖度が上がりやすいブドウ品種で「ドウロ川のメルロ」と呼ばれるほど、メルロとよく似た特徴を持っています。北向きの畑などでも熟すことが出来るので、冷涼な畑で栽培されています。

ドウロ以外では南アフリカでも栽培されており、単一品種のワインも存在します。

ティント・カン

ティント・カンは収量がとても少なく栽培面積も小さい稀少なブドウ品種。

トゥーリガ・ナショナルと比べるとやや女性的なキャラクターで、高品質のポテンシャルがあると言われています。

まとめ

ポルトガルで生まれた酒精強化ワイン「ポートワイン」は、濃厚な甘さと深いコクで、古くから英国を筆頭に世界中の人々に食後酒として愛されています。

たまには甘口のポートワインで1日の疲れを癒してみませんか?