フランスのリゾート地、プロヴァンスで造られるワインの魅力

ロゼワイン

ニースやカンヌなどヨーロッパ屈指のリゾート地を有する南フランスのプロヴァンス地方は、紀元前からワイン造りが行われてきたフランス最古のワイン産地であり、現在はフランス最大のロゼワインの産地として知られています。

しかしながら、プロヴァンス地方で造られるワインは、そのほとんどが世界中から訪れる多くの観光客によって地元で消費されてしまうこともあり、日本でもあまり多くの種類を見かけません。

そこで今回はプロヴァンス地方で造られるワインについて詳しく紹介したいと思います。

生産量の約90%がロゼワイン

ロゼワイン

フランス南東部の地中海沿岸に広がるワイン産地プロヴァンス地方は、生産量の約90%がロゼワインというロゼワインの一大産地です。

プロヴァンスワインの全生産量の95%を占めるコート・ド・プロヴァンス、コトー・デクサン・プロヴァンス、コトー・ヴァロワ・アン・プロヴァンスの3大A.O.C.を統括するプロヴァンスワイン委員会の統計によれば、三つのA.O.C.のロゼワイン生産量はフランス全体のロゼワインの42%に相当し、世界中で消費されるロゼワインの5%を占めるといいます。

ワイン産地としてのプロヴァンス地方は非常に広大なため、造られるロゼワインにも地域による違いはありますが、一般的にフレッシュな辛口で早飲みタイプが主流。

色合いは淡いサーモンピンク色、香りはピンク・グレープフルーツやチェリーなどフルーティーですっきりとしたものが多いのが特徴です。

フランスを代表するリゾート地

プロヴァンス 風景

映画祭で有名なカンヌ、ビーチ沿いに高級ホテルが立ち並ぶニース、フランス最大の港湾都市マルセイユ。南フランスのプロヴァンスと言えばコート・ダジュールの蒼い海と白い砂浜が特徴的です。

1990年代に世界的ベストセラーになったピーター・メイル(※)の著書で、プロヴァンス地方内陸のブドウやオリーブ、ラベンダー畑が広がる美しい風景を知った方も多いかもしれません。

この地方を訪れる多くの観光客は、色鮮やかな野菜や豊富な海の幸で造られる地元の料理とプロヴァンスワインを楽しみます。お昼からカフェやレストランのテラスで賑やかにワインと食事を楽しむ姿はよく紹介されていますね。

中でもロゼワインの消費量は圧倒的です。トマトやニンニクやオリーブオイル、ハーブを多用するプロヴァンスの郷土料理には辛口のロゼワインがよく合うのでしょう。特に暑い夏には、赤ワインと違って冷やして飲めるのも魅力です。そのため、昔からロゼワインの生産が盛んなのです。

ただ、これまでプロヴァンス地方ではフランスのワイン産地の中でも相当数のワインが造られているにもかかわらず、そのほとんどが地元で消費されているため、生産量の割に輸出量は多くはありませんでした。

しかし、2000年以降の世界的なロゼワインブームで、ロゼワインをはじめプロヴァンス産ワインの輸出量は飛躍的に伸びました。

※イギリス出身の作家。ニューヨークの広告会社を経て1980年代にプロヴァンス地方に移住し、そこでの暮らしを描いた『南仏プロヴァンスの12ヶ月』等、一連の著作が大ベストセラーになった。

プロヴァンスってどんなところ?

プロヴァンス 風景

南に地中海を望むプロヴァンス地方は典型的な地中海性気候で夏は暑く乾燥していますが、ミストラルと呼ばれる強く冷たい風がローヌ川を下って吹き抜けていくため、いくぶん暑さが和らげられます。

また、乾燥した気候のため湿気に由来する病害も少なく、プロヴァンス地方の認証済み有機農法の畑は全体の24%。これは、フランスのどのワイン産地よりも高い数字です。

土壌は大きく分けて西部から北部は大陸の侵食によって形成された石灰岩土壌、海に面した東部は結晶化した岩石やシスト(結晶片岩)土壌からなっています。全体的に水捌けが良い痩せた土壌であることも病害が少ない要因の一つです。

プロヴァンス ブドウ畑

そんなプロヴァンス地方は、フランスのワイン産地では最も古い歴史があります。

紀元前600年頃に古代ギリシャ人の一民族であるフォカイア人が今日のマルセイユを植民市とし、ブドウを持ち込んだとされています。その後、紀元前200年頃にはローマ人がプロヴァンスに定住してブドウ栽培が行われ、中世以降は他の産地同様、修道院がワイン造りを担いました。

近代以降は、恵まれた環境故に日常用の安価なワインが大量生産されるようになりますが、それでもバンドールやカシー、パレットなど古くから名の通ったワインも造られてきました。

20世紀の終わり頃からはブドウ栽培に恵まれた環境を活かし、有機農法をはじめ持続可能なブドウ栽培と醸造への取り組みが進んでいます。また、近年は他の産地から新規参入する生産者も増え、素晴らしい品質のワインが生まれています。

また、プロヴァンス地方最大のA.O.C.であるコート・ド・プロヴァンスでは生産者組合がより良いテロワールを反映したワイン造りのため、アペラシオンの細分化を求める活動を行いました。その結果、地理的名称をつけた四つのサブA.O.C.(サント・ヴィクトワール、フレジュ、ラ・ロンド、ピエールフー)が2005年〜2013年に制定されました。

プロヴァンス地方で主に栽培されているブドウ品種は、白ブドウがロール(ヴェルメンティーノ)、ユニ・ブラン、クレレット、ブールブーラン、黒ブドウがシラー、グルナッシュ、サンソー、ティブーラン、ムールヴェードルなど。A.O.C.ごとに細かなブレンド規定があります。

ロゼワインだけじゃない!

ワイングラス

ロゼワインで有名なプロヴァンス地方ですが、もちろん赤ワインも白ワインも生産されています。

2016年度の統計資料によると、プロヴァンス地方4県の総ワイン生産量の8.5%が赤ワイン、4.5%が白ワインとなっています。

長期熟成にも耐えうる高品質な赤ワイン、フランスで最初にA.O.C.を取得したワインなど、ロゼワイン以外にも特筆すべきワインが造られています。

バンドール

地中海沿いの街バンドールを中心に八つの村からなるA.O.C.で、1941年に認定されました。生産量のおよそ7割がロゼワインですが、ムールヴェードルを主体とした力強く、長期熟成も可能な赤ワインが有名です。

丘陵地帯に囲まれたこの地域一帯は、レスタンクと呼ばれるテラス状の段々畑が広がっており、石灰質を多く含む痩せた土壌でブドウが栽培されています。典型的な地中海性気候で夏は暑く乾燥し、南向きの斜面は3000時間にも及ぶ日照時間をもたらします。

そのため、しっかりと熟したブドウからフルボディの赤ワインが、また白ワインやロゼワインも飲みごたえのあるものが造られています。

カシー(カシス)

カシスは1936年、ソーテルヌ、シャトーヌフ・デュ・パプとともにフランスで最初に認定されたA.O.C.で、マルセイユの東に位置する地中海に面したカシスの町のみに認められています。赤、白、ロゼが生産されていますが、この地方では珍しく白ワインの比率が高く、全体の67%を占めています。

バンドール同様に段々畑のレスタンクが広がっており、海からの微風が絶えず吹き、夏の暑さを和らげるとともに、潮風の影響からミネラル感のあるワインが生まれています。

クレレットとマルサンヌ主体で造られるカシスの白ワインはしっかりとしたボディの辛口で、この地方の郷土料理ブイヤベースなど、魚料理と最高の相性をみせます。

まとめ

現在もフランスやアメリカを中心に世界的なロゼワイン人気が続いているようですから、プロヴァンスのロゼワインの需要は今後ますます高まると予想されます。

ここ数年はボルドーの名門からハリウッドのスターまでがプロヴァンスでワイン造りに着手していることからも、この産地への注目の高さが伺えますね。

ニースやカンヌの蒼い空と海、輝く太陽、緑豊かな自然を想像するからでしょうか……。暑い季節になるとよく冷えたプロヴァンスワインがとりわけ美味しく感じます。是非お試し下さい。

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2020