先日、焼鳥『瀬尾』にてイタリアの名門「カステッロ・ディ・アマ」のワインと焼鳥のマリアージュを楽しむスペシャルディナー会を開催しました。

カステッロ・ディ・アマのオーナー兼醸造家のマルコ・パランティ氏からも絶大の信頼を寄せるワインジャーナリスト宮嶋勲氏をお招きし、ワインの解説をしていただきました。

今回は、そんな宮嶋氏からお聞きした貴重なお話とともに、カステッロ・ディ・アマの神髄に迫ります。

今回のディナー会、当初はマルコ・パランティ氏をお招きし開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響により来日は叶わず、マルコ氏とも親交がある宮嶋勲氏を招いての開催となりました。

宮嶋氏は日本一イタリアワインに詳しいとされるワインジャーナリストで、2013年には『グランディ・クリュ・ディタリア最優秀外国人ジャーナリスト賞』を受賞するなど、世界的に活躍されています。

親日家としても知られるマルコ氏は、今回の来日も楽しみにしていたと言います。

「1ヶ月前にイタリアで会った時には『日本がどんな状況でも行くからね！』と言っていたんですが、そうもいかず大変残念がっていました。皆様によろしくと昨日メッセージが来ましたよ」と宮嶋氏。和やかなムードで会はスタートしました。

今回のディナー会で供されたワインは、ロゼワイン1種、赤ワイン4種の全5種類。まず最初に提供されたパープル・ロゼをテイスティングしながら、宮嶋氏はアマにとって欠くことのできない大事な要素について説明しました。

「口に含むと豊かな果実が広がり、飲み終わった後には少し酸があるイチゴの風味が追ってきますよね。そして、唾が沸いてきて何か食べたいと思わせるミネラルを感じませんか？

これらの特徴は標高500mという美しく冷涼な標高地帯、そして石灰土壌で造られるからこそ表れ、アマのワインすべてに共通する特徴です」と宮嶋氏。

こういった土地や土壌の特徴がワインに反映されていることを「テロワールを尊重したワイン」と言い、アマはまさに「テロワールを忠実に表現する生産者」だと言います。

そしてアマのワインに欠かせないもう一つの要素が“サンジョヴェーゼ”。イタリアの代表品種であるこのブドウ品種にこだわってワインを造っています。

ところが、今回提供された5種類の中で一つだけこのサンジョヴェーゼ主体でないワインがありました。それが「ラッパリータ」。

このワインからも、アマの神髄が分かるエピソードを宮嶋氏が明かしてくれました。

実はこのワイン、アマの名を一躍有名にしたワインと言われています。

ボルドー品種であるメルロを植えてみたところ、あまりに出来が良く、売り出してみれば世界中のメルロのワインが集まるブラインド大会で、かの「ペトリュス」より高い評価を受け鮮烈なデビュー。こうもなれば、メルロの生産量を増やそうと考えてしまいませんか？

しかし、それではアマの“アイデンティティ”が失われてしまうと考え、リリースの1985年から現在に至るまで一切メルロの面積は増やさず、サンジョヴェーゼにこだわりを持ち続けています。

テロワールを尊重し、サンジョヴェーゼに誇りを持つ、それがカステッロ・ディ・アマの信条だと宮嶋氏は繰り返しました。

『瀬尾』の焼鳥は、こだわり抜いた厳選した食材、さらには炭においても店主が自ら探し求めた備長炭を使用し、磨き上げられた職人の腕によって焼き上げられます。

そんな上質で繊細な焼鳥とカステッロ・ディ・アマのワインのマリアージュ。アマのワインは“控えめに一歩引いて、料理を引き立てるワイン”だからこそ成立すると言います。

鶏本来の甘みはブドウの果実味と寄り添い、ワインの生き生きとした心地良い酸があることで、鶏の脂をうまく包み込みました。

アマのワインを合わせることで焼鳥はより美味しく、そしてワインもより美味しく感じられる、まさにマリアージュを体感できました。

最後に宮嶋氏はワインの面白さについて語りました。

「ワインはいつも同じではありません。今日飲んで美味しかったワインも別のヴィンテージを飲めば、雰囲気が違うかもしれません。同じヴィンテージでも瓶詰めされた瞬間から別の道を歩んでいるので、全く同じなことはないのです。

これを愛でることができたら、もっとワインを飲むのが楽しくなりますね。」

日本一イタリアワインに詳しいと言われる宮嶋氏でさえ、日々ワインを飲んで驚きや発見があると言います。これこそがワインの楽しみで面白さなのだと。参加者の方も大きく頷いていました。

ワインとの出会いは一期一会。美味しいワインと料理のマリアージュもまさに一期一会と言えます。そんな、特別な出会いを身に染みて感じることができました。