日本ワインの今を知る!

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公開日 : 2019.5.14
更新日 : 2022.5.23
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日本の風景

近年、日本ワインは品質が大幅に向上したことで世界的にも評価されるようになりました。

しかし一方で、「ワインの本場はフランスやイタリア。日本ワインなんてイマイチ……」という思いから、ワインショップで日本ワインに手を伸ばすことにためらいがある人もいるのではないでしょうか。

今回は、そんなネガティブな印象を払拭するためにも、日本ワインの歴史や世界から注目されている理由などについて、ご説明したいと思います!

目次

日本ワインの歴史

ブドウ

まずは、日本ワインのこれまでの歩みを改めておさらいしましょう。

黎明期

明治初期である1874年、僧職の家系に生まれた山田宥教と商人である詫間憲久が山梨県甲府市で本格的なワイン造りに着手します。

明治政府の殖産興業政策(注1)の一貫として、他にも北海道、山形県、茨城県、神奈川県などでワインの試験醸造が始まり、1877年には祝村(現・山梨県甲州市の勝沼)で初めての民間ワイナリーである「大日本山梨葡萄酒会社」が設立されました。

(注1)明治前期に政府によって推進された資本主義育成策のこと。富国強兵を目指し、軍事工業と官営工業を中心に欧米の生産技術や制度を導入して、急速な工業発展を図りました。

1890年には「日本ワインの父」と呼ばれている川上善兵衛が「岩の原葡萄園」(新潟県)を設立。

私財を投げ売って1927年にマスカット・ベーリーAやブラッククイーンなど日本独自の改良品種を開発し、1940年には22品種の優良品種を発表しました。

それ以降、続々と山形県や新潟県、大阪府などにもワイナリーが誕生し、1939年には山梨県のワイナリー数が3694軒にまでのぼりました。

近代

しかし、当時は醸造技術が未熟であったために良質なワインを造ることができなかったことや、当時の日本食との相性が悪かったことから、国内のワインの売れ行きはイマイチでした。

そんな中、ワインの先駆者たちは、日本人向けに人工甘味を添加した葡萄酒を生み出し、これが大ヒットします。

醸造された葡萄酒やブドウ果汁に砂糖や酒精、香料などを添加した日本独自の甘味ワインは多くの日本人を魅了します。「蜂ブドー酒」、「サフラン葡萄酒」、「エビ葡萄酒」などが次々と人気を博し、中でもサントリーの創業者である鳥井信治郎が1907年に生み出した「赤玉ポートワイン」(向獅子印ぶどう酒から改名。現在は赤玉スイートワイン)は一世を風靡しました。

1940年代半ばの太平洋戦争末期には、ソナー(水中聴音機)の資材に用いられる酒石をワインから獲得するために、軍がワイン生産を奨励。

これによりワインの生産量は増加しましたが、全ての産業や労働力が国家の統制下に置かれた「強制統合」によってワイナリー数は減少。戦争の煽りを受けて、戦後のワイン産業は低迷しました。

現代

1960年代から80年代になると高度成長のためにワインの生産量と消費量が増加し始めます。

大阪万博の影響もありワイン消費量が前年比162%となった1973年は「ワイン元年」と言われています。

1980年代には大手ワイナリーを中心に、それまでは栽培が難しいとされていたヴィティス・ヴィニフェラ種(シャルドネ、ピノ・ノワールなどの欧米・中東品種)の本格的な栽培がスタート。この影響により、1990年代初期のバブル崩壊後に本格的ワインが普及するようになります。

1994年にはメルシャン社がフルボトル500円の低価格ワインを販売。

日本人の食事が欧米化したことで、ワインとのペアリングに違和感がなくなったこともありワイン消費量や生産量の拡大に拍車をかけました。

2000年を過ぎると小規模ワイナリーも増え、近年では異業種の企業もがワイン造りに参入するという動きもあります。

2010年代に入るとサッポロビールやシャトー・メルシャン、グレイスワインなど大手メーカーのワインが国際的なコンクールで権威ある賞を次々と受賞し、海外から日本ワインに注目が集まるようになりました。

2018年10月30日からは、日本ワインの高品質化や消費量の増加などの背景を受けて日本のワインを保護し原産地を明確にすることを目的とした、日本初のワイン法が施行されました。

日本ワインが注目されている理由

日本の畑

日本ワインは、多くの研究者や生産者が技術を向上させるために努力したり、海外で得た知識を国内に持ち帰って醸造に取り入れたりしたことによって、品質が向上。

特に近年のヘルシー志向に基づいた世界的な和食ブームを背景に、食事と相性の良い日本ワインにもスポットが当てられるようになりました。

中でも日本固有のブドウ品種甲州は、2009年に山梨県ワイン醸造協同組合によって世界的な認知とともに生産地の確立や市場拡大を狙った「甲州ワインEU輸出プロジェクト」が設立されたことや、2014年にロンドンで行われた「Decanter World Wine Awards」(DWWA)で、グレイスワインが造るグレイス甲州が日本ワインとして初の金賞および地域最高賞を受賞したことで、海外から一気に注目されるようになりました。

大手ワイナリーだけでなく、小規模ワイナリーの中には生産量がごくわずかであるものの海外ジャーナリストから高評価を得ているワインもあります。かつてのカリフォルニアのカルトワインのように愛好家垂涎のアイテムとなっているものもあり、日本ワインの国際化に一役買っています。

さらに、2020年の東京オリンピックを機に、海外の人々に日本ワインを知ってもらおうという意識も高まりつつあります。オリンピック招致を左右する現地調査でも日本ワインが振る舞われ話題になりました。

五輪オフィシャルワインも発表され、ますます日本ワイン界が盛り上がりを見せています。

日本ワインの今

ブドウ

近年、アルバリーニョやプティ・ヴェルドなど、これまで栽培量が多くなかった品種が注目を集めています。

スペイン系白品種のアルバリーニョは日本食との相性が良く、ブドウの耐病性が評価されたことで新潟県や富山県、大分県などで栽培量が増えつつあります。

フランスのボルドー原産であるプティ・ヴェルドは日本の温暖な気候でもほどよく色づいて酸味が残ることから、山梨県よりも南の県で栽培量が増えてきています。

これまでは補助品種としてブレンドされることが多くありましたが、単一品種のワインも評価が上昇しつつあります。

さらに2017年には、フランス・ブルゴーニュのヴォルネイに本拠地があるドメーヌ・ド・モンティーユが北海道でワイン造りを計画していることを発表。

2019年にはビオディナミ農法による畑作りが着実に進んでいることが報告されています。

また、北海道は注目度の高さやワイナリーの急増などを理由に、2018年に山梨に続いて地理的表示のワイン産地として指定されています。

まとめ

昔とは違い、エレガントで上品なワインを生み出すワイン産地として知られつつある日本。

日本各地では頻繁にワイン関連のイベントが行われており、メディアでもたびたびワインが取り上げられるようになりました。ワインショップでは日本ワインのラインナップが増え、消費者の選択肢も増えつつあります。

日本ワインのレベルも高くなりつつある昨今。

「日本のワインはちょっと……」と敬遠されている人も既にファンである人も、ぜひ一度日本ワインを食卓に取り入れて、日本食との素晴らしいペアリングを楽しんでみてくださいね。

<参考>

『2019 ソムリエ協会教本』一般社団法人日本ソムリエ協会

山本博『新・日本のワイン』早川書房

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