アルゼンチンを代表するブドウ品種マルベックとは?

ポリフェノールの含有率が高く、「黒ワイン」とも呼ばれるほど濃い色合いのワインを生むブドウ、マルベック。その濃密な色合いゆえに、マルベックのワインと言えば凝縮感があってアルコール度数も高くパワフル、といったイメージがすっかり定着してしまっているのではないでしょうか?

しかし最近はそのスタイルも少しずつ変化しているようです。そこで今回は改めてマルベックについておさらいしたいと思います。

マルベックとは

マルベックはフランス南西部カオール地区原産の赤ワイン用黒ブドウ品種。ボルドーではコット、南西部のカオールではオーセロワとも呼ばれています。

実が小粒で果皮が厚いため、タンニンが豊富で非常に濃い色合いのワインが生まれます。20世紀半ば頃まではボルドーでも人気の品種でしたが、マルベックはもともと花ぶるい(注1)を起こしやすい上に、腐敗したり、霜やベト病の被害を受けたりするブドウ品種。そのため、1956年にフランスを襲った冷害で大きなダメージを受け、フランスでの栽培量が激減しました。

現在はアルゼンチンで最も多く栽培されています。

(注1)花が咲いても受粉が上手くいかないことで結実ができず花が落ちてしまうこと。

マルベックの主な産地

 主な産地はフランスの南西地方と南米のアルゼンチンです。それぞれについて詳しく紹介致します。

フランス

ボルドーの東から中央山麓にかけて、南はピレネー山脈に至るまでのフランス南西部一帯に点在するワイン産地、南西地方でマルベックが多く栽培されています。フランスでマルベックはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロを主要品種とするワインのブレンド用に使用されることが多いマルベックです。

しかし、ボルドーの東に広がる南西地方のカオールでは、マルベック単一、もしくはマルベック主体のワインが造られています。

カオール一帯はボルドーより雨が少なく、秋には暑く乾燥したオタンと呼ばれる南西風が吹くためブドウがよく熟し、歴史的に「黒ワイン」と呼ばれるほど色合いの濃いワインが産出されてきました。とりわけ、石灰質の土壌では、カオールの中でも最も豊かで熟成能力のあるワインが生まれます。

なお、マルベックはボルドーの赤ワインの原料となる6種のブドウのうちの一つとして定められていますが、現在ボルドーでは補助品種としてわずかな生産量にとどまっています。また、ロワール中流域のトゥーレーヌ地方ではスパークリングワインや赤ワインの原料として広く栽培されていますが、主にカベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨン、ガメイとブレンドされています。

アルゼンチン

世界のマルベックの栽培面積の75%以上を占めるといわれるアルゼンチン。アルゼンチンには、フランスでフィロキセラ(注2)が発生する直前の19世紀半ばにマルベックをはじめカベルネ・ソーヴィニヨンやセミヨンなどのボルドー系高貴品種が持ち込まれました。

アルゼンチンは日照量が豊富で降雨量が少なく乾燥した気候のためブドウの病害も少なく、さらにアンデス山脈の雪解け水を利用した灌漑システムによって非常に良質なブドウが栽培されています。

マルベックの産地として有名なアルゼンチン中央部のクージョ地方は、南アメリカ最大のワイン産地であり、アルゼンチンのワイン生産の大部分がクージョ地方メンドーサ州に集中しています。

メンドーサ州はアンデス山脈の麓の斜面から東側の半砂漠状の荒野まで広がり、典型的な大陸性気候。赤ワインの生産には最適の土地です。中でも標高の高いルハン・デ・クージョは理想的な土壌と気候に恵まれ、マルベックの高品質な赤ワインが生産されています。

(注2)ブドウネアブラムシとよばれるアブラムシの一種。ブドウの根に寄生してブドウの樹を腐らせてしまう、ブドウの樹にとって天敵ともいえる昆虫。

マルベックのワインの特徴

やはり濃厚な色合いが最大の特徴です。若いうちはブラックベリーやプラムといった果実の香りとともに、スミレのような花の香りや、黒コショウ、皮のような香りが強いのも特徴です。

タンニンが豊富ですが、味わいは酸も程よくあってバランスが良く、ボディがしっかりしているわりには口当たりがなめらかなワインに仕上がります。

フランスのカオールは、ひと昔前まではマルベック100%もしくはマルベックにタナやメルロをブレンドして濃厚かつパワフルなワインを造っていました。しかし、最近は味わいの凝縮感はそのままに、よりエレガントなスタイルのワインが造られるようになってきました。

一方でアルゼンチンのマルベックのワインは、芳醇な果実味が感じられます。カオールに比べるとタンニンがまろやかで若いうちから楽しめるので、初めてマルベックのワインを飲んでみるという方は、まずアルゼンチン産を試してみると良いでしょう。

マルベックのワインと料理の相性

マルベックのワインはシンプルに料理した牛肉、特に赤身肉とよく合います。とりわけ、塩と胡椒のみで味付けしたステーキとアルゼンチン産マルベックのワインとの相性は抜群です。

それもそのはず、アルゼンチンの名物料理で、大きな塊の牛肉に岩塩をすり込んで炭火でじっくりと焼き上げる豪快な肉料理「アサード」は、マルベックのワインと最高のマリアージュと言われています。やはり郷土料理にはその土地で造られたワインと合わせるのが一番なのです。

アルゼンチンのワインに比べてより野性味のあるフランスのカオールのワインには、レバニラやタンシチューなど、少しクセのある肉料理がオススメです。

おすすめのマルベックのワイン

最後に、ぜひ一度お試しいただきたいマルベックのワインをご紹介します。

こちらは、クリスタル・ガラスで有名なスワロフスキー社が所有する老舗ワイナリー渾身の一本。

早くから楽しめ、力強くもエレガントなスタイル。たっぷりとした果実味がフルボディ好きにはたまりません。

バーベキューやステーキのお供に是非飲んでいただきたいワインです。

まとめ

濃厚な色合いから過度な凝縮感やパワフルさをイメージするため「飲み疲れてしまうのでは?」と思い込んでいたマルベックのワインですが、今回久しぶりにアルゼンチン産マルベックのワインをテイスティングしてみたら、予想を大きく裏切るほどのエレガントな味わいに大変驚きました。近年のアルゼンチンにおける栽培や醸造技術の発達を体感しました。

これからの季節、屋外でのバーベキューにマルベックのワインはいかがでしょうか?手頃な価格のものもたくさんありますので、是非お試しください。

参考文献 :日本ソムリエ協会 教本 2018