ワインの世界では、よく「グラン・クリュ」という言葉が使用されます。
「グラン・クリュ」といえば、”最高峰のワイン”と思われるかもしれませんが、実は、地域によって使われ方が変わります。今回は、この「グラン・クリュ」について解説していきます。
目次
グラン・クリュは地域によって意味合いが変わる
「グラン・クリュ」は、フランスワインで多く使われている言葉であり、ボルドーやブルゴーニュ、アルザス、シャンパーニュなどが有名です。
冒頭でお伝えした通り、“最高峰の…”というイメージがある、この言葉。当たらずといえども遠からず、なのですが、実は地域によってその意味合いが変わってくるので注意が必要です。
では、地域によってどのような意味で使われているのか見ていきましょう。
ボルドーとその他の産地の違い
まず、グラン・クリュの違いを確認するために、「クリュ」という概念について考えてみます。
ブルゴーニュやアルザス、シャンパーニュの場合、「クリュ」は特定のワインを生み出す畑、またはそこで収穫されたブドウから造られたワインを意味するなど、畑や区画などが対象です。
一方、ボルドーの場合の「クリュ」は、サン・テミリオン(A.O.C.サンテミリオン・グラン・クリュがある)を除き、特定のA.O.C.と結びつくものではなく、メドックの格付など、シャトー(ワイン醸造所)が対象となります。
このように、クリュの概念の違いを理解しておくことで、「グラン・クリュ」の違いについても理解しやすくなるはずです。
ブルゴーニュ地方
ブルゴーニュ地方におけるグラン・クリュは、原産地呼称と結びついているところが特徴的です。
ブルゴーニュ地方のグラン・クリュは、「特級畑」のことで、ロマネ・コンティやモンラッシェ、エシェゾーなどがそれに当たります。
シャブリ・グラン・クリュやコルトンでは「特級畑」という意味合いで使われない場合もありますが、クリマなど、産地が関係している部分は共通しています。
ブルゴーニュ地方のA.O.C.は、「グラン・クリュ」をA.O.C.の頂点とし、その下に「プルミエ・クリュ」と続き、畑名、村名などと続く、ピラミッド型が基本となっています。
つまり、ブルゴーニュ地方でいうグラン・クリュは、最高峰の畑(一部クリマ)で造られたワイン、と捉えることができるのではないでしょうか。
アルザス地方
アルザス地方にもグラン・クリュが存在しています。
現在、アルザスには51のリュー・ディと呼ばれる小地区があり、そこで収穫されたブドウから造られるワインが、「アルザス・グラン・クリュ」として認められています。
広域のA.O.C.アルザスよりも規定が厳しく、ブドウ品種はリースリング、ピノ・グリ、ミュスカ、ゲヴュルツトラミネールの4品種(例外は除く)の使用しか認められていません。
また、アルザスの場合はグラン・クリュに限りませんが、単一ブドウ品種で造られた場合、ブドウ品種が表記されます。
ブドウ品種がラベルに記載されているグラン・クリュ、といった意味では珍しい存在かもしれません。
シャンパーニュ地方
シャンパーニュ地方では、原料となるブドウを生産する村(コミューン)ごとに格付けがなされており、村単位で「グラン・クリュ」、「プルミエ・クリュ」を名乗ります。
シャンパーニュの場合、ブドウの取引価格によって区分されており、「グラン・クリュ」は100%に査定された村で造られたブドウを100%使用したワイン。「プルミエ・クリュ」は、90〜99%に査定された査定された村で造られたブドウを100%使用したワインを意味します。
例えば、シャンパーニュのグラン・クリュ村には、アンボネやトゥール=シュール=マルヌ、アヴィズなどがあり、これらの村で造られたブドウをA.O.C.の規定に沿って使用すれば、どの生産者であっても、「グラン・クリュ」を名乗ることが可能です。
また、単一の村、複数の村で収穫されたブドウであっても、グラン・クリュ村のものであれば、そのワインは「グラン・クリュ」を名乗れます。
少々複雑ですが、シャンパーニュ地方の場合、グラン・クリュは村単位である、ということを覚えておくと良いでしょう。
ボルドー地方
ボルドー地方は、前述してきた産地とは違い、「シャトー(ワイン醸造所)」を対象として「グラン・クリュ」が使用されています。
1855年、ナポレオン3世の要請により制定されたメドックとソーテルヌのグラン・クリュ格付けに選ばれたシャトーや、1953年に制定された後、1959年に改定されたグラーブのグラン・クリュ格付けに選ばれたシャトー、1954年に制定されたサン・テミリオンの格付けに選ばれたシャトーなどが、それに当たります。
例えば、メドックの格付け(Grands Cru Classes du Medoc)に選ばれているシャトーの場合、1級(PREMIERS Grands CRUS)を頂点に、2級(DEUXIÈMES Grands CRUS )、3級(TROISIÈMES Grands CRUS )、4級(QUATRIÈMES Grands CRUS)、5級(CINQUIÈMES Grands CRUS )と続きます。
ブルゴーニュ地方などの場合、グラン・クリュの下にプルミエ・クリュがありましたが、メドックの格付けを見ていただければ分かるように、「メドック地区のグラン・クリュに選ばれたシャトーの中の、1級(プルミエ・グラン・クリュ)」ということで、意味合いが全く違うものになるのです。
メドックの格付けでは全61シャトーが選ばれていますが、1級から5級までのシャトーのどれか、というわけではなく全てを「グラン・クリュ」と呼ぶことができるわけです。
手に取りやすい「グラン・クリュ」
ここまで、さまざまな産地における「グラン・クリュ」を見てきました。それぞれ、使われている意味合いは違いましたが、「優れた、高品質なワイン」という意味では共通しているようです。
しかし、ボルドーのメドック格付け1級シャトーやロマネ・コンティなどの超有名グラン・クリュのワインは高額であり、“手に取りやすい”というワインではありません。
となると、グラン・クリュと称されるワインは、なかなか手が届かない存在なのでしょうか。
前述しているように、グラン・クリュにもいろいろとあり、手に取りやすいものも多くあります。ここからは、おすすめのグラン・クリュを数本、ご紹介するのでぜひチェックしてみてください。
ボンヌ・マール グラン・クリュ
1850年に設立された、ジュヴレ・シャンベルタン村にて5代に渡ってワイン造りを続ける、家族経営のドメーヌの「ボンヌ・マール グラン・クリュ」。
ジュヴレ・シャンベルタン村のグラン・クリュを中心に、計6つのグラン・クリュを所有する名門ドメーヌです。
ドルーアン・ラローズが所有するグラン・クリュのボンヌ・マールは、モレ・サン・ドニとシャンボール・ミュジニーにまたがる特級畑であり、条件の良い斜面上部に位置しています。
ワインは、芯がしっかりとした力強さを感じますが、タンニンは繊細で酸味もソフト。ブドウ本来の良さを生かした、エレガントなワインを造る生産者として名高く、グラン・クリュでありながら、手に取りやすい価格も人気となっています。
リースリング・グラン・クリュ・ガイスベルグ
フランスのミシュラン3つ星レストラン全てで採用されている、名門ワイナリー「トリンバック」。「リースリング・グラン・クリュ・ガイスベルグ」は、 アルザスワインTOP100の頂点に輝いたワインとして有名です。
1626年に創業したトリンバックは、4世紀13代に渡ってアルザスでワインを造り続けている名門ワイナリー。
アルザスの伝統的な辛口スタイルを目指しており、植え付けから収穫、醸造からボトリングまで、一貫して家族で厳しい管理を行う、徹底したワインへのこだわりが魅力的です。
トリンバックについては、「世界で最も偉大で、最も優雅なリースリングを提供している」と、ロバート・パーカー氏が絶賛し話題に。
「リースリング・グラン・クリュ・ガイスベルグ」も、アルザス最高品質のグラン・クリュでありながら、手に取りやすい1本となっています。
シャトー・ダルマイヤック
メドック格付け、5級の名門シャトー「シャトー・ダルマイヤック」。かの有名なムートン・ロスチャイルドが所有するシャトーで、「バロン・フィリップ社の三男」と呼ばれている、力強さが特徴のワインです。
カベルネ・ソーヴィニヨン メルロ カベルネ・フラン プティ・ヴェルドが完璧なバランスでブレンドされており、複雑性と奥行きのある芳醇な味わいに仕上げられています。
木樽が使い分けられており、オークの香りが強すぎないよう、エレガントさも大切に熟成されています。
ボルドーのグラン・クリュの中でも、手に取りやすく、品質の高い1本ですのでぜひお試しください。
グラン・クリュを知ってワインの奥深さを知ろう
ここでは、グラン・クリュについて解説してきました。ひと言でグラン・クリュと言っても、産地によってさまざまな違いがあることがお分かりいただけたと思います。
知っているようで、調べてみると知らなかったことが多く飛び出してくるのが、ワインの醍醐味のひとつでもあります。
グラン・クリュを知った後は、その産地やワインについての歴史なども深く調べてみましょう。きっと、今以上にワインの楽しみが、広がっていくはずです。