ワイン大国フランスで最大の栽培面積を誇るブドウ品種、メルロ

黒ブドウ

フランスの銘醸地ボルドーが原産のメルロは、フランスで最大の栽培面積を誇るブドウ品種です。

そして日本でも近年、非常に高品質なメルロのワインが生産されるようになりました。今回は日本人の嗜好にもよく合うと言われているメルロについて、詳しく紹介します。

メルロの特徴

黒ブドウ

メルロは赤ワイン用の黒ブドウで、世界中で生産されている国際品種です。ボルドーブレンドと呼ばれる、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体とするワインのブレンド用に多く栽培されていると同時に、メルロ単体でも素晴らしいワインが造られています。

果皮が薄く果粒が大きいブドウなので、一般的にはタンニンが少なく、ふくよかで若いうちから飲みやすいワインになります。また、生育においてはカベルネ・ソーヴィニヨンより冷たい土壌を好み、早熟で多産です。涼しい気候のもとでカベルネ・ソーヴィニヨンより成熟させるのが容易な上に収量も多いので、主要な産地であるフランスやイタリアでは、メルロの栽培面積がカベルネ・ソーヴィニヨンを大きく上回っています。

メルロの主な産地

ボルドー(フランス)

ボルドーの赤ワインは基本的にカベルネ・ソーヴィニヨンにカベルネ・フランやメルロといったブドウを複数ブレンドして造られますが、ボルドーでもカベルネ・ソーヴィニヨンよりメルロの方が多く栽培されています。

メルロが多く栽培されている理由は、ブレンドするためであることはもちろん、メルロの収穫期が晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンより1週間ほど早いので、気候によるリスクを回避するためでもあるのです。

一方で、メルロはドルドーニュ川右岸のサンテミリオンやポムロールの湿った温度の低い土壌に良く順応するため、この地域ではカベルネ・ソーヴィニヨンではなくメルロ主体でワインが造られています。『シャトー・ペトリュス』や『シャトー・ル・パン』といった世界最高峰のメルロのワインはポムロールで生産されています。

北イタリア、ボルゲリ(イタリア)

イタリア

土着品種でワイン造りを行うことが主流のイタリア国内において、最も多く栽培されている国際品種がメルロです。メルロは北イタリアを中心に各地で生産されていますが、そのほとんどがカジュアルなテーブルワインとして生産されています。

しかし、スーパータスカンと呼ばれる国際品種を使ったワインで一躍有名になった産地ボルゲリでは、メルロ主体の高品質なワインが造られています。テヌータ・デル・オルネライアが造る『マッセート』は世界的にも大変評価の高いメルロ100%で造られるワインです。

長野県(日本)

 日本のブドウ畑

日本で最も成功している国際品種がメルロです。高温多湿な日本の気候では、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールの栽培は難しいのですが、メルロは湿度の高い土壌に順応することから多く栽培されています。

特に長野県の塩尻市周辺は内陸性気候で昼間と夜の寒暖差が大きいため果実の色付きもよく、質の高いメルロが栽培されています。中でも「桔梗ヶ原」のメルロから造られるワインは、国際コンクールでも入賞し、世界からも大変注目されています。

その他、南仏のラングドック・ルーション地方や、アメリカのワシントン州、チリでも多く栽培されています。

メルロのワインの特長

 赤ワイングラス

カベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドされるメルロのワインは、カベルネ・ソーヴィニヨン単体で造られたワインよりもソフトでタンニンが少なく、酸味もより穏やかになります。個性の強いカベルネ・ソーヴィニヨンとの相性がとても良いので、ブレンドすることで全体的にバランスのとれたワインとなるのです。

また、メルロから造られるワインはタンニンが少なく、口当たりがよいので、赤ワイン初心者には大変おすすめです。カジュアルなレンジでも、ふくよかな果実味のおかげで程よくボリューム感のあるワインに仕上がり、飲みごたえがあるので、世界中で人気があるのも納得です。

ワインの色合いは黒みがかった濃い紫色で、カシスやプルーン、コーヒーやチョコレートのような香りが特徴です。カベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランにみられるハーブやピーマンのような植物系フレーバーや、スパイシーさは少なく、甘みのある凝縮した果実味がしっかりと感じられます。

メルロのワインの質を大きく左右するポイントは、触感です。質の高いメルロのワインは、長期熟成に耐えうるだけの十分なタンニンや酸を持っているのですが、ふくよかな甘みがそれらを覆っているので、飲み込んだ時にザラザラとした土っぽさはなく、緻密で滑らかに感じられます。このような触感は、「ビロードのような」とか「シルクのようななめらかさ」と表現されています。

メルロのワインと料理の相性

 ワインと料理

タンニンと酸が控えめなので、やさしい味付けの和食と合わせることができます。これが、メルロのワインが日本人の嗜好に合うと言われる一番の理由です。

ボルドーのサンテミリオンやポムロールのメルロ主体のワインは、洗練された上品な味わいなので、塩・コショウだけで味付けした赤身肉のステーキ、すき焼きやしゃぶしゃぶなど、素材の味を生かしたシンンプルな肉料理と合わせると良いでしょう。

一方で、同じメルロのワインでも、カリフォルニア産やチリ産は、パワフルでボルドー産に比べてタンニンが多いので、タレに漬け込んだ肉のバーベキューや濃厚な煮込み料理にも合わせられます。

北イタリアや南フランスのカジュアルなメルロのワインは、普段の家庭料理と合わせて気軽に飲んでいただきたいと思います。ミートソースのパスタや、甘めのソースをつけて食べる豚カツとは好相性なので是非お試し下さい。

まとめ

一見、メルロはカベルネ・ソーヴィニヨンの引き立て役として地味なブドウ品種と思われがちですが、メルロが存在しなければボルドーワインの名声はここまで高くはならなかったでしょう。メルロはブレンドされる相方のブドウの個性や長所を引き出しつつ短所を補い、時に自ら持つポテンシャルを驚くほど発揮する、なんとも包容力のある優れたブドウ品種なのです。

 

※参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2018      ・ワイン 味わいのコツ /  田崎真也 (柴田書店)

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