イタリアで最も新しい州、モリーゼで造られるワインの魅力

モリーゼ 風景

イタリア中部のアブルッツォ州から分離して生まれたモリーゼ州は、誕生して50年余り。イタリアで最も新しい州です。

アペニン山脈とアドリア海の豊かで力強い自然の恵みにあふれた州ですが、内陸部は過去1000年の間に4回も大地震に見舞われ、世界大戦中は爆撃も受けるなど苦難の歴史を持ちます。

今回は、まだその魅力があまり知られていないモリーゼ州で造られているワインを紹介したいと思います。

モリーゼ州ってどんなところ?

モリーゼ 地図

イタリア半島をブーツに例えると足首あたりに位置するモリーゼ州は、1963年にアブルッツォ州から分割してつくられた州で、1970年から実際に自治体として発足しました。

北はアブルッツォ州、西はラツィオ州、南はカンパーニア州とプーリア州に接しており、東にはアドリア海が広がっています。

面積はヴァッレ・ダオスタ州に次いでイタリア2番目に小さな州です。州の西側をアペニン山脈が覆っているため、60%が山岳地帯、40%が丘陵地となっており、平地はほとんどありません。

人口も32万人弱とヴァッレ・ダオスタ州に次いでイタリアで2番目に少なく、経済はあまり発展していません。その分、美しい自然が残っており、穀物やブドウ、オリーブの栽培による農業や零細手工業が州の中心産業となっています。

また、畜産業も盛んで、古くから続く羊の放牧移動は現在も行われており、羊や牛のミルクから多種多様なチーズが造られています。

気候は夏と冬、昼と夜の寒暖差の激しい亜大陸性気候で、州都カンポバッソのある内陸部の冬は極寒で雪も降ります。一方、アドリア海沿岸部は温暖で降雨の少ない海洋性気候となっています。

ブドウ畑は主に標高の高い丘陵地帯に広がっています。石灰粘土質の土壌が中心で、昼夜の寒暖差が大きいため、凝縮したブドウができます。

丘陵地帯の畑は日照量も十分ありブドウ栽培には適したテロワールですが、そもそも山岳地帯が多いためブドウ栽培面積、ワイン生産量ともに多くはありません。

ワイン造りは古代から行われてきましたが、地元消費が中心でした。近隣州へ原料ワインとして供給されることも多かったため、モリーゼ州のワインは未だにイタリア国内においても知名度が低いと言わざるを得ません。

しかし、近年は栽培醸造技術も向上し、モリーゼ州固有の品種によるワイン造りが活発化してきました。

モリーゼ州で造られるワイン

赤ワイン

モリーゼ州では山岳地帯も含めて州のほぼ全域でワインが造られています。隣接するアブルッツォ州やカンパーニア州同様、モンテプルチアーノやアリアニコ、トレッビアーノが多く栽培されており、生産量の約7割が赤ワインです。

ここでは覚えておきたい2種のワインを紹介します。

ティンティリア・デル・モリーゼ

一時は絶滅の危機に瀕したこともあるモリーゼ州の土着品種ティンティリアから造られる凝縮感のある赤ワイン。2011年にD.O.C.に昇格しました。

原料ブドウのティンティリアは、モリーゼ州でのみ栽培されている黒ブドウで、18世記半ばにスペインから持ち込まれたとされています。

ティンティリアという名前の由来はスペイン語で赤を意味するティント(tinto)からきており、このブドウから造られるワインが深い赤色をしていることが由来します。

ティンティリアから造られるワインは野性味が強く、果実味がしっかりしていて色合いも濃いため、昔はブレンド用ワインとして重宝されていました。しかし、第二次世界大戦後、質より量を優先したワイン造りが行われていた時代、収穫量が少ないティンティリアは見捨てられました。

1990年代になり、イタリア全土で土着品種によるワイン造りが見直されるようになると、モリーゼ州の生産者もティンティリアに興味を持ち始め、再び栽培されるようになったのです。

ティンティリアの栽培面積はまだまだ少ないものの、ここ数年でモリーゼ州を代表するワインに成長しています。

ビフェルノ

アブルッツォ州と隣接する州の北東部から内陸の州都カンポバッソ周辺、さらにアドリア海沿岸に広がる丘陵地帯の広域で造られているワインで、赤・白・ロゼがあり、モリーゼ州では最初の、1983年にD.O.C.に昇格しました。

産地の土壌は石灰質や粘土質が多く温暖な気候に恵まれた肥沃な土地で、標高の比較的高いカンポバッソ周辺は寒暖差も大きく良質なブドウが栽培されています。

赤とロゼはモンテプルチアーノ主体でアリアニコも使用可能、果実味のしっかりした凝縮感のあるワインとなります。白はトレッビアーノ・トスカーノから造られ、まろやかな辛口ワインとなります。

いすれも早飲みタイプで、コストパフォーマンスの高さが魅力です。

モリーゼワインのトピックス

モリーゼ ブドウ畑

モリーゼ州のワインが注目されるようになったのは、今やモリーゼ州を代表する生産者となったディ・マーヨ・ノランテの功績が大きいと言われています。

ディ・マーヨ・ノランテは州都カンポバッソで1800年代以来ブドウ栽培に従事してきましたが、フィロキセラの害により一時ワイン造りから離れていました。その後、1960年に再びカンポバッソ県のラミテッロ地区でブドウ栽培をスタート。

造り出すワインはリーズナブルながらも素晴らしい味わいで、イタリアワインの評価本「ガンベロ・ロッソ」では、毎年のように最高評価のトレ・ビッキエーリを獲得。モリーゼ州で唯一10回以上最高評価を獲得している生産者です。

まとめ

モリーゼ州はもともとアブルッツォ州の一部であったため、栽培されているブドウも造られているワインも、さらには唐辛子を多用する郷土料理なども含めて似通うところが多いのですが、近年、モリーゼ州の生産者はモリーゼ独特の個性を持ったワイン造りに挑戦しています。

手付かずの恵まれた自然の中、オーガニックでブドウを育てたり、高地の冷涼な気候の元でこれまでとは異なるスタイルのワイン造りに挑戦したり、土着品種ティンティリアのワイン生産量が増加していることからもモリーゼワインの新しい動きが見て取れます。

モリーゼ州は今後が非常に期待されるワイン産地なのです。

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2020