エノテカのワインバイヤーが、ワイン界で活躍する人々をインタビューしてとことん語り合う企画「ワインバイヤーズトーク」。プロフェッショナルならではの視点で、料理とのマリアージュや最新のワイントレンドに切り込んでいきます。 第8回目となる今回は、銀座のフレンチ、レカンが舞台。大切な記念日、高級フレンチを予約したものの、分厚いワインリストを前に尻込み・・そこでついつい知っている銘柄で済ませてしまう方、迷いに迷ってあまり好みではないワインを注文してしまった、なんて方は多いのではないでしょうか。
本日は、数多の名ソムリエを輩出してきた創業40年以上を超えるフレンチの名門、銀座レカンでシェフソムリエを務める宇佐美晋也さんに、自分好みのワインに出会えるコツを聞いてみました。

バイヤー：
本日はどうぞよろしくお願いします。レカンさんは今年の6月にリニューアルオープンされたばかりで、本日は改装後初めて伺いました。40年の歴史が詰まった品格はそのままに、シャンパーニュゴールドの洗練された内装が本当に素敵ですね！

宇佐美さん：
ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。

バイヤー：
レカンさんと言えば、代々名ソムリエを輩出してきた日本のフレンチ界の名門中の名門。国内随一のワインコレクションも名物ですよね。今はやりのグラスワインのペアリングもレカンさんがそのはしりで、これはこれで楽しいのですが、ここでボトルワインを頼まないのはもったいない！

宇佐美さん：
おかげさまで、銀座レカンには1974年の創業以来、歴代のソムリエが集めてきた約1万5,000本におよぶワインのコレクションがあり、当店の魅力は何と言ってもそこにあります。

バイヤー： すごい本数ですね！例えばこのクリュッグ、最新のヴィンテージじゃないですね?

宇佐美さん： それは先々代のシェフソムリエ、五味さんが仕入れた昔のヴィンテージですよ。そういった秘蔵のワインを大切に寝かせておいて、お客様に提供しています。

バイヤー： 熟成シャンパーニュに出会えるなんてすばらしいですね。他にも市場に出回っていないようなボルドー、ブルゴーニュ、ローヌのすごい銘柄の熟成ボトルが色々・・・。ここはぜひ、普段出会えない最高の銘柄に出会うコツを教えていただきたいです！

バイヤー：
席に着くと食前酒について尋ねられますが、やっぱりシャンパーニュを注文される人が多いのでしょうか?

宇佐美さん：
はい、9割方の方がシャンパーニュを注文されますね。こちらはウェイティングルームでも、テーブルでもどちらで召し上がっていただいてもかまいません。シャンパーニュのよさは、脚の高いグラスに入って泡が立ち上るシャンパーニュがあるとテーブルが華やかになること、これからの食事への期待を高めてくれることにありますね。

バイヤー：
ではシャンパーニュをいただきながらじっくりワインを選ぶことにしましょう。

バイヤー：
いよいよワインリストがやってきました。おお！さすがレカンさん。 これはかなり威圧感のある大きさですね(笑)。重さも3キロはありそうです。これだけで確かに尻込みしてしまうかも・・・。どれどれ・・　おお！こんなオールドヴィンテージが・・・！と、ついつい私のようなワインラヴァーはついついリストに夢中になって、時間が経つのも忘れてしまうことがあるんですがそれはやっぱりまずいですよね、

宇佐美さん：
苦笑　お客様にワインリストをお渡しした後、ソムリエは、お客様が「ワイン選びに迷っていらっしゃるのか」「ただリストを眺めているだけなのか」様々な可能性を考えながらテーブルに伺うタイミングを推し量っています。スマートな方は、飲むワインは一応注文して「ちょっと見てていいですか。」と言ってくださいます。料理の準備も進めているので、そうしていただくとありがたいですし、会話も進みますね。 それと、お連れ様がいらっしゃるときは、あまりワインリストに夢中になられるのは・・

バイヤー：
確かに・・・。ついワインに夢中になってしまって、一緒に来ている人への気遣いがおざなりになる、ワインラヴァーにはありがちな失態ですね。

バイヤー：
ワインリストを端から端まで本のように眺める私のような変人はさておき、この分厚いリストから好みのワインを見つけ出せる方はなかなかいないと思います。具体的にはどうやってソムリエに相談すればいいでしょうか?　「おすすめをお願いします。」ではだめですか?

宇佐美さん：
まずは少しでもいいので、味わいの特徴を言っていただけると助かります。「しっかりした赤」だけでも大丈夫ですよ。産地の「ブルゴーニュで」とだけまずリクエストされる方もいらっしゃいますし、ブドウ品種を指定される方もいらっしゃいます。それと、予算はやはりソムリエが一番知りたい情報ですね。

バイヤー：
例えば今日のワイン代のバジェットは25,000円って時に、どのタイミングで言えばいいんですか?　同席している人に知られないようにしたいのですが・・

宇佐美さん：
そういった場合私は「アルザスとかロワールとかいいですね、リースリングだったら～がよいですよ。」とワインの説明をしつつ、リストを指しながら値段をいくつか提示します。 予算を伝えず「何かおすすめありませんか?」とおっしゃる方には「松・竹・梅」のように3種類くらいの価格帯を提示します。そこからお客様に選んでいただきます。
それと、お客様の目線を結構見ていますね。例えばブルゴーニュのグラン・クリュのページばかりを見ていらっしゃると思ったら、その辺のワインをおすすめすることもありますよ。どのページのどの部分にどういったワインがあるかは頭に入っているので・・・。

バイヤー：
なるほど！予算を伝えるのはそんなに難しくなさそうですね。ただ注文する気はなくともグラン・クリュのページばかり見ていたら、ソムリエにおすすめされてしまう恐れがありますね！気を付けないと(笑)

バイヤー：
さんざん迷って、なかなか1本が決まらない時があるんですが、最初から最後までシャンパーニュ1本で通すのはありですか?

宇佐美さん：
当店でもシャンパーニュ1本で通される方は多いですよ。1本で通しつつ、メインのお肉はグラスワインで赤を頼まれるというのもいいですね。またそういったお客様には、グラスを変えて提供することもあります。最初はフルートで、次はワイングラスで行きましょうかという風に。グラスが変わると、立ち上がる香りや味わいも変わりますしね。

バイヤー：
グラスを変えるという趣向はいいですね～。一流レストランならではのホスピタリティを味わっているという感じがします。
ちなみに、秘蔵のワインを出していただくためにソムリエと仲良くなるしかないと思っているのですが、どうすればよいですか?

宇佐美さん：
難しい質問ですね・・。ただ謙虚な方はとても好印象です。知らないことは知らないと言って頂いた方がよいですね。

バイヤー：
こんな素敵なレストランに行くとついつい見栄を張ってしまうんですけどね。謙虚な見栄の張り方ってありますかね?・・いや、ないですね(笑)。ソムリエと相談しながら究極に好みのワインを見つけるには謙虚な姿勢が一番ですね。今度レカンさんに来るときは、初心に戻って謙虚な気持ちで色々相談させていただきます。宇佐美さん、本日は本当にありがとうございました！

 

宇佐美 晋也(うさみ　しんや)
「銀座レカン」シェフソムリエ

2002年「ブラッスリーレカン」に入社、06年「銀座レカン」に異動、

以後レカンの歴代ソムリエや銀座のお客様に育てていただきワインの研鑽を積み現在に至る。

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