暑くてほとんど雨が降らなかったヴィンテージが3年(2021、2022、2023)続いたランゲ地方。
平均して年間600mmほどの降雨量のこの地で、2024年はその倍近い雨が降りました。長く続いた乾きのあと、畑は深呼吸をするように、鮮やかな緑を取り戻しました。久しぶりに“ランゲらしい年”が帰ってきたのです。
雨とともに生まれた柔らかなバランス
2024年はブドウの生育はのびやかで、樹勢も力強い一年でした。一方で雨が多いぶん、畑の仕事は増えました。
グリーンハーベスト、摘房、除葉、そして素早いベト病対策――どれもタイミングがすべてです。一瞬の遅れが収穫全体に影響するほど、繊細なシーズンでした。
2021~2023年のような乾燥した年と比べると、2024年は冷涼で湿度が高く、畑ごとの個性がよりくっきりと現れました。水分を十分に得たブドウは粒が大きく、果皮が厚く、酸も保たれ、その代わり、果汁の濃縮はやや穏やか。けれど、それがかえって上品で繊細なバランスをもたらしたといいます。
発酵は順調で、アルコール度数は13〜14.5度。力強さよりも、香りの精妙さと酸の調和が印象的です。タンニンはやわらかく成熟しており、近年の暑いヴィンテージに見られる青さは一切ないそうです。
自然に試されがらの栽培、収穫
冬の始まりは穏やかで、2月までの気温は例年より高く、雨は少なめでした。ところが3月になると状況が一変。190mmもの雨が降り、ブドウは一気に萌芽。例年より2週間早い春の始まりでした。
4月から6月にかけては、晴天と雨天が交互に訪れる不安定な天候。5月までの累積雨量はすでに年間平均(約750mm)に達し、畑の仕事は常に天気と競争でした。それでも開花は整い、6月10日にはネッビオーロも花をつけ、自然のリズムを乱さない見事な展開を見せました。
7月は最も雨が少なかった月ですが、それでも70mmの雨が降り、何回も嵐がありました。摘房は7月20日から始まり、8月にも再度実施。粒の大きさを整え、果実味の密度を保つための慎重な作業が続きました。幸い、夏の嵐は穏やかで、ブドウは健全に成熟を続けました。
白ブドウの収穫は9月6日から始まりました。9月中旬には雨が頻発し、収穫時期の見極めが極めて難しかったものの、現場のチームはすでに準備万端。熟した房を逃さず、迅速に摘み取りました。
9月末、次はいよいよネッビオーロの収穫が始まります。10月初め、昼は20度、夜は14〜16度と温暖な日が続き、雨を避けながら3回に分けて一気に収穫を完了。ブドウは厚い果皮で守られ、最後まで健全さを保ちました。
発酵は慎重に、ルモンタージュを最小限に抑え、果皮を優しく扱うことでワインの繊細な質感を守りました。熟成も同じく、静かに、ゆっくりと進められます。
まとめ
2024年のランゲは、力強さではなく、静かな生命力に満ちた年でした。過剰な日照の年には得られない、やわらかな酸と香りの奥行き。雨の試練をくぐり抜けたブドウだけが持つ、繊細で深いニュアンスが感じられる――そんなヴィンテージになりそうです。