「44年の経験の中で、これほど難しい年はなかった」
そう語るのは、「カ・マルカンダ」で27年間ブドウ栽培を担ってきたマウロ氏です。2024年のボルゲリは例年の倍以上、実に1,300mmもの雨に見舞われました。7月、8月以外の生育時期はほとんど雨が降っていたといいます。
そんな中で仕上がったワインにはどんな特長があるのでしょうか――見ていきましょう。
絶え間ない雨がもたらした、複雑で豊かな個性
ブドウ栽培において、雨は時に敵であり、時に恵みでもあります。2024年のボルゲリでは、強い樹勢と深い根が、過剰な水分にも耐え、健全なバランスを保ちました。
雨が多かった春は、葉が長く濡れた状態となり、ベト病のリスクが高まりましたが、「カ・マルカンダ」が長年続けてきた有機栽培のおかげで、ブドウの樹は抵抗力が強く被害は抑えられたといいます。
夏には太陽が戻り、昼夜の寒暖差が激しく、ブドウにとっては恵まれた環境が訪れました。ブドウはゆっくりと成熟し、糖と酸のバランスに優れた果実を実らせていきます。
特にメルロは、夏の暑さの影響を受け、例年より糖度が高く、暑いヴィンテージの典型的な特長であるスパイスなどのトーンが出ているそう。また、9月17日までに収穫が完了したシラーも、バランスが良く、見事な酸をもつ仕上がりとなりました。
しかし、9月下旬。誰も予想しなかった出来事が起こります。たった8時間で250~330mmという、豪雨がボルゲリを襲ったのです。
房は大きくなり、果汁がやや薄まる危険もありましたが、太陽と北風トラモンターナが再びブドウを救いました。健全な状態を保ったまま、ゆっくりと完熟を待つことができ、10月8日、すべての収穫が終えることができました。
収穫量は平均よりわずかに少なめ。しかし、果実の健全さと品質は見事なものでした。
2024年ヴィンテージの白ワイン、赤ワインの特長
それでは、白ワイン、赤ワインそれぞれの特長をみていきましょう。
2024年の白ワインは、マウロが「これまでで最高の一つ」と評するほど。ボルゲリでは珍しくリンゴ酸を多く残し、柑橘や白い花のアロマが広がります。アルコールは控えめながら、しっかりとした骨格を持ち、エレガントで長い余韻を感じさせます。
雨の多い年にありがちな「ぼやけた印象」はまったくなく、むしろ涼しい気候がもたらす精密さと緊張感がワインに宿っています。
一方の赤ワインは、赤い果実と黒い果実のニュアンスが感じられ、タンニンは控えめ。暑い年のような力強さよりも、繊細さが印象的です。
気まぐれな自然と、職人たちの冷静な判断が輝いた、2024年のボルゲリ。こうして生まれたワインは、困難な年を乗り越えたからこその深みと静かな美しさを湛えています。