ランゲといえば、イタリアきっての赤ワインの名醸地です。そんな常識に風穴を開けるように、ガヤ家は1979年、伝統に縛られない挑戦として白ワイン造りに乗り出しました。こうして誕生したのが、『ガヤ・エ・レイ・シャルドネ』です。
間もなくリリースされる2023年ヴィンテージで40周年を迎える今も、ガヤ家のワインには、土地とブドウへの深い敬意、そして革新を恐れない哲学が力強く息づいています。
赤ワイン中心の伝統に挑む白ワイン
1983年のファーストヴィンテージ『ガヤ・エ・レイ・シャルドネ』は、ランゲ地方で初めてバリックで醸造・熟成され、マロラクティック発酵を行った白ワインです。当時、ランゲは赤ワイン中心の産地で、白ワインの生産はほとんど例がありませんでした。
アンジェロ・ガヤ氏は、当時を振り返って、こう語ります。
「父はネッビオーロ以外の品種に懐疑的で、『主要品種があるのだから他は必要ない』と言っていました。赤ワイン以外に興味がなかった父ですが、私はシャルドネを植えたいと説得し、結果的に『好きにやっていい』と言ってくれたのです。こうして1979年に『ガヤ・エ・レイ』の畑を始めました」
ワイン名は、アンジェロ氏にとって大切な女性である祖母クロティルデ・レイと、畑を始めた1979年に生まれた娘ガヤの名前を組み合わせたもの。「祖母と娘、二人の名前を一緒にすることで縁起が良い」とアンジェロ氏は語ります。
「『ガヤ・エ・レイ』は熟成により深みと複雑さを増し、ランゲ地方の可能性を広げるワインとなりました」
土壌と畑の特長を活かす栽培・醸造
『ガヤ・エ・レイ・シャルドネ』に使われるブドウは、ランゲ地方のトレイーゾとセッラルンガに位置する特別な区画で育まれています。
昼夜の寒暖差が大きく、砂質土壌で早く温まるトレイーゾでは、芽吹きが早く進む特長があり、ブドウは収穫まで瑞々しいフレッシュさを保ちます。
一方、セッラルンガは本来粘土質土壌が多い土地ですが、『ガヤ・エ・レイ・シャルドネ』の区画は砂が多く、標高420メートルという高さも相まって生育はトレイーゾより約10日遅れ、成熟のタイミングが自然にずれます。その結果、収穫も別々に行われ、二つの区画の個性がワインの複雑さと調和を生み出します。
『ガヤ・エ・レイ・シャルドネ』では、収穫の段階から非常に細やかな管理が行われています。各区画ごとにブドウの成熟度を確認し、最適なタイミングで収穫。その後、ロットごとに分けて醸造を行うことで、区悪ごとの微妙な土壌や日照条件の違いをワインに反映させています。
白ワインは、赤ワインよりも収穫時期や気候の変化に柔軟に対応できる特性があると、ガヤでは考えています。そのため、寒冷や降雨の多い年でも安定した品質を保ち、長期熟成に耐える構造のワインに仕上がります。時間をかけることで、より豊かな深みと複雑さが増し、畑やワイナリーの個性だけでなく、ランゲ地方のテロワールまでも映し出すことができます。
40年の挑戦と哲学
良いブドウ、手入れの行き届いた土壌、変化や進化への柔軟性――それだけでは、優れたワインは生まれません。最も大切なのは、強いアイデンティティの表現と独自性、畑との一貫性を追求することです。
土地の個性を余すところなく反映し、品種とテロワールを結びつけつつ、誰もが感じ取れるワイナリーのスタイルをワインに宿す。それが、『ガヤ・エ・レイ・シャルドネ』 の40年にわたる歩みに詰まっています。
アンジェロ氏はこう語ります。
「ここランゲ地方では、過去の伝統に縛られて現在を見る傾向があります。人と違うことをする前には、何よりも慎重であれと教えられる。しかし私は好奇心を持つように教育され、何か違うものを生み出そう、他人とは異なる考え方をしようと駆り立てられたのです」
この挑戦と革新の精神こそ、『ガヤ・エ・レイ・シャルドネ』を単なる白ワインの枠にとどまらない、土地と歴史、ワイナリーの哲学を体現するワインにしているのです。