ワインの味わいを左右する「テロワール」

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公開日 : 2022.3.24
更新日 : 2023.7.12
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ワインの味わいを左右する「テロワール」

「ワインは農作物」とよく言います。


ワインは他のお酒と違って基本的にブドウのみから造られるため、原料となるブドウの質がワインの味わいに大きく影響するからです。ブドウに限らず農作物は何でも、生育環境によって見た目も味わいも変わりますよね。


ワインの世界ではブドウ畑を取り巻くこういった自然環境を「テロワール」と言います。


そこで今回はワインに影響を与える自然のお話をしたいと思います。

目次

テロワールとは

テロワール(terroir)とは、フランス語で土地や地球を意味する「terre」から派生した言葉で、主に農作物が生育する土地の土壌や地勢、気候などの自然環境を指します。


ブドウ畑に関して言えば、例えば畑の土壌が痩せた砂利の土壌なのか保水性の高い粘土質土壌なのか、気候は気温の高低に留まらず寒暖の差や降水量、地勢は標高の高い山麓にあるのか海沿いの日当たりの良い斜面にあるのかといった具合に千差万別です。


ヨーロッパ、特にワイン造りの歴史の古いフランスでは、昔からテロワールによってワインの個性が大きく異なると考えられてきました。


ご存じの通りフランスのアペラシオン(原産地統制呼称)という制度は、産地の個性=テロワールを守るための法的規制でもあり、テロワールの概念を重要視しているからこそほとんどのワイン名(アペラシオン名)が産地名になっているのです。


テロワールという言葉は日本語では一言で言い表すのが難しいため、ワイン界ではフランス語のテロワールという言葉をそのまま使用していることが多いようです。


皆さんもワインショップのPOPなどで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?

自然環境がブドウ畑に及ぼす影響

それでは、具体的に自然環境がブドウ畑にどのような影響を及ぼすのか、実際のワイン産地を例に挙げて解説したいと思います。

フランスのワイン産地ロワール地方にはロワール川、ローヌ地方にはローヌ川、ボルドー地方にはジロンド川をはじめとする三つの河川、ドイツ最大のワイン生産地ラインヘッセンやラインガウ地方にはライン川など、ワイン産地は川のそばにあることが多いです。


川沿いの斜面にブドウ樹が整然と並ぶ風景をご覧になったことがある方も多いでしょう。ではなぜでしょうか?


その理由はブドウが生育するのに十分な水があるからと推測しがちですが、実は反対で、ブドウの生育には一般的に乾燥して痩せた土壌が適しています。


ブドウにとってカビの原因となる湿気は大敵なので(その湿気を利用して造られる甘口ワインもありますが)、川沿いの斜面にブドウ畑が多いのは豊富な水があるからではなく、むしろ砂利の多い水捌けの良い土壌を利用していること、より日照量を得るために川岸の急な斜面を活用していることが理由と考えられます。


また、ヨーロッパでは古代から中世の時代、ワインの運搬には河川が重要な役割を果たしていました。陸路が発達するまでは河川が輸送の最大の手段だったのです。


ヨーロッパの主要都市が川沿いにあることからも分かるように、川沿いの産地で造られたワインは川をつたって主要都市に運ばれ消費されて市場を拡大していきました。

海の近くにあるブドウ畑は四六時中強い海風に晒されます。そのため、海のそばで育ったブドウから造られたワインは、その味わいにまで海風が影響を及ぼすと言われています。


例えば、スペイン北西部のガリシア州に位置する有名なワイン産地リアス・バイシャスは大西洋岸のリアス式海岸地域一帯に広がっています。


この地で栽培されている白ブドウのアルバリーニョから造られるワインは、とりわけ魚介との相性が良いことから“海のワイン”と呼ばれています。一般的にアルバリーニョのワインは海に近い土壌に由来するミネラル感と、冷涼な海風によって育まれるフレッシュで溌剌とした酸味を持ち合わせます。


つまり、アルバリーニョは海の影響を多分に受けて育つのです。


アルバリーニョは長年リアス・バイシャスでのみ栽培されてきた品種ですが、近年は日本の新潟県でも栽培されるようになりました。新潟県のブドウ畑も海に近い場所に多くあります。

湖がブドウに与える影響は湖の水温に関係します。例えば寒冷地や標高の高い場所にある湖は、冬場は日中に温まった水温が夜まで保たれ、ブドウ樹の凍結を防ぎます。


また、湖から、あるいは湖に続く渓谷から流れ吹く風のおかげでブドウ畑の風通しが良いことなどが挙げられます。


湖のそばにあるワイン産地として1番に思いつくのはカナダ南東部のオンタリオ州。凍結ブドウから造られるアイスワインで有名な産地です。


オンタリオ州のあるカナダ東部は寒冷な気候ですが、オンタリオ州のワイン産地はエリー湖やオンタリオ湖等の大きな湖が大陸性気候による夏の暑さや冬の厳しい寒さを和らげるため温和で、湖からの風の流れがブドウの霜害を守るため、ブドウの生育には好条件がそろった場所なのです。

林がブドウに与える影響はブドウ畑の地勢にもよりますが、主に強風からブドウを守る役割を果たしています。


フランス南西部の大西洋沿いに広がる銘醸地ボルドーは沿岸を流れる暖流メキシコ湾流の影響により穏やかで安定した海洋性気候ですが、塩気の強い海風が常に吹き付けます。


しかし、大西洋とブドウ畑の間にはランドの森と呼ばれる広大な松林が広がっており、その海風からブドウ畑を守っています。

山がブドウに与える影響は非常にたくさんあります。アンデス山脈に沿って広がるアルゼンチンのブドウ畑を例に見てみましょう。


アルゼンチンのブドウの産地は広大なためテロワールも多様ですが、アンデス山麓に広がるブドウ畑は海岸線から遠く離れた標高の高い位置にあり、大変乾燥しています。


その乾燥した山の空気のおかげでカビ除けの薬剤散布が不要で、ブドウ樹は健全な状態が保たれています。また、乾燥した地域ではありますがアンデスの雪解け水が豊富にあるため干ばつ問題はありません。


高地で緯度が低いため日中の陽光が非常に強い一方で、夜間の気温は十分に低いため品種固有の味香が強いブドウが育つのです。

まとめ

自然がブドウ畑に与える影響は、ワインの味わいにも反映することがお分かりいただけたかと思います。


ワインがどんな場所で造られたのかが分かれば、その味わいに納得するかもしれません。


テロワールを知れば知るほど、ワインを飲むのがより楽しくなりそうですね!

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