チーズのプロに聞いた!旬の味覚モン・ドールの美味しい食べ方

モン・ドール

「旬」とは、魚介や野菜などがよくとれて味の最も良い時期のこと。

もともとは10日間を意味する漢字でしたが、そこから転じて、1番良い時期という意味合いを帯びたそうです。日本には旬を楽しむ文化が根付いており、私たちは旬の味覚にポジティブなイメージを抱きます。

旬の味覚というと、ワインの世界ではボジョレー・ヌーヴォーがイメージされますが、ワインのお供であるチーズにも「モン・ドール」というチーズがあることをご存じでしょうか?

今回はチーズ専門店フェルミエ愛宕店の店長又平さんに、旬の味覚「モン・ドール」をご紹介していただきました。

旬の味覚モン・ドールとは?

フェルミエ愛宕店店長

【プロフィール】又平幸代さん

フェルミエ愛宕店店長、C.P.A.認定チーズプロフェッショナル。
フランスのシャビニョル(山羊チーズ)を1口食べ、虜になってから20年。岐阜県のチーズ工房にて開発と全国展開を手伝うなどチーズ業界を渡り歩き、自然の贈り物であるチーズを大切に扱う姿勢に惹かれフェルミエ入社。食べごろのチーズを直接販売出来ることに感謝している毎日。

―モン・ドールとはどんなチーズですか?

モン・ドールは、フランスとスイスの国境の山脈一帯で作られる、牛乳を原料としたウォッシュチーズの一種です。少しとろけさせて食べる柔らかいチーズで、販売期間が決まっているので食べられる時期が限られています。モン・ドールを見ると季節を感じますね。

―フランスとスイスの国境付近というと、ワイン産地でいうジュラ地方でしょうか?

そうです。ハードチーズのコンテが有名なジュラ地方ですが、コンテは40kgもある大型のチーズなので凄い量のミルクが必要で、1軒の酪農家では必要なミルクを賄いきれないため、複数の酪農家が共同で夏場に作っています。

そして夏が終わると、コンテを作るため大量のミルクを絞られた牛たちが放牧地から各酪農家のもとへ帰るのですが、帰ってきた牛の乳量は少なくなっています。モン・ドールはその冬場のわずかな量のミルクを使って、酪農家の自宅用チーズとして作られていたそうです。

牛

―だから同じジュラ地方のチーズでもあんなにサイズの違いがあるのですね!
ところでモン・ドールはワインのように毎年出来が違うと聞いたことがありますが本当ですか?

本当です。様々な要因が考えられますが、最近だと熱波、大雨などの気候の変化が大きく関与しています。

暑い年だと牛自体もストレスを感じますし、雨が多い年だと餌となる牧草が少なくなったりします。モン・ドールの味わいはミルクの質に、ミルクの質は牛の健康状態や餌となる牧草に左右されるので違いが出るんです。

入荷したばかりの若いモン・ドールを食べると、生地に弾力や酸味があってミルクの風味の強さも違うことがわかります。そこから熟成が進むと生地が柔らかくなり、香り、風味も強くなってくるので、時間をかけてその年のモン・ドールを味わっていただきたいです。

―ワインと同じで面白いですね。やはり暑い年は濃厚な味になるのでしょうか?

一概には言えないのですが、暑過ぎると牛が疲れたり、ストレスを感じてミルクの質が変化するのでチーズの味も例年と変わってきます。

―同じ旬の味覚としてボジョレー・ヌーヴォーと提案されることも多いですが相性はどうですか?他に良いと思うワインがあれば教えてください。

チーズとワインの合わせ方は、熟成期間を合わせたり、土地で合わせたりと色々あります。

ちょうどタイミング的にもボジョレー・ヌーヴォーとモン・ドールの出る時期が重なるので、一緒に合わせるのはイベント的にも、旬を楽しむ組み合わせとしても良いと思います。

ただモン・ドールが過熟だと、熟成感が強くて香りが立ってしまうということもあるので、ボジョレー・ヌーヴォーには少し若めのモン・ドールを合わせるのがおすすめです。

フェルミエでイベントをする際は同じジュラ地方の白ワインを出しますが、焼いたモン・ドールと凄く合います。意外かも知れませんが、白ワインもよく合うんですよ。

プロ直伝!モン・ドールの美味しい食べ方

モン・ドール

―又平さんのモン・ドールの楽しみ方を教えていただけますか。

9月末にその年の第1回目のモン・ドールが納品されるのですが、現地で熟成されていない若いものが入ってきます。ちょっと生地が固いのですけど、絶対にその第1回目を買って食べて、年の違いを楽しみます。

あとは年末に自宅用に買っておいて、華やかなイメージがあるのでパーティシーンで楽しみます。

―プロ直伝の美味しい食べ方を教えてください。食べごろのおすすめは?

やっぱり賞味期限の1週間くらい前からが、柔らかさと香りがすごく良くなってきますね。

食べるときは冷たいと味が感じにくいので、事前に冷蔵庫から出して常温にしてください。常温だと香りも楽しめますし、味も伝わりやすくなります。室温によりますが、外に出してからの時間は長くても大丈夫なので、昼頃に食べるなら朝から出して良いと思います。

大勢で食べるのであれば、外皮の上側にナイフで切り込みを入れて外していただいて、スプーンですくって食べていただくのが良いと思います。それが1番オーソドックスな食べ方です。

他には、焦げないように容器の外側をアルミホイルで覆って、トースターで焼いて食べる「フォンドール」という食べ方も華やかなシーンにはおすすめです。

―パーティでフォンドールは盛り上がりそうですね!
少人数で食べる時はどうしても1度で食べきれないのですが、良い保存方法はありますか?

すくって食べるので上側に穴が開くと思うのですが、その空いた穴の中にラップを入れてしまい、中のチーズが酸素と触れないように全て付けます。

ラップをかけるというか、切り口に入れてしまうんです。それで蓋をして紙袋に入れて冷蔵庫です。

モン・ドールの上側の外皮を全部取った場合は蓋みたいになると思うのですが、蓋代わりに外皮を被せるのもありです。とにかく酸素に触れないようにするというのが大切で、保存先は冷蔵庫で問題ありません。

―皮の部分の美味しい食べ方はありますか?

モン・ドールの皮を削いでいる様子

私たちフェルミエのスタッフもよくやるのですが、外皮には白カビや青カビが付いていることがあるので、まずそれを包丁の背などで削ぎ取ってください。そうしたら内側を上に向けてパンに乗せてトースターで焼くだけです。皮がカリカリッとして、裏についていたモン・ドールはトロっと溶けるので美味しく食べられます。

あとはフォンドールにする際に、細かく刻んでモン・ドールの上に振りかけると一層香ばしく香り高くなります。中身のチーズを食べ切った後でも良いですし、途中でも大丈夫ですよ。

チーズのプロが伝えたいこと

フェルミエ愛宕店店長

―色々と教えていただいてありがとうございました。最後に、何かメッセージはありますか?

実は、昨年のモン・ドールは熱波による乳質や生産工程などの様々な問題があって、熟成しても柔らかくなるものが少なかったんです。モン・ドールというと、とろけるほど柔らかいイメージがあるので、結果として消費者の期待を裏切ってしまう形になってしまいました。

しかしモン・ドールだけではないですが、チーズというのはワインと同じで毎年、その年その年で味わいも状態も違います。予想と違う状態のチーズで残念な思いをした方には申し訳ありませんが、そういったチーズも美味しく食べる方法はあるのでお近くのフェルミエのスタッフに聞いていただければと思いますし、ワイン愛好家の方々にはチーズも毎年一緒じゃないということを楽しんでもらえたら嬉しいです。

最後に、今年のモン・ドールは凄く美味しいです。昨年とは違いどんどん柔らかくなってきているので、これから12月~1月にはとても美味しい状態で楽しんでいただけると思います!

 

チーズ愛いっぱいで語ってくれた又平さん。なんだか今年のモン・ドールはいつもより美味しく食べられるような気がしてきました。

どうもありがとうございました!

今回取材をしたお店はこちら

フェルミエ愛宕店

住所:東京都港区愛宕1-5-3 愛宕ASビル1F
TEL:03-5776-7720
営業時間:12:00~19:00
定休日:日曜日・祝日・年末年始及び夏季休業日
※場合によって日・祝営業あり