“ガヤ”というワイン生産者をご存じでしょうか?サッシカイアと並び、業界で知らぬ者はいないほど高名なイタリアのワイン生産者です。
ガヤは何世代にも渡って徹底した品質主義を貫き、かねてから高い評価を得ていましたが、現当主アンジェロ・ガヤ氏が参画するや否や、数々の革新を巻き起こし、イタリアワインの頂点としての地位を確固たるものにしました。
ワイン造りという伝統産業にありながら、それまでの既成概念を塗り替えたイノベーターとして知られるガヤ4代目当主アンジェロ・ガヤ氏のモノづくりの哲学をお伝えします。
偉大な職人“Maestro”であれ
1859年、ガヤはイタリアのピエモンテ州で、初代当主ジョヴァンニ・ガヤ氏によって創設されました。
現在のアンジェロ氏で4代目にあたりますが、ガヤ家には代々受け継がれている教えがあり、実は、その教えがガヤのワイン造りの礎となっています。
それはどんな職業に就くにせよ、職人になるべしという教えです。アンジェロ氏も幼少期に、祖母から偉大な職人にならなければいけないことと、職人になるために必要な下記の4か条を教えられたと言います。
①極めていく職を見つけること
②その技巧を磨いていくこと
③磨くだけではなく下に伝授すること
④伝授するだけでなく広く普及させること
ガヤはイタリアワインに変革をもたらした革新者として知られていますが、全ては職人としての技巧を磨き、ワインの品質を高めるため。その背景には、ただ、職人として最高のものを造りたいという想いがあるのです。
革新はあくまでも目的のための手段であり、古典的な手法でも高品質なワインを造るために良いと判断したものは惜しみなく使う、一貫した高品質主義がガヤの本質と言えます。
実際に、アンジェロ氏は「最高のワインにしか興味がない」と断言しており、妥協を許さないワイン造りが、結果として世界的な評価に繋がっています。
Think Different
職人として最高のワインを造るために起こした多くのイノベーションによって、ガヤは間違いなくイタリアワインの歴史を前進させた生産者の一人となりました。
フランス産オーク小樽、単一畑、国際品種の導入など、その一つ一つがピエモンテという歴史あるワイン産地にとっての「伝統」や「慣習」を打ち砕くものでした。
保守的な人が多いと言われている伝統産地において、このような革新を続けてこられたのは、アンジェロ氏のイノベーターらしい考え方があるからでしょう。
“正しいとされていることでも30%は疑ってみる。今やっていることを100%正しいと捉えると、そこに改善の余地がなくなってしまう。”
5代目にあたるガヤ・ガヤ女史は父アンジェロ氏からそう教えられてきたそうです。
アンジェロ氏が「Think Different(発想を変える)」という表現をするように、ガヤのワイン造りは常識にとらわれることなく常に進化を続けてきました。
人に後ろ指をさされながらも、既成概念を塗り替えてきたガヤだからこそ、頂点に君臨する生産者として周囲から認められているのかもしれません。
革新の原動力
アンジェロ氏の数々の逸話の中で、最も象徴的なエピソードが、フランス・ボルドー地方のブドウ品種カベルネ・ソーヴィニヨンの導入ではないでしょうか。
ピエモンテという産地とブドウ品種ネッビオーロは、今でこそ世間に注目をされていますが、1970年代、ピエモンテやネッビオーロという品種にまだ誰も目を向けていなかった時代がありました。
そこでアンジェロ氏は、代々受け継いできたバルバレスコの畑に育つネッビオーロの樹を引き抜き、カベルネ・ソーヴィニヨンに植え替えます。当時、世界中の生産者がそうしたように、広く認知されていて販売し易いブドウ品種だから植え替えたわけではありません。
アンジェロ氏の目的は、あくまでもピエモンテとネッビオーロに世界の注目を集めるということでした。そのためにカベルネ・ソーヴィニヨンという世界共通言語を使って、高品質なワインを造ることで、ピエモンテという偉大なワイン産地があると知らしめたのです。
テクノロジーであれば、失敗してもすぐに切り替えられるかも知れませんが、ブドウは植え替えて3年ほどは実をつけません。高品質な実をつけるようになるまでには、さらに数十年が必要です。
そのリスクを承知の上で、自分の道を信じ、既存のものを大きく変えてしまう。この無限のバイタリティと行動力が、革新を止めないガヤの原動力です。
ちなみにこのワインには、ネッビオーロの樹を引き抜くのを見た父ジョヴァンニ・ガヤが、「ダルマジ!(なんて勿体ないことを!)」と叫んだという逸話から、ダルマジというユニークな名前がついています。
まとめ
そんなアンジェロ・ガヤ氏も今年で80歳になりますが、2017年には新しい産地シチリアへの進出を発表するなど、その行動力は未だ衰えを感じさせません。
間違いなく、これからもイタリアワイン史に残るイノベーションを起こし続け、私たちを魅了してくれることでしょう。
父はこれまでも、そしてこれからも夢想家であり、実験者であり続けます。我々が父と同じバイタリティや熱意を持っていることを願っています。
―ガヤ・ガヤ女史
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