注目ワイナリー多数!九州で造られるワインの魅力

大分 風景

近年、国際的なコンクールでも高い評価を得ている九州のワイン。しかし、残念ながら日本ではまだ九州ワインの知名度は低く、お土産物のワインというイメージを持っている方も多いと思います。

そもそも雨が多くブドウの栽培が難しいと言われる九州で、世界にも通用するワインがどのように造られているのでしょうか?

ワイナリーの新設が活発化し品質も評価も急上昇している九州ワインの今を解説致します。

九州ワインの概要

ブドウ

九州におけるブドウの栽培とワイン造りは明治時代に始まったとされています。その後、1905年に本州から欧州系のブドウ品種、大正時代にはキャンベル・アーリーやデラウェアが導入され、ワイン醸造の計画がありましたが頓挫しています。

結局、九州での本格的なワイン造りが始まったのは1972年に九州初のワイナリーが設立されてからとなります。

日本の南西部に位置する九州は日本では温暖な地域ですが、九州北部は日本海側の気候に似ており、冬には積雪もあります。また、夏は対馬海流や季節風の影響を受け、雨が多く気温も上がります。

九州の代表産地である大分県において、主にワイナリーがある地域は盆地で、昼夜の寒暖差が大きく、晩冬から初春にかけては冷え込みが激しく氷点下になることもあります。一方、九州山地の南側に位置する宮崎県や鹿児島県は梅雨の時期を除けば日照時間も長く温暖な気候ですが、台風の常襲地帯でもあります。

このように、九州の気候は北部と南部、また、海側と内陸で異なるため、九州で造られるワインはワイナリーやブドウ畑の所在地によって個性が異なります。

ただ概して言えることは、梅雨前線が停滞しやすく台風の影響も受けやすい九州は、降水量が多く、ブドウの栽培が難しい地域であるということです。そのため、ワイナリーでは様々な工夫がされており、品質の高いワイン造りを目指しています。

九州のワイン産地

現在、九州では佐賀県を除く6県でワインが造られています(注1)。九州全体の日本ワインの生産量は750ml換算で約77万本。その半分以上の約47万本が宮崎県で、しかも県内のブドウで醸造されています。宮崎県に次いで大分県が約16万本、その次に熊本県と続いています。

2018年度においてワインの生産またはワインの出荷の実績があるワイナリーの件数は、大分県と宮崎県に6軒、熊本県に3軒、福岡県に2軒、そして長崎県と鹿児島県に1軒ずつ(注2)の合計19軒。

そのほとんどが2000年前後以降に設立されたワイナリーです。主な産地を紹介致します。

(注1、2)国税庁による(平成30年度調査分)「国内製造ワインの概況」より

大分県

大分 風景

大分県では1965年に県北部の安心院町に国営のブドウ園が開園されブドウの栽培が本格的に始まりました。当初はデラウェアを主体に、マスカット・ベーリーA、キャンベル・アーリーなど生食用のブドウが植えられていました。そして、1971年に九州の酒造メーカーがこれらのブドウからワインを製造。その後2001年にその酒造メーカーのワイン部門が独立し、安心院葡萄酒工房が設立されました。

安心院町は周囲を山に囲まれた小さな盆地。昼夜の寒暖差が激しく、九州の中では降水量が少ないためブドウの栽培に適しています。安心院葡萄酒工房はこの地で作られる良質なブドウにこだわってワイン造りを行っており、近年は自社農園も拡大しています。

安心院葡萄酒工房の名を知らしめたのはシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で造られる『安心院スパークリングワイン』で、日本ワインコンクールで何度も部門最高賞に輝いた逸品です。

また、大分県内では竹田市もブドウの栽培が盛んで、畑は阿蘇くじゅう国立公園の中の標高800mを超える高原に位置するため、九州にもかかわらず冷涼。ピノ・ノワールやドイツ系の品種、ヤマブドウ系の交配種の栽培を続け、ワインを生産しています。

宮崎県

宮崎 風景

現在、宮崎県の主なブドウ産地は都農町と小林市ですが、後者は観光農園が主体で、本格的なワイン生産を行っているのは都農町になります。

ブドウの栽培は1950年に都農町で山形県から入手したキャンベル・アーリーの苗が植えられたことから始まりました。当初は病害虫を防ぐのに苦労しましたが次第に栽培は広がり、1996年に新たな品種の栽培も始めて都農ワイナリーが設立されました。

日照量は全国でも随一の長さを誇る都農町ですが、年間降雨量4,000ミリ以上と世界のブドウ産地の5~8倍もの雨が降るだけでなく、収穫期には台風が襲来する土地です。ブドウ栽培には非常に厳しい環境にもかかわらず、都農ワイナリーでは地元産のブドウにこだわってワイン造りが行われています。特にトロピカルフルーツのような華やかさを持つシャルドネのワインは、世界的にも非常に高い評価を得ています。

その他、九州のほぼ中央に位置し標高が高く冷涼な気候の五ヶ瀬町、宮崎県の南西端に位置し県内第2位の人口を擁する都城市にもワイナリーがあります。

その他

熊本県では、1999年に熊本市に熊本ワイナリーが設立されました。ワイン用ブドウの栽培は山鹿市と隣接する玉名市を含む県北部に集中しており契約農家と協力してワインが造られています。とりわけ、熊本県北部にある菊鹿町の契約農家で栽培されたシャルドネから造られるワインは大変な人気で、九州の豪華なクルーズトレイン「ななつ星」にも採用されました。

その他、福岡県には1972年創業の巨峰を原料とするワイナリーがあり、長崎県の五島列島には2012年にワイナリーが設立されました。

九州ワインの現状

現在、九州にあるワイナリーのほとんどが平成になってからの設立です。山梨や長野、北海道などのワイン産地に比べて九州ワインは出遅れた感がありましたが、近年、志ある新しいワイナリーが続々と誕生し、地元農家と土壌の改良から品種の選定、栽培方法の模索まで熱心に取り組んでいます。

九州のワイナリーは自社畑が拡大しつつあるものの、ほとんどが自社農園ではなく契約農家でブドウを栽培しています。その多くがもともとは食用ブドウの栽培を手掛けていたため、ワイン用ブドウについてはノウハウが不足していました。しかし、ワイナリーと協力してブドウの栽培を行うことでブドウの質が向上し、優れたワインが生まれるようになってきました。

まとめ

人気も評価も鰻登りの九州ワインですが、それは、気候条件にハンディがある九州において、契約農家とワイナリーの並々ならぬ努力のうえにあります。そして、今なお試行錯誤を繰り返し、各地の風土に適したブドウ品種の導入に積極的に取り組んでいます。

最近ではアルバリーニョやプティ・マンサン、シラーやピノ・ノワールにも挑戦しているとのこと。九州ワインがどんな発展を遂げるのか、これからが非常に楽しみです。

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2020