ペトリュスを育て上げたワイン界のレジェンドが、50年のキャリアをかけて生み出すボルドーワイン

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レポート
公開日 : 2019.3.19
更新日 : 2021.4.2
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ペトリュスを育て上げ、伝説のヴィニュロンとして知られる、フランス、ボルドーのジャン・ピエール・ムエックス社のオーナー、クリスチャン・ムエックス氏が2年振りに来日。
カリフォルニアではドミナス・エステートも手がけるワイン界のレジェンドが、50年のキャリアをかけて今最も心血を注ぐボルドーワイン、シャトー・ベレール・モナンジュについて語っていただきました。
ジャン・ピエール・ムエックス社 オーナー クリスチャン・ムエックス氏(隣の写真は約30年前のご本人!) 「土の状態を見る限りこれはあんまりいいヴィンテージじゃなさそうだから、1984年あたりだね。」とのこと。

右岸に畑が買えたのは、低価格だったから

クリスチャン氏の父であるジャン・ピエール・ムエックス氏
1946年生まれ、73歳になるクリスチャン・ムエックス氏。今でこそボルドー屈指のワイン商であるジャン・ピエール・ムエックス社の代表を務めるクリスチャン氏ですが、ファミリーが成功するまでには多くの苦難があったそうです。
「私の先祖は高貴なファミリーではありませんでした。貧しい農家だった先代一族は、ボルドー右岸のリブルヌ(サンテミリオン近郊の村)に移り住みました。そこで1938年に、樽でワインを買い付けてボトルに詰め、ワインを販売するビジネスを始めました。
サンテミリオンやポムロルは小さな村で、当時は同じボルドーでも左岸のメドックと比べて人気がありませんでした。また、ポムロルで造られるメルロ主体のワインは当時、早飲みのワインとして認知されており、熟成させることなくすぐ売られてしまっていたため、ワインを貯蔵しておくセラーや豪華なシャトーなんてものはなく、地価も安かったのです。
そこに目を付けた私の父(ジャン・ピエール・ムエックス氏)は、戦後不況という時期も重なって右岸のシャトーを次々と買収していきました。樽でワインを買うだけではなく、今後はワイン造りもすべきだ、とね。先見の明があったということです。」
ペトリュスをはじめ、右岸の錚々たるシャトーを所有する屈指のワイン商と言われるジャン・ピエール・ムエックス社。今では、左岸の1級シャトーを凌ぐ価格がつくようなシャトーがひしめく右岸に、不遇の時代があったとは驚きました。

ようやく手に入れた、ボルドー屈指の歴史を誇るシャトー

ジャン・ピエール・ムエックス社が生み出すワイン
アメリカ、カリフォルニアの名門UCデイヴィス校でワイン造りを学んでいたクリスチャン氏ですが、1970年にはボルドーに呼び戻され、ファミリービジネスに参画することになります。直後から38ヴィンテージにわたってペトリュスを手がけたクリスチャン氏(ペトリュスは後にクリスチャン氏の兄が相続)は、1991年に同社の社長となり、1999年にシャトー・オザンナを、そして2008年にはサンテミリオンの歴史的なシャトー、シャトー・ベレールを手に入れました。
シャトー・ベレール・モナンジュの地質について説明するクリスチャン氏
シャトー・ベレールは、遥かローマ時代に歴史を遡る、サンテミリオンで最古の歴史をもつシャトー。サンテミリオンにある石灰岩の台地の中でも最も標高の高い場所に位置するベレールは古くからこの地で最高の区画とされており、1850年までは著名なワイン辞典でサンテミリオンのトップにランクされていたとか。
しかしその後手入れが行き届かない時代もあり、高い評価を維持することはなく、1954年に始まったサンテミリオンの格付けでは、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセBに格付け。しかし2008年にクリスチャン氏が買い取り、大規模な改修を進めることで、シャトー・ベレールの品質は目覚ましい向上を遂げることになりました。
 
シャトー・ベレール・モナンジュの畑
2008年のムエックス家による買収により、シャトーの名前はシャトー・ベレールからシャトー・ベレール・モナンジュに変わりました。実は「Bel air=美しい空気」を意味する名前は、風通しのよい場所にあるシャトー名の定番だそうで、クリスチャン氏が調べたところ、ボルドーだけでもなんと124件もの「ベレール」が付く名前のシャトーがあったため、シャトー・ベレールの名前を変更することになりました。
名前の変更にあたり、クリスチャン氏は「チャーミングなレディの名前を付けたい!」と思い、愛するおばあちゃんの名前であり“私の天使”を意味する「モナンジュ」を付けたというエピソードを明かしてくれました。

2014年に初めてリリースされたセカンドとサードワイン

セカンドとサードは2014年からリリースされるようになりました。その理由をクリスチャン氏に尋ねると、
「植え替えを進めていた若木が成長してきたのと、2014年は収量が多かったため、セカンドとサードのリリースに踏み切りました。」とのこと。
全てのワインは区画ごとに醸造され、テイスティングによって最終的にどのワインにするかが決定されます。
元々左岸と比べて生産量が少なく、セカンドを造るシャトーも少ないサンテミリオンでサードワインの存在は皆無に等しい状態。そんな中、サードワインまでリリースしたクリスチャン氏。シャトー・ベレール・モナンジュの名を冠したワインの品質への並々ならぬこだわりと、近年の同シャトーの高い評価の理由が垣間見えました。
「オー・ロック・ブランカン2014年」は、レッドチェリー、ブルーベリー、スイートハーブなどのアロマに、心地よい果実味とみずみずしい酸味が口中を満たします。
サードワインと言えども、ベレール・モナンジュ譲りのミネラル、エレガンスを感じることのできる必見の1本です。シャトーの若木を使用して造られます。
「アノンス・ド・ベレール・モナンジュ2015年」は、ブラックベリー、カシス、ドライハーブのアロマ、セカンドとは思えないほどの複雑味と長い余韻が楽しめます。
2015年はクリスチャン氏が太鼓判を押すヴィンテージ。ファーストのシャトー・ベレールはジェームス・サックリングが100点を付けた超優良年で、クリスチャン氏曰く、他のシャトーのファーストに匹敵する品質のセカンドワインだとか。
最後にテイスティングしたのは「シャトー・ベレール・モナンジュ2012年」。2012年は超優良年と言える年ではありませんが、ベレール・モナンジュに関しては各ワイン誌で高評価を獲得し成功したヴィンテージ。
レッドフルーツ、ミネラル、フローラルの華やかなアロマ。熟したブドウ由来のシームレスなタンニンと、研ぎ澄まされた余韻が長く続きます。セカンド、サードと比べても圧倒的に複雑な香りと余韻の長さはさすがの一言。
今飲んでも十二分に美味しいですが、あと10年ほどは寝かせるとさらに素晴らしい姿を見せてくれそうな1本でした。

約50年間のワイン人生で今が一番

ボルドーで約半世紀にわたってワイン造りに携わってきたレジェンド、クリスチャン・ムエックス氏。同氏によると、彼のワイン人生で今が一番高品質なワインが造れる時代であると断言できるそうです。
「地球温暖化がボルドーではポジティブに働いていることは事実です。また、光学式選果台(※)を導入したのは、ボルドーでもカリフォルニアでも私が最初でしたが、この50年のキャリアでこれが一番大きな技術進歩だと思っています。特にカリフォルニアでは、過熟したブドウの粒を選別するのに大いに役立っています。」
(※)除梗したブドウの粒をコンピューターが画像判定し、不適格なブドウを空気砲で弾くことで選果する最新鋭の機械
半世紀以上というワイン造りの長い歴史と経験に裏打ちされたクリスチャン氏が今最も心血を注ぐボルドーワイン、シャトー・ベレール・モナンジュ。現在は息子のエドアルド氏が一家で移り住んでマネジメントを行っていますが、近いうちにシャトーの建設も始まるそうで、さらなる進化を遂げる模様。
レジェンドがキャリア史上最高品質と断言する今、同氏が愛情と50年のキャリアをかけて生み出すボルドーワイン、シャトー・ベレール・モナンジュからますます目が離せません!
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