【ソムリエ監修】ワインのオリ(澱)とは?

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公開日 : 2025.5.14
更新日 : 2025.5.14
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ワインボトル

ボトルの底に何やら黒い塊のようなものが沈殿しているのを見たことがありますか?


この堆積物は「オリ」と呼ばれます。何故、こういった物体がワインボトルの中に現れるのか?また、オリがあるワインはどのように取り扱ったら良いのか?


今回はワインのオリに焦点を当て、オリの正体やオリのあるワインを美味しく飲む方法などソムリエの解説付きで詳しくご説明します。

解説してくれるのは、紫貴あきさん


紫貴あきさん

ワイン講師 日本最大級ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の人気講師。初心者から上級者まで唸らせる質の高いレッスンが評判で、その指導実績は3500人超。その他、企業研修、メディアへの執筆・監修・取材協力、出演など幅広く活動している。 著書『キャラクターでわかるワイン図鑑』(かんき出版)を2024年12月4日に出版。

目次

オリとは?どうして生まれるの?

オリとは、ワインが熟成の過程で渋み成分中のタンニンや色素成分のポリフェノール、酒石などが結晶化して瓶底に沈んだものです。


ではオリは、どのようにして生まれるのか紫貴さんに教えてもらいました。

ワインが若いうちは、渋みや色素の成分は別々に浮遊しています(図1)。ところが月日が経つうちに穏やかな酸素の混入が起こります。酸素の混入が起こることで、これまで別々に浮遊していた渋みと色素の成分が引き寄せあうようになるのです(図2)。 このことをサイエンス的には「重合(じゅうごう)」と呼びます。初期の段階では、重合が進むことによって、渋みのテクスチャーがなめらかで柔らかなものになります。 ところがさらに歳月を重ねていくと、この重合がより進み、やがて重力に逆らえないぐらい大きな塊になり瓶底に「オリ」として沈殿するのです(図3)。 したがって、赤ワインは熟成が進むと色が淡くなり、渋みが穏やかでマイルドになるという状態につながります。

オリができる仕組み

オリがあるワインを美味しく飲む方法

デキャンタ―ジュ

オリは飲むと渋く、オリのあるワインを美味しく飲むためには取り除く必要があります。また、オリが発生したワインは取り扱いにも注意が必要です。


その方法について紫貴さんに二つの方法を教えてもらいました。


①デキャンタージュする方法

②デキャンタージュ以外の方法

①デキャンタージュする

オリのあるワインは、デキャンタを使って上澄みだけを丁寧に移し替えるのが一般的です。移し替える際は、ボトルの肩の部分にライトやろうそくなどの光を当て、オリがデキャンタに入らないよう細心の注意を払いましょう。 この作業を「デキャンタージュ」と呼び、ワインを澄んだ状態で楽しむための大切な工程です。また、デキャンタージュにはオリを除くだけでなく、ワインを空気に触れさせて香りを開かせる効果もあります。

デキャンタージュについて詳しくはこちら

②デキャンタージュ以外の方法

オリがあるワインだからといって、必ずしもデキャンタージュをするのが正解とは限りません。特に、長期熟成された古いワインの場合、デキャンタ―ジュによってワインが台無しになることさえあります。 というのも、熟成とはワインがゆっくり酸化していく過程です。すでに酸化が進んだ古酒をデキャンタージュすると、移し替えの途中で空気に触れすぎ、酸化が一気に進んでしまいます。 その結果、香りや味わいが崩れ、「ワインが死んでしまう」と表現されるような状態になることもあります。 こうした悲劇を避けるために、古酒の場合はデキャンタージュせず、ボトルを立てて澱を底に沈めておき、そっとボトルから直接グラスに注ぐのがおすすめです。オリを避けながら注ぐだけでも十分おいしく楽しめます。

①飲む1週間程前に冷蔵庫などで縦にして保管しましょう。

※一般的にワインはラベルを上にして横に寝かされて貯蔵されているため、こうすることによりオリが瓶底に沈みます。


②飲む直前にもう一度ラベルを上にして横に寝かします。

こうすることでラベルとほぼ対角線上にオリが堆積しますので、グラスに直接注ぐときにボトルの肩にオリを溜め、グラスに入らないように注ぐことができます。オリの程度にもよりますが、ボトルの瓶底にワインを残すかたちとなるでしょう。 自宅にデキャンタを持っていないという方もこの方法を試してみてください。

オリにまつわる疑問

ソムリエとワイン

オリにまつわる疑問を紫貴さんに聞きました。

①オリは飲んでも大丈夫?

飲んでしまっても体に害があるわけではありません。 あまり強くはおすすめしませんが、「勉強」ということで、一度はペロリと舐めてみるのもありかもしれません…きっと飛び上がるほど渋いに違いありません。

②若いワインでもオリがあるのはなぜ?

最も考えられる原因は、醸造工程で清澄・濾過が行われなかったということです。 特に自然派の生産者の中にはブドウ本来の風味を残すために、清澄・濾過を好ましく思わない人が多いようです。自然派ワインで若いうちからオリが見受けられることが多いのはそのためです。

③何年目ぐらいからオリは発生するの?

ワインは農業生産品の側面を持つお酒です。ですから何年目からオリが発生するというのは、はっきり言えません。 ワインそのものの状態がオリを発生させる年月に影響を与えることもありますし、貯蔵環境によっても熟成のスピードは変わってきますので、オリが発生するまでの期間も当然異なってきます。

④デキャンタージュするか迷ったらどうしたらいい?

もし、レストランでデキャンタージュするかどうか迷った場合は「一度断る」ことをおすすめします。 理由は1回でもデキャンタージュしてしまえば後戻りができないからです。もし飲み進めていって「デキャンタに移し変えたほうがいいな」と思ったらその段階でお願いすればいいのです。

まとめ

ワインの魅力は、時間の経過とともに味わいや表情が変化していくところにあります。オリとうまく付き合えるようになると、その楽しみはさらに広がりますし、オリの扱い方を知っていれば、いざというときも落ち着いて対応できます。


ワインを優しく丁寧に扱って、その奥深い魅力を最後までじっくり堪能したいものです。

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