ワインを発酵、熟成させる!ステンレス製タンクの役割やメリットとは?

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公開日 : 2018.9.7
更新日 : 2023.7.12
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ステンレスタンク

一般に、鉄に約10.5%以上のクロムを含有した合金をステンレスといいます。別名inox(イノックス)ともよばれ、ワインを造るためだけでなく包丁や生乳のタンクなどに使われ、私たちの生活に深く根差しています。

ワイン醸造においては醪(もろみ)やワインを入れる容器として使われ、主に「発酵用」と「熟成用」に分けることができるでしょう。今回はこの二つの用途に分けてステンレス製タンクの役割やメリットをご紹介していきます。

目次

発酵桶の歴史

かめ

アルコール発酵では幅広い材質が容器として使われます。紀元前には甕(かめ)や壺で発酵されていました(現在、世界最古の甕はジョージアで見つかっており「クヴェヴリ」と呼ばれています)。

時代ともにその材質も変化し、古典的なものにコンクリート、木製などがあげられるでしょう。ステンレス製タンクが一世を風靡するようになったのは1970年代のことでした。

ステレンス製発酵桶のメリット

何故ステンレスが発酵用の容器として広い支持を得たのでしょうか。主に3つのメリットがあげられるからです。

1.多くの金属はさびます。しかしステンレス製タンクはさびに強く長期にわたって使用することができるのです。何度も買い替える必要がなく、ワイナリー経営にとっては大きなメリットがあります。

2.温度コントロールがしやすいのが2つ目のメリットです。アルコール発酵中は温度が1~2度違うだけでも、酵母の活動や醸しの具合が変わります。ステンレス製タンクであれば温度を一定に保ちやすいという特徴を備えているので、醸造家の狙うワインスタイルを造るにあたっては理想的ともいえるのです。

3.「Stain(よごれ)」「Less(少ない)」の言葉の通り、衛生的で汚れ知らずのことが3つ目のメリットです。一般的に発酵桶は洗って毎年使いまわしていきます。コンクリート製や木製の桶は、いくら丁寧に洗ったつもりでも完璧とは言えないのが難しいところです。ほんのわずかでも好ましくない微生物が残されていた場合は、せっかくの果汁が汚染される可能性が出てきます。

進化し続けるステンレス製発酵桶

ステンレスタンク

世界の最先端を行くのがフランスのボルドー地方ではないでしょうか。これまでは円筒形の大きめのサイズのものが主流でしたが、年々進化を遂げているようです。

この10年の流れとしては、タンクの小型化が顕著です。小さくなればなるほど管理は大変ですが、区画ごとの発酵が可能であり、ブレンドの時により微妙なニュアンスを表現するのにアドバンテージがあるからでしょう。

例えばシャトー・カロン・セギュールは2012年にオーナーチェンジが行われ、ワイナリーが一新されました。発酵桶も大中小と様々な大きさが用意されており、区画の大きさに応じて使い分けているそうです。

シャトー・マルゴーでは木製とステンレス製の2タイプを併用してアルコール発酵を行います。ステンレス発酵桶は「トロンコニック」といって台形をした(写真参照)ものを使っています。台形にすることによって、赤ワインの発酵中の醸しがスムーズになるそうです。

熟成におけるステンレス製タンク

白ワイングラス

熟成におけるステンレス製タンクのメリットは酸化から守られること、ピュアな果実味が保たれことです。圧倒的に赤ワインよりも白ワインの貯蔵で使われることが多いようです。

理由のひとつは白ブドウ品種の中には時には酸化しやすいタイプがあること、ふたつめにフルーツそのものの味わいをダイレクトに楽しむことが「良し」とされる品種があるからです。逆に赤ワインは味わいの構成が複雑で、むしろ穏やかな酸化を促した方が良いバランスが保たれるため、木樽を熟成に使う生産者が多いようです。

ステンレス製タンクの成功者

ブドウ畑

このステンレス製タンクを上手く操り一気に知名度を上げた産地があります。それがニュージーランドなのです。ニュージーランドは長らくワインを造るには「寒すぎる」と考えられてきました。英国のワイン評論家ジャンシス・ロビンソンも自身の著書の中でそのことを記しているくらいです。誰も彼の地をワインに向くとは信じておらず、ほとんどのニュージーランド人たちが酪農で生計を立てていたのです。

転機が訪れたのは、1970年代半ばのことでした。きっかけは南島のマールボロ地方でソーヴィニヨン・ブランが彗星のごとく誕生したことです。パッションフルーツが豊に香る白ワインに世界中が仰天したのです。そんな成功を、酪農で生計を立てていたニュージーランド人たちが、指をくわえてただ見ているはずがありません。「あとに続け」と次々と酪農からワイナリー業へと転換し始めたのです。

ところで昨日まで生乳をしていた人たちが簡単にワインを造れるものなのでしょうか。答えはYES。理由は生乳にはステンレス製タンクがつきもので、酪農家たちはそれらの取り扱いに非常に長けていたからなのです。またソーヴィニヨン・ブランというブドウ品種自体が酸化を嫌い、ピュアな果実味をウリとするブドウ品種で、ステンレス製タンクと相性が良かったということがあげられるでしょう。「偶然の賜物」とも言えますが、まさにニュージーランドこそステンレス製タンクの恩恵をうけたワイン産地なのです

最後に

ステンレスタンク

ステンレスというと何かカジュアルなイメージが持たれやすいですが、まさにワイン造りに革新をもたらし、ワイン地図まで変えた歴史的なキーツールなのです。

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