初めて挑戦した知られざる偉大なブドウ品種“タナ”とお料理の相性

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レポート
公開日 : 2017.10.23
更新日 : 2019.6.13
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エノテカのワインバイヤーが、ワイン界で活躍する人々をインタビューしてとことん語り合う企画「ワインバイヤーズトーク」。プロフェッショナルならではの視点で、料理とのマリアージュや最新のワイントレンドに切り込んでいきます。
以前の職場が五反田で、仕事帰りに頻繁にお世話になっていた魚金グループ様。当時から予約が困難で、週末は満席必至のびすとろUOKIN様に再訪問すると、金曜日の夜なのでもちろん満席でもちろんテーブル2時間制。
限られた時間の中で、ワインや料理を語り、写真を撮り、メモ書きすると最大で4品マックスと思いながら、普段はトライしなさそうなお料理を沢山の選択肢から厳選しペアリング。結果的には全てのお料理にワインがピッタリ寄り添い、考え尽くした2時間はあっという間に過ぎ、お店を後にする時には心地よい達成感が湧きました。
目次

フランスの南西地方とは?

フランスの赤ワイン銘醸地といえば、ボルドーやブルゴーニュが代表格。ボジョレー、コートデュローヌ、ロワール、ラングドックを知っていればワイン通で、そこにも名前が挙がらない知られざる産地が南西地方。
なぜかこの一帯だけ呼び名が漢字表記になっており、原語をカタカナにするとスッドウエスト。文字通りフランスの南西部に広がる地域で、特に南部はスペインと国境を接し、一部はフランス側のバスク地方となっているため、こちらの名前の方が馴染みがあるかもしれません。

どんなワイン産地?

大きく分けて、ボルドーに近いベルジュラックではソーヴィニヨン・ブランによる白ワイン、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローによる赤ワインが造られ、東側の内陸に入ると、現在アルゼンチンで知名度を上げつつあるマルベックを主体として造られる濃厚な赤ワイン産地、カオールが広がります。
南側はバスク・ピレネー地区と呼ばれ、個性的な土着ブドウ品種が沢山栽培されており、今回のテーマワインであるマディランのタナ、甘美な極甘口ワインが造られるジュランソンのグロ・マンソンなどが世界的に知られています。

タナとはどんな品種?

タナ:Tannatの名はタンニン:Tanninに由来するほど、色濃く渋いのが特徴。若いうちはブラックベリーやカシスなど黒系果実のアロマが豊かで、グラス2杯ほど飲んだだけでお歯黒になってしまう程の濃度。熟成するにつれ、なめし皮やジビエのような野性的な香りが立ち上り、最上級のタナだと20年以上の熟成を経てもタンニンと酸味が充分に感じられる、長期熟成型の品種です。最近試飲した、シャトー・モンテュス XL 1998年は複雑で濃厚な香りに、ビロードの様に滑らかな果実味が広がり、後から力強いタンニンが現れる味わいで、依然として活き活きとした若さを保っていました。

今回のワイン、シリュスとは?

田舎の荒削りで飲みにくく、世界的な知名度が低かったマディランで高品質なワイン造りに取り組み、世界で賞賛されるワイン産地へと復興させたアラン・ブリュモン氏が手掛けるワイン。名前のシリュスとは、高度の高い場所に広がる”雲”の呼び名で、光の加減で様々な色に変化する事から、多彩な楽しみ方をして欲しいとの意味合いで命名されました。
通常のタナのワイン造りは、熟成に木製樽を使用し味わいの重みを増しますが、このワインはもう少しカジュアルに楽しんで欲しいとの思いから、熟成をステンレスタンクでライトに仕上げるとともに、タナ60%、カベルネ・ソーヴィニヨン25%、カベルネ・フラン15%とカベルネ系をブレンドすることにより味わいにふっくら感を与えています。
なお、日本では“ハリウッドスターが自家用ジェットで買いに訪れるワイナリー”として紹介され一躍有名になりました。
シリュス・マディラン
/ ドメーヌ・アラン・ブリュモン
(フランス)
2,000 円 (2,160 円 税込)
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ワインのテイスティングコメント:
5年熟成とは思えないほど輝きと深みのあるガーネット色。抜栓直後から豊富な香りが感じられ、トースティーで芳ばしく、黒系果実のブラックチェリーや野生の黒苺、そこにスミレの花やスパイスの甘草が混ざる非常に複雑な芳香。味わいのアタックは柔らかくこなれており、タンニンは果実のエキス分に溶け込みバランスが良く、濃厚でたっぷりとしながら様々な要素が完全に調和した味わいです。

飲み頃に入りつつあるワインにフードペアリング!

変ですか?牡蠣に赤ワイン。

もうすぐシーズンインの牡蠣。生牡蠣、牡蠣鍋、牡蠣グラタンなど料理法に事欠かない牡蠣ですが、生の状態であればスパークリングワイン、少し火が入った状態なら白ワイン、揚げ物に合わせるなら赤ワインがお勧めです。
注文した広島県産牡蠣フライは、オリジナルではタルタルソースのところ、お店に無理を言って中口ソースに変更頂いたため、油を程よく吸い込んだ衣に牡蠣本来の塩気が重なり、ソースの甘味が一体化しワイン目線で上質な相性に。
しかし、どこかワインの果実味からくるコクにお料理が負けていたので、再度お店に無理をお願いし、特別にケチャップをご用意頂き、ソースとハーフ&ハーフでミックスした即席ソースを自作。ケチャップによって加えられたトマトのコクと酸味がワインの旨味をグッと引き上げてくれ、衣の油分をサッパリとさせる効果もあり最高のペアリングが完成しました。
※このペアリングをご希望の方は、五反田店でシリュスのボトルと牡蠣フライをご注文頂き、”エノテカのブログを読みました”と店員さんに一言お声がけください。特別にソース&ケチャップをご用意頂けます!

変ですか?オムレツに赤ワイン。

※画像はご使用の再生機器、ブラウザによっては再生できない場合がございます。
普通のオムレツであれば選ばないところ、メニューには”トリュフ風味”の文字が!このワインが造られる一帯はグルメな産地としても有名で、特産物はトリュフ。よく言われる基本のマリアージュは地産地消パターンで、同じ風土で育ったプロダクト同士であれば合うはずだと。そして、この鉄則は正解。オムレツの真ん中に包まれた、キノコとトリュフのデュクセルがワインのフルボディー感に近い重量感で一致。特にデュクセルはバターを使って炒め煮詰めるので、トロッとした粘性と凝縮したキノコの土っぽいアーシーな風味が、ワインの5年熟成からくる腐葉土などブラウンなブーケと調和します。包み込むのが難しい方には、プレーンオムレツを作ってデュクセルを上からソースのようにかけても美味しくペアリングすると思いますよ。

変ですか?魚に赤ワイン。

注文しようかどうか、一番迷ったお料理が鰤トロのステーキ。お魚の中でも大型の部類で、血合いが多く赤ワインに合いそうであわなさそうで。そこで思い出したのが、銀座の鮨からくさんの赤ワインに合わせたスペシャリテ、鰤の照り焼き フォワグラ添え。醤油と味醂の甘辛タレが鰤の身に染み込み、ブルゴーニュのピノ・ノワールに溶け込む絶品ペアリングは、お魚には白ワインでしょ、と言うステレオタイプな観念を払拭してくれます。ただ、今回は赤ワインの中でもタンニン量が多いタナでしたので、疑問符はつきながらもダメもとで試してみると、意外や意外、喧嘩する要素が何もなく口の中で仲良く調和したのです。冷静になぜかと考えると、血合いが多いと言うことは鉄分を多く含んでおり、タナもタンニン同様に鉄分を多く含むのでそこがフィットした。鰤の皮に近い野生的な味わいに、タナ特有のスパイシーで野生の果実味が見事につながった。最後に、噛めば噛むほど旨味が広がる鰤の味わい深さと、5年熟成による柔らかさと深みのある味わいが同調した、が考えられ、改めてペアリングは頭でっかちになってはいけないと思い知らされました。

変ですか?ピザに赤ワイン。

今回のお料理選定で一番迷わなかった一皿。しかし、イタリア食文化にフランスワイン?普段、ピザにはタンニンがそこまで多くないサンジョヴェーゼを合わせているので、タナでは力強過ぎるのでは?と一抹の不安が。ピザの種類はイベリコチョリソーのディアボラで、風味豊かなスペインの豚肉を使ったピリ辛ソーセージにトマトソースの味付け。このピリ辛感が実はワインとの絶妙なコンビネーションを創り上げ、一般的には対比、コントラストと呼ばれる相反する味わいのペアリングは、辛味が舌の味蕾を刺激しながらワインの甘味を増長させ、秘めた味わいポテンシャルを一気に開花させる重要な役割も担ってくれました。分かりやすい例が、スイカに塩を振ると甘味が増す現象と同じです。さらに地理的な背景も考えると、マディランはバスクに属しており、名物のピペラードを始めトマトを使った煮込み料理がポピュラーなので、ワインの味わいにトマトが寄り添うのも納得でした。チョリソー自体がかなりピリ辛なので、ワインの事だけを考えると辛味オイルは使用しない方が無難です。
今回の素晴らしい体験を準備頂いた輸入元様、そしてびすとろUOKIN五反田店様には深く感謝いたします。
店舗情報 UOKIN五反田店
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