あのひとの、特別な日に飲む「ハレ」ワイン、日常に馴染む「ケ」ワイン。ワイン好きで知られるあのひとに、それぞれのワインと楽しみ方を語ってもらいました。
料理家、食育インストラクター。東京都出身。3児の母。 料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修業を重ね、食育インストラクターの資格を取得。まったく料理が出来なかった自身の経験を活かし、生活に寄り添った手軽でおいしい料理が人気を集める。メディアを通じた料理家としての動きを中心に、“食育”や“家族のコミュニケーション”をテーマにした全国各地での講演会やイベント出演、コラム執筆、ラジオパーソナリティーなど幅広く活動中。 現在、毎週火曜22:00~オンエアされているBSテレ東「和田明日香とゆる宅飲み」ではおいしいお酒とおつまみでゲストの方をおもてなし。(TVerでの無料見逃し配信も有)
ハレの日、と書いている今、頭に浮かぶのは子どもたちのあれこれ。入学式の朝にアイロンをかけた小さなワンピース。発表会の緊張をほぐすために買ったぶどう味のグミ。卒業式、両手いっぱいに荷物を抱えた帰り道。なんでもないシーンも大切な思い出として胸にしまっていることに気付きます。ハレの日の子どもたちはいつもよりちょっとだけたくましく、洋服や髪型のおかげもありつつ、確かな成長を感じます。いつの間にこんなに大きくなってたんだろう、という切なさと誇らしさ、これでワインがいくらでも飲めてしまう。子育てを振り返りながら飲むお酒は、本当に、美味しいです。
自分自身のハレの日はどうだったか。振り返ってみても、ただただ楽しくて、終わってほしくなくて、なのにあっという間に終わってしまったのがハレの日で、人生においてそんな日があってよかったね、と、結構さっぱり受け止めています。やっぱりハレの日は、見届ける側になってからの方が味わい深い。でも、そんな私のハレの日を見届けてくれていた人たちもいるのかと、両親のことが浮かびます。
私の両親は家でよくワインを飲む人たちでした。私がワインを飲むようになったのは、味の特徴や料理との相性を覚えたことも理由ですが、家でワインを飲む両親の姿が好きだったからのような気もします。いつも楽しそうに飲んでいたというわけではありません。でもそこが良い。仕事の愚痴や、お互いへの文句をぶつけながら、子どもの私には飲めないワインを片手に、子どもの私には仲間に入れない話をする二人の大人が、結構好きでした。「チリのワインは安くてハズレが少ない」という母の教えは、ワインを覚えたての頃なかなか頼りにもなりました。
結婚した相手の家族も、ワインをよく飲む人たち。みんなが集まる時によく登場するのが、義理の父である誠さんが描いた星座が施されたワイングラスです。映画監督でもあり、映画に関する本もたくさん書いている誠さんは、映画監督のフランシス・フォード・コッポラ氏が造っているワインを教えてくれました。「ディレクターズ・カット」という名前のワインのエチケットには、連続した動きがひとコマずつ描かれていて、映画のフィルムのよう。肝心なワインの味より、教えてくれた誠さんの顔や声が思い出されます。
いつか、子どもたちといっしょにワインを飲めるようになったら、私はきっとまた新しい楽しみを知るのでしょう。ワインを飲みながらじゃないとできないような話を、子どもたちともたくさんしたい。それまでいくつのハレの日を迎えるのか、日常がどう変化していくのか、わからないけど、どんなこともそのうち良いつまみになると思っています。私のハレとケに寄り添ってくれるワインに、これからもたくさん出合えますように。
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