うちの会社の社長は「ヒゲ社長」と呼ばれている。今どき顎ヒゲじゃなくてクチヒゲなのでヒゲ、ということらしいけど、私だったら「男爵」ってあだ名にしてたと思う。そんなヒゲ社長の付き添いでクライアントとのパワーランチとやらに同席することに。
席に着くなり衝撃の瞬間。ヒゲ社長がおもむろに「白ワインを」と頼む。え? ヒゲ? いや、社長? まだ昼ですよ? ヒゲ生やしたら昼からお酒飲んでいいんですか? そんな気持ちが顔全面に出ていたのか、ヒゲ社長が「きみ、ヨーロッパでは仕事中にお酒を飲むこともあるんだよ」と諭す。
ヨーロッパ人は昼からお酒を飲むのか! と、うろたえている間に、私のテーブルのグラスにもワインが注がれていく。晴れた日のテラス席は燦燦と光が降りてきて、グラスに注がれる白ワインをゴールドに輝かせる。
そんな光景にうっとりしていると「このワインはね、牡蠣にぴったり合うんだよ」とヒゲ社長がいう。なるほど、牡蠣単体よりもこのワインと一緒の方がぜったい美味しい。
ヒゲ社長といえば、夜にへべれけになっているところしか見たことがなかったけど、仕事の打ち合わせをしながら太陽の下でワインを飲むヒゲ社長は、ちょっと大人感が増す。赤ら顔で酒を飲んでるのは夜と変わらないのに、太陽ってすごい。
私にとってお酒は1日の終わりのサインだ。だから昼からお酒なんて、いろんな意味で「終わってる」としか思えなかったけど、昼ワイン、やってみたら罪悪感なし。むしろ美味しい牡蠣と白ワインで、なんか元気出た。このあとの仕事も頑張れそうな気がする。ありがとうヒゲ社長! ありがとう昼ワイン!
イラスト:白井瑶さん
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