わけても美しき色葉散る野山の錦、末枯野の寂びた美しさに、秋の深まりと冬の訪れを感じています。神戸三田店の藤原です。
山の幸が美味しくなるこの時期は、つい山のものと相性がいいワインに手が伸びてしまいますね。
私の中で山の幸と相性がいいワインといえば、イタリア、ピエモンテ州の銘酒「バローロ」です。
私がワインの世界に足を踏み入れた時、このバローロというワインに大きな憧れを抱いていました。
色調が薄く優雅な香りでタンニンが強靭だとか、「王のワイン、ワインの王」というキャッチコピーであるだとか、とても興味を惹かれたことを覚えています。
非常な興味を持って購入した最初のバローロの味は、美味しいけど正直なところよくわからないというのが素直な感想でした。表現する言葉を持たず、十分に楽しむための知識もなかったことが原因だと思い、以来たくさんのバローロを試してきました。
私がもしあの頃の自分にバローロの良さを伝えるとするならば、このバローロを勧めたい。そんな1本があります。エルヴィオ・コーニョが造る「バローロ・カッシーナ・ヌオヴァ」です。
時とともにうつろう香りと味わい、緻密な酸と多層的な構造がバローロの「良さ」だと思っています。
このワインはそういった時間の経過とともに変化する要素を比較的すぐに体感できるスタイルで、鮮烈な酸があって香りの閉じた段階、花や土などの要素とタンニンが楽しめる段階、触れただけで崩れ落ちそうなほど爛熟しきった果実や、複雑な香りと長い余韻が楽しめる段階に抜栓後1時間ほどで混合的かつ段階的に変化していきます。
過去の私はやみくもに何度も デキャンタージュをしてしまったり、開いていない段階で飲んでしまったり、表出していない香りを必死に探していました。
しかしグラスに注いですぐに、そして顕著に変化を見せるこのワインなら、あの頃の自分でもバローロの「良さ」に触れることが出来ると思うのです。
こちらのバローロはトリュフのリゾットと合わせて楽しみました。ワインの土やキノコの香りによりリゾットに入っているトリュフの香りがチラチラと顔を覗かせてくるため、食事もワインも止まらなくなる組み合わせでした。
また、リゾットの土めいた香りはバローロの赤系果実の印象を引き出し、ワイン単体で楽しむときよりもワインの表情がよくわかります。わかり切った組み合わせですが、やはりバローロにはキノコですね。
いつもよりちょっと長い余談なのですが、私を酒の世界に引きずりこんだ大学時代の恩師とお酒を飲む機会があり、その時に「バローロを飲むとき、僕は3時間バローロに捧げることにしているんですよ。味わいの変化が時とともにあらわれていくさまがつぶさに感じ取れて、バローロと語り合う時間が楽しいんです」と力説したら、「きわめて呪術(まじない)的である」と評されました。
文学博士曰く、バローロは呪術的らしいです。それ以降私はバローロを楽しむとき、「うーん、呪術的だなあ」と言っています。
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