「王のワインにして、ワインの王」と称されるバローロ。
近年は、テロワールの個性を如実に反映した単一畑バローロが注目を集めるなど、村や畑ごとのスタイルの違いが広く普及しています。そのような基礎を築いた造り手こそがレナート・ラッティです。
そんなレナート・ラッティを、今年7月にエノテカスタッフが訪問!
地球温暖化への対策や最新ヴィンテージの特徴について、オーナーのピエトロ・ラッティさんに聞いてきました!
レナート・ラッティとは
レナート・ラッティは、バローロ五大産地の一つとして知られるラ・モッラ村に本拠地を構える家族経営のワイナリーです。
現オーナー・ピエトロ氏の父であるレナート氏は、今世紀のイタリアワインビジネスの中で最も重要な人物の一人。
1965年にマルチェナスコの単一畑で収穫されたブドウを使用して最初のワイン造りを行ったことからスタートしました。
また、ピエモンテやイタリア国内の原産地呼称(D.O.C.、D.O.C.G.)の制定にも関わる他、イタリア貿易協会と共に世界中でイタリアワインの啓蒙活動を行うなど、ピエモンテワインだけでなくイタリアワインの発展にも大きく貢献。
作家としてもピエモンテワインの歴史やワインテイスティング、イタリアワインに関する著書を10冊以上出版しました。
多くの功績を残したレナート氏ですが、中でも以下の三つの功績は、現在のバローロに大きな影響を与えています。
クリュの概念の確立
今では広く浸透している単一畑バローロの概念。それを確立したのがレナート氏です。
彼は膨大な時間と調査を重ね、バローロ・クリュ・マップを作成。クリュごとのテロワールや、そこから生まれるワインの個性の違いを認識し、44のクリュと私的見解に基づいた格付けを制定しました。
ヴィンテージ・チャートの導入
以前のピエモンテでは古ければ古いほど良いワインとされていました。そこでレナート氏はバローロにこのヴィンテージの概念を持ち込み、各ヴィンテージの特徴や評価を記した独自のヴィンテージ・チャートを作成。
彼の功績により、現在ではヴィンテージの概念が深く根付いています。
「アルベイサ・ボトル」の復活
ピエモンテ地方独自のボトル「アルベイサ・ボトル」。18世紀末、1本1本手作業により作られたこのボトルはボトル製造の工業化に伴い、徐々に姿を消していきました。
レナート氏は、1973年、アルベイサ・グロワーズ・アソシエーションを設立し「アルベイサ・ボトル」を復活させることに成功。今では多くの生産者がこのボトルを使用しています。
そんな偉大な功績を残した父の跡を継ぎ、レナート・ラッティのワインをさらに進化させているのが、現オーナーのピエトロさん。
父のように歴史やテロワールを尊重しながらも、更なる品質向上を目指し、栽培から醸造まで一貫して行うドメーヌ型のワイン生産を行っています。
Topic1 地球温暖化への対策
今やワインの世界に大きな影響を及ぼしている地球温暖化。レナート・ラッティの畑においてもその影響は大きく、栽培面と醸造技術面の両方で適応するのに苦労したと言います。
そこでレナート・ラッティでは、各区画へのアプローチを変えることが必要と考え、研究を重ねてきました。
昨年はリサーチに多くの時間を費やし、ドローンで畑を撮影したり、様々な実験を試みたそう。
これらの取り組みについてレナート氏は、「非常にチャレンジングなことですが、非常にエキサイティングでもあります。ブドウ樹が強く反応するところを見られるからです!」とコメントしています。
レナート・ラッティでは、地球の変化に柔軟に対応しながら、さらなる品質向上を目指しているのです。
Topic2 伝統的技術×近代的技術
近年、レナート・ラッティでは近代的技術と伝統的技術を、より"組み合わせる"ようになってきたと言います。
古くからフランスなどで実施されていた方法で、タンニンをまろやかにする効果のあるサブマージド・キャップ(※)を採用し、さらに1時間ごとのポンピング・オーバーを20日間行い、果汁を循環させています。
また、熟成には伝統的な大樽に加えて、近代的なフレンチオークバリックの小樽を使用。オークの種類とサイズについては、それぞれの畑がベストに表現されるように変えているとのこと。
伝統的な醸造技術に近代的な醸造技術を取り入れたワイン造りをおこなうことで、エレガンス、フィネス、熟成ポテンシャルを備えた味わいのワインが生み出されているのです。
※赤ワインの発酵過程において、発生する二酸化炭素の泡で浮かび上がるブドウの果皮を、上から網で押さえつけて沈める方法。
Topic3 最新ヴィンテージ2018はどんな年?
今回の訪問では、フラッグシップキュヴェであるバローロ・マルチェナスコの最新ヴィンテージ2018をはじめとしたワインをテイスティングすることができました。
ピエトロ氏いわく、2018年は「レナート・ラッティが造ってきた中でも最もエレガントで飲みやすいヴィンテージの一つ」とのこと。
エレガンスと複雑さを備えた"ラッティ・スタイル"が、見事に体現されたヴィンテージと言えるでしょう。
また、過去のヴィンテージと比較すると、2008、1998、1988年を彷彿とさせるそうで、「ひょっとしたら10年ごとに同じようなスタイルが来るのかもしれないですね」とピエトロさん。
こんなことを聞くと、2028年ヴィンテージもエレガントなスタイルに仕上がるのか、今から気になってしまいます。
マルチェナスコに関しては、今から楽しむのはもちろんですが、4~5年程度熟成させるのがおすすめ。上級キュヴェのロッケ・デッラヌンチャータはさらに数年熟成させてからお楽しみください。
まとめ
現代のバローロに大きな影響を与えているレナート・ラッティ。
その背景には、ブドウに真摯に向き合う姿勢と、さらなる進化への飽くなきチャレンジがあるのだということを今回の訪問を通じて感じることができました。
みなさんもレナート・ラッティのワインをぜひ試してみてくださいね。
レナート・ラッティのワイン一覧