「ワインの大地」の起源!イタリア・カラブリア州で造られるワインの魅力

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公開日 : 2020.7.10
更新日 : 2022.5.23
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イタリア半島をブーツに例えると爪先の部分にあたるカラブリア州。

南イタリアの他の州同様、ワイン造りの歴史は古いものの経済的な発展は遅れており、世界はおろかイタリア国内においてもカラブリア州のワインや食文化の知名度は低いと言わざるをえません。

しかし最近、これまでほとんど地元で消費されてきたカラブリアの土着品種を使って造られるワインが少しずつ世界で注目を集めるようになってきました。

カラブリア州のワイン造りは今、どのように変化しているのでしょうか?

目次

カラブリア州ってどんなところ?

イタリア半島の南端にあるカラブリア州は南北に細長い州で、北はバジリカータ州、南西はメッシーナ海峡を隔ててシチリア州に接しており、東はイオニア海、西にはティレニア海が広がっています。

バジリカータ州との州境にはポッリーノ山塊、州の中央にはシーラ高原、南端にはアスプロモンテ山塊があり、丘陵が49.2%、山岳が41.8%を占め、平地は9%で海岸沿いの僅かな地域に限られています。

カラブリアは古代ギリシャ人がこの地の海岸線沿いに入植して以来、ローマやビザンティン、ノルマン人、スペインなどから支配を受け続けてきた歴史があり、今でも州内の五つの県にはそれぞれ違った文化や風習が残っています。

州都カタンザーロはビザンティン勢力が山腹に建設した街で、シチリア島との間を隔てるメッシーナ海峡に面し、州最大の人口を有する都市レッジョ・ディ・カラブリアは、古代ギリシャ人が築いた都市の一つです。

カラブリア州の海沿いの地域は温暖な地中海性気候で、西のティレニア海側は東のイオニア海側より温暖です。また、内陸の山岳地帯は冷涼で昼夜の温度差が激しい大陸性気候となっています。

ティレニア海沿岸では温暖な気候を利用して昔から柑橘類が多く栽培されてきました。また、カラブリア州はオリーブ栽培も盛んでオリーブオイルの生産量はプーリア州に次いでイタリア第2位となっています。

カラブリアは「ワインの大地」

古代ギリシャ人によってブドウ栽培が始まったカラブリアは、紀元前6世紀以前には「エノトリア・テルス」すなわち「ワインの大地」と呼ばれていました。

ギリシャ人が、青い海と空を背景に広がる海岸沿いのブドウ畑を讃えてそのように呼んだと伝えられています。

ギリシャ人がイタリアのことを「ワインの大地」と呼んでいたのは、ここカラブリアが由来するのです。

古代からカラブリアのワインの名声は非常に高く、他の地域に先駆けてワイン文化が開花していました。そのため、ギリシャ人はカラブリアのワインを重用し、古代オリンピックの勝者にはカラブリアのクリミサのワインを与えました。クリミサのワインは今日のチロの祖先であるとされています。

カラブリア州で造られるワインについて

カラブリア州ではワイン生産量のおよそ7割を赤ワインが占めています。

特に州の東のイオニア海側では古くから力強い赤ワインが生産されてきました。

また、カラブリアは土着品種の宝庫で、白ブドウのグレーコ・ビアンコ、モントニコ、黒ブドウのガリオッポ、マリオッコ、グレーコ・ネーロなどが多く栽培されており、近年その潜在力が改めて注目されています。

チロ

カラブリア州を代表するワインで、州北東部のイオニア海沿岸のチロ・マリーナや、海岸に近い丘陵地帯のチロで生産されています。この近辺は昼と夜の温度差があり、石灰泥土土壌でブドウの栽培に適しています。

しかも、湿気が少なく風が強いことから乾燥しており、カビや病気の害も少なく農薬をほとんど使わずに健康なブドウが育つのです。

チロにはビアンコ(白)、ロッソ(赤)とロザート(ロゼ)の3種類のワインがあり、ビアンコはグレーコ・ビアンコから、ロッソとロザートはガリオッポから造られます。3種のワインの中で圧倒的に知名度が高いのがチロ・ロッソです。

ロッソとロザートの原料となるガリオッポはカラブリア州で最も多く栽培されている黒ブドウです。ギリシャ語で「美しい足」という意味があり、ブドウの茎部が美しいためにこの名がつけられたと言われています。

とりわけ乾燥した土地で繁茂し、糖度の高い果実からタンニンの豊かな力強いワインが生まれます。また、同時に繊細な酸も合わせもつことから、10年程度の熟成も可能です。

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グレーコ・ディ・ビアンコ

州の先端のシチリアに近いイオニア海側のビアンコ村で造られる甘口ワイン。グレーコ・ディ・ビアンコの「ビアンコ」は、原料となるブドウ品種グレーコ・ビアンコの白ブドウという意味だけでなく、生産地域のビアンコ村にも由来しています。

収穫されたブドウは乾燥させ糖度を上げた後、発酵させます。熟成させるとアーモンドやオレンジの花の香りが現れ非常に優美な甘口ワインになります。

しかし、残念ながら生産量が極めて少ないため、入手するのは非常に困難です。古代の名称であるグレーコ・ディ・ジェラーチェを名乗る場合もあります。

カラブリア州のワインの現状

地理的に辺境にあること、交通の便が悪いことなどから経済的な発展が遅れているカラブリア州は、20世紀後半の世界的なイタリアワインブームに乗り遅れ、ワイン造りにおいても出遅れてしまいました。今現在もカラブリア州にD.O.C.G.ワインは一つもありません。

しかし、他の地方よりもかなり遅れてはいますが、志の高い生産者の努力の甲斐あって、近年、カラブリア州のワインの品質は向上してきています。

チロ・マリーナに本拠地を置くリブランディ社はカラブリア州のワイン界を牽引するワイナリーで、イタリアワインの評価本「ガンベロロッソ」でも高い評価を得ています。

創業当時の1950年頃、カラブリアではワインは樽から量り売りするのが一般的でした。ワイン造りに十分な投資ができない小さな農家が多いチロで、リブランディ社はカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなど国際品種を使ったワインで成果をあげつつ、地元固有のブドウ品種の研究やクローン選別を長年進めてきました。

そういった事業は後継者にも確実に引き継がれ、今、若い世代の生産者達の努力の成果が少しずつ表れてきています。特に潜在能力の高いガリオッポやマリオッポといった土着品種は、これからもっと素晴らしいワインになる可能性を秘めているのです。

まとめ

カラブリアといえば唐辛子を使った料理が有名です。異国に支配され貧しい暮らしを強いられた時代に、人々が唐辛子を使って保存食を造ったのが始まりで、唐辛子の入ったサラミ「ンドゥイヤ」や、シラスを唐辛子と塩で漬けたソース「サルデッラ」は地元の定番料理です。

そんなカラブリア名物の辛い料理に、現地の人々は当たり前のようにチロ・ロッソを合わせて楽しんでいます。赤ワインの果実味のあるしっかりとしたアタックにスパイスのニュアンスが加わり、唐辛子の辛みを和らげてくれるのだそうです。

一般的に辛い料理とワインを合わせるのは難しいと言われますが、唐辛子を使った料理とカラブリアの赤ワインのペアリングは是非とも試してみたいですね。

参考文献 ・日本ソムリエ協会 教本 2020

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