【バイヤーが語る】テロワールの表現者タルデュー・ローランの魅力

ワインの品質評価基準の一つに、テロワールを表現できているか?というポイントがあります。そして、それを感じるのはワイン愛好家のもっぱらの楽しみでもあります。

テロワールというと、条件反射的にブルゴーニュを想像される方も多いですが、ワイン産地であればどこにでも在るもの。今回は、ネゴシアンスタイルでローヌのテロワールを忠実に表現する、タルデュー・ローランの魅力を担当バイヤー栗木に語ってもらいました。

タルデュー・ローランとの出会い

栗木

―まずは栗木さんのキャリアを教えてください。

中学生の頃に親の仕事の都合で4年間アメリカに住んだことがありまして、そこで海外の文化と触れ合ったり、日本の文化を教えたりするのが楽しかったんです。だから大学に入ってからも夏休みに国際ボランティアに参加して、様々な国の人たちと一緒にフランスの小さな村のボランティアなんかをしていました。

食文化とかワインともそこで触れ合って、そういった文化に触れた仕事がしたいなと思い、エノテカに2011年新卒入社しました。最初の1年間はショップ勤務をして、翌年の夏から今の部署に異動になりました。

最初の2、3年はワインの船積み手配をして、その後ニューワールドのワイナリーのブランドマネジメント業務なんかも経験し、約5年前にフランスの小規模生産者と関わる現在のチームに配属されました。

―それで現在タルデュー・ローランの担当なんですね。どんな生産者ですか?

今のチームに配属されて、初めての仕事がタルデュー・ローランの当主ミシェル・タルデューさんのアテンドと通訳でした。当然初めてお会いしたんですけど、本当にめちゃくちゃ良い人たちなんですよ(笑)

その時は家族3人で来ていたんですけど、ずっと笑顔で誰に対しても思いやりのあるファミリーでした。ペーぺーだった私にも本当にフレンドリーで、今まで色々な生産者に会いましたけど、こんなに良い人たちいないっていうくらい、太陽のように明るくてチャーミングな方たちなんです。

アテンドの仕事が終わった後に、タルデューファミリーと一緒に渋谷ののんべい横丁のお店に行ったのを今でも覚えています。そこはタケノコなど色々な日本の食材を目の前で調理してくれるお店で、カウンターでぎゅうぎゅう状態の中、これはあーだこーだいいながら気取らない食事をしたのが忘れられません。

―元々エノテカとタルデュー・ローランが出会ったきっかけってなんですか?

実は、ラフォン家のブルーノ・ラフォンさんが紹介してくれた生産者なんです。

ラフォン家ってブルゴーニュの、あのラフォンですよね…?

そうです。ドメーヌ・デ・コント・ラフォンのラフォン家です。ドメーヌでのワイン造りは兄のドミニク・ラフォンさんがやっていて、弟のブルーノさんは南フランスでネゴシアンをされていて、エノテカに素晴らしいローヌの生産者を紹介してくれているんです。

廣瀬会長はいつも、「ブルーノはいいワインを見つけるのが本当に上手だね」と言っています。

信頼があるブルーノさんとは長年付き合いもありますし、早速社内でテイスティングしてみて、まず美味しい!というのが全員一致の感想でした。エレガンスさとミクロネゴス(注1)で色々なアペラシオン揃えているという、今までのエノテカのワインにない面白さもあったのでぜひやろうと決まりました。

ブルーノさんの仲介もあったので、取引もスムーズにいき2014年からエノテカでの取り扱いが始まりました。

(注1)小規模なネゴシアンのこと。

タルデュー・ローランの魅力

―タルデュー・ローランのワインの魅力を教えてください。

ありきたりだけど…。彼らのエレガントなスタイルが魅力です。

ローヌのワインはよく重すぎたり、甘すぎたりしますが、そういうワインって食事にも合わせにくいし、段々と飽きたりしてしまいます。でもタルデュー・ローランのワインはそういうことがなくて、ほんとにエレガントで食事にも合わせやすいのは魅力だと思っています。

あとクリスチャン・ムエックスさん(注2)も、「ワインって人間のエゴじゃなくてテロワールを表現するものなんだよ」と仰ってたんですけど、自己表現というより、本当に謙虚に各アペラシオンのテロワールを表現しようとしている生産者なんだなと感じます。

やっぱり人柄なんでしょうか?謙虚さが味からも伝わってくる。ミクロネゴシアンって、ようは契約なのでブドウ栽培者との関係性が大事なんですが、このファミリーだからこそトップ栽培者との関係も築けて、長い間契約を続けていられるのかなとも思いますね。

(注2)ペトリュスを育てあげるなど、数々の右岸シャトーを手掛けるボルドーの巨匠

―今や各方面で評価されているタルデュー・ローランですが、ミシェルさんが元々はただのワイン愛好家だったというのは本当ですか?

はい、そうなんです。

ワインはずっと好きだったみたいですけど、確かお父さんが早くに亡くなったため若い頃から働きはじめて、代議士の運転手を20代のころから13年間やっていたそうです。運転手の仕事って結構待ち時間があって、その時間に色々な本を読み漁ってワインの勉強をしたと語ってました。

そんな中でブルゴーニュの生産者ドミニク・ローラン氏と出会い、きっと彼もミシェルさんの人柄にほれ込んだんじゃないかと思うですけど、ずっと夢だったワイン造りを一緒にやらないか?と誘われてタルデュー・ローランを立ち上げたそうです。

来日した際のスタッフ向けセミナーでも、「周りから高く評価されているミシェルさんのテイスティング能力はどうやって身につけたんですか?」という質問に対して、才能ではなく努力して身に着けるものだ、と答えていたので凄い努力家なんだと思います。

元々ワイン造りをしていた家系とかでもなく、裕福な家柄とかでもないので、そういう熱意がないとこんな大変な仕事を中々始められないと思います。

―凄いサクセスストーリーですね…。

ローヌワインのすすめ

栗木おすすめのエルミタージュ・ブラン

―そんなタルデュー・ローランから栗木さんおすすめの1本を教えてください!

これかなり迷って(笑)

ローヌって赤ワインのイメージが強いですけど、個人的に白ワインが好きだし、すごく美味しいと思うので白ワインを紹介させてください。エルミタージュ・ブランです。

ローヌの白ワインの生産量は、全体の10%以下で本当に少ないんですよ。でも、ブルゴーニュのグランクリュと比べられるような素晴らしい白ワインも沢山あるので、ぜひおすすめしたくて。

華やかで、シャルドネとはまた違ったキャラクターの素晴らしい白ワインなんです。エルミタージュ自体も137haとすごく小さいアペラシオンで、その中の白だからもっと稀少。エスニック料理、特にパッタイなどの甘みがある食事にも合いますし、もちろん単体でも楽しめます。ぜひローヌの白ワインを試してみてください!

―ローヌの白ワイン、おいしいですよね。それでは最後に、読者のみなさまに一言あれば…。

温度が高いと重たくなっちゃってダレるんですよ、ローヌのワインって!

なので、みなさんが思っているより少し冷やしめで飲んでほしいです。赤ワインは常温、という認識でグルナッシュとかシラー飲んじゃうと「重た!」みたいになってしまうけど、本当はそんなことはないんです。

 

ローヌ愛いっぱいで語ってくれた栗木バイヤー、どうもありがとうございました!

ワイン愛好家なら一度は夢みる「自分でワインを造ってみたい」という願望を、努力と人間性で叶えてしまったミシェル・タルデュー氏のストーリー。なんだか少し憧れてしまいました。