エノテカのワインバイヤーが、ワイン界で活躍する人々をインタビューしてとことん語り合う企画「ワインバイヤーズトーク」。プロフェッショナルならではの視点で、料理とのマリアージュや最新のワイントレンドに切り込んでいきます。
初回となる今回は、日本において割烹×ワインというジャンルを作ったパイオニア、六本木の割烹小田島より二代目の小田島大祐さんを招いて、和食とワインについて語り合いました。
目次
割烹×ワインのパイオニア
バイヤー:
本日はありがとうございます!「同世代で活躍中の業界人とワインについてとことん語り合う」というのがこのトークのテーマです。記念すべき第1回目は、割烹×ワインのパイオニアとして知られる六本木の割烹 小田島の二代目であり旧知の仲の大ちゃんをお招きしました。でも今回が不発だったら2回目はないので責任重大ですね(笑)
小田島:
緊張します(笑) よろしくお願いします。
バイヤー: 大ちゃんは和食だけでなくワインにも本当に造詣が深いですよね。ブルゴーニュとイタリアに滞在して生産者のもとを回っていたし、アカデミー・デュ・ヴァンではソムリエの大越さんとワインペアリングの講座を開催していたこともあったとか。
毎年のように海外に出かけてはワインの最新情報を仕入れつつ、やわらかい頭でいつもおもしろいペアリングを提案してくれる。本日は、和食とワインの相性をとことん追及している大ちゃんならではの視点でワインを語っていただきます!
ふくよかなワインには丸みのあるグラスを
バイヤー:
早速ですが、今日は和食に合うワインを用意しました。 こちらはイタリア・フランチャコルタ地方で造られるスパークリングワイン。 トップ生産者として有名なベラヴィスタのアルマ・グラン・キュヴェです。
フランチャコルタはまだまだシャンパーニュと比べて知名度は高くないけど、昨年あたりからよくメディアに露出するようになったし、レストランでも見かけるようになりましたね。
こちらはスタンダードキュヴェですが、なんと規定の2倍以上、4年以上も熟成させて仕上げるワイナリーの名刺代わりの1本。並みのシャンパーニュの品質は軽く超えるおすすめのスパークリングワインです。
ところでスパークリングワインだけどこの大きめのグラス、いいですね!
小田島:
アルマ・グラン・キュヴェは果実味がたっぷりあってふくよかな味わいなので、縦長のフルートタイプではなくこちらの木村硝子のサヴァを使用します。ふっくらしたグラスで飲むと味わいがいっそう膨らみますよ。実はうちのお店ではほとんどのワインをこのグラスで出してます。
あえてレモンはかけない
タラの芽の天ぷら
小田島:
ではこのアルマ・グラン・キュヴェに合わせて最初の一皿を。タラの芽の天ぷらです。 ワイン自体に柑橘系のアロマや酸味があるので、あえてレモンはかけずに塩だけでどうぞ。
バイヤー:
一般的には柑橘系の香りがあると料理にも添えたくなりますけどね。自宅だと生ガキにレモンを絞ってスパークリングに合わせるのも好きですし、 鶏のから揚げとかにも柚子を振って楽しみます。でも今回の”あえてレモンはかけない”に補完マリアージュがあり素敵です。
そして、食材は今からおいしくなる木の芽ですね!・・うん、噛むとタラの芽の甘みと苦みが口いっぱい広がって、ワインの酸味が後味を引き締める。 これは立体感のあるマリアージュですね!
小田島:
このアルマ・グラン・キュヴェは味わいがとっても穏やかで、泡のキメが細かいですね。実は今回の対談前に自宅で試飲したのですが、鯛しゃぶと合わせるとあまりにもスムーズな口当たりで、軽く1本あっという間になくなっちゃった(笑)。
バイヤー:
確かに鯛しゃぶ合いそう!日本の魚は脂が乗っているのでさらっとお湯に通してヘルシーにしてから食べる方が個人的には好きだし、その方がワインに合いますね。本当に1本飲んじゃいそう(笑)
発酵食品はワインに合う
山ウドのフキノトウ味噌和え 蕗の薹を柔らかく茹で、ミキサーで細かくし、味噌、みりん、砂糖 同量を合わせたものに混ぜ合わせる。これを皮をむき茹でたウドにかける。
小田島:
続いては、山ウドのフキノトウ味噌和えです。山ウドをだし汁で炊いたものに、 フキノトウをゆでてミキサーにかけて味噌と合わせたものをかけてみました。
バイヤー:
すごい!これは風味が強いですね。ワインは発酵飲料、味噌は発酵食品だから発酵つながり(笑)。うまみがよく合うんです。個人的にはサワラの西京焼きに白ワインを合わせたり、豚肉の味噌漬けにロゼや赤ワインを合わせたりするのが好きです。
小田島:
それも良さそうですね。カブの粕漬けなんか白ワインに合いますしね~。私はよく粕漬けをアテにワインを飲んでます。
バイヤー:
それにこのゴマ感がいい!
小田島:
ゴマは香ばしさをプラスしてくれます。 ウドもフキノトウ味噌も風味は強いけど、しっとりとした食感とワインの果実味がぴたりと来ますね。これにレモンやユズの皮をおろしたものをかけて、柑橘系の香りをつけるのもおすすめです。
ワインのミネラルとヨード感を合わせる
ハマグリの吸い物水洗いしたハマグリを鍋に入れ浸かる位の酒を入れて煮立たせる。貝が開きしばらくしたら取り出し、かつおだしを加え味を調える。仕上げにわかめ、菜花、刻み柚子を添える。
小田島:
続いてハマグリの吸い物を用意しました。 やっぱり貝類はシャンパーニュやスパークリングワインなどミネラルのあるワインによく合いますね。
バイヤー:
うん。この貝のヨード感が完璧な相性!ヨード感って”磯っぽさ”。海に行って磯に立つと薫る塩っぽくも海苔っぽい感じ。このアルマ・グラン・キュヴェのブドウが造られる一帯は、大昔海中にあって地殻変動で隆起した土地なので、もともとは海底。だから海つながり(笑)。塩っぽさがよく合うんです。しかもアルマ・グラン・キュヴェは温度が上がってきて今13℃くらいだけどこれがまたよく合う。 ワインと料理の温度が近いって大切ですね。
小田島:
男と女も温度差があると、ね・・・(笑)。
バイヤー:
大ちゃんは夫婦円満そうだから温度差なしだね。
ちなみにこれだけ温度が上がってもおいしいスパークリングワインはなかなかない。100%自社畑のブドウで丁寧に造られているフランチャコルタならではですね。
食事との相性を考えると、シャンパーニュよりフランチャコルタ
バイヤー:
一緒に添えられたワカメもヨード感が強いけど、本当によく合う。大ちゃん天才ですか?
小田島:
・・ただワインが好きなだけです(笑)
ミネラルの強いワインに合わせる料理にはワカメを添えることが多いですね。
実はフランチャコルタをあんまり真面目に飲んだことはなかったのだけど、 和食にとても合わせやすいことがわかって驚きました。 シャンパーニュより合わせやすいかも。シャンパーニュはやっぱり骨太で自己主張が強いから、食前に飲んで存在感を出すのはいいのだけど、 食事との相性を考えると、フランチャコルタの方が考えやすいかもしれませんね。
バイヤー:
確かに。フランチャコルタはシャンパーニュと比べて酸が穏やかで、ガス圧が低めのものも多いから、繊細な和食の風味を生かせるのかもしれませんね。でも僕も大ちゃんもシャンパーニュは大好きなので、最初はシャンパーニュ飲んで食中はフランチャコルタ、締めにシャンパーニュ、 なんて楽しみ方もいいかも。
後編はボルドーの白ワインをご紹介します・・・お楽しみに!(3月更新予定)
小田島 大祐(おだしま だいすけ)
割烹小田島 二代目。 1973年東京生まれ。南イタリア・プーリア州、フランス・ブルゴーニュ地方のワイン生産者にて各1年ずつの研修でワインを学び帰国。2004年より「和食とワイン」のパイオニアである父・小田島稔と共に六本木の割烹 小田島で働く。JSA認定ソムリエ。割烹小田島 著書「ワインがすすむ やせつまみ: 割烹小田島流 相性の良さを味わう至福の晩酌セット80」
今回ご紹介したワイン
フランチャコルタ・アルマ・グラン・キュヴェ
/ ベラヴィスタ
(イタリア ロンバルディア)
通常価格 5,000 円 (5,400円 税込)のところ
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