文学ワイン会「本の音 夜話(ほんのね やわ)」 小説家・島田雅彦さん登場!

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レポート
公開日 : 2017.4.6
更新日 : 2018.10.23
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日、第11回文学ワイン会「本の音 夜話」がワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー・エノテカ・ミレで開催され、小説家の島田雅彦さんにゲストでお越しいただきました!
「バッカス島田(笑)。跋扈(ばっこ)しますからね。イタリア語では “バッコ”(=バッカス)ね」と島田さん。お酒の神を目指していらっしゃるのでしょうか?
「“バッコ”は単に飲むだけでなく、その場をかきまわすんですね。何か膠着した状態に対して、ある種のインスピレーションをもたらすような存在を意識しております。言うなればトリックスターに近いような。物書きにはそういう役割があるものと、ずっと信じてやってきています」
バッカス島田さんのご挨拶をお聴きしながら、1杯目に、イタリアのプロセッコの名門として知られる「ビソル」のクレーデをサービスさせていただきました。
クレーデ / ビソル(イタリア ヴェネト) 発泡白 ¥ 2,500 円 (2,700 円 税込)
イタリア最高の造り手100社に選ばれるプロセッコの名門。3年もの期間をかけて造り上げる、豊かで調和のとれた、ワンランク上の仕上がり。

ご発声は、島田雅彦さん流「人道に乾杯!」

「昨今リベラル派の人間にとって、生きづらい世相になってきました。けれども、私どもは個々に誠実であればよい、個々にちゃんと人道にのっとって暮らしていけばよいのです。それが基本的に日本の民度を上げているのですから。という、もっとも原則的なことをご確認・共有させていただきまして乾杯いたしましょう。では、人道に乾杯!」との島田さん流のご発声をいただき、会はスタートしました。
『酒道入門』というご著書もある島田さん。実際、昔は茶道と同じように“酒道”もあったそうです。
「酒の道といいますけど、基本的に武士は飲んだくれないものなんです。飲んだくれていたらやられちゃうでしょ。だから酒を飲んでいるのは浪人。なので最初からやさぐれが入っているのかもしれないですね。実際、物書きが酒豪というか、酒飲み、酔っ払いだっていうイメージはいつからかというと、これは無頼の時代からですよ。つまり戦後から。戦前に例えば明治文壇、大正文壇の方々が遊ぶといった場合は、芸者遊びであって、酒はほどほど。というかほとんど飲まない。飲んだくれの光景が文学に出てくるのは基本、戦後です。文士の強烈なイメージというのはたぶん焼け跡以降のものだと思います」
なるほど、作家とお酒が結びつくイメージは、意外や、戦後に形づくられたものなのですね。

文明が滅亡した後を描く、『カタストロフ・マニア』について

そうしてワイングラスを傾けつつ島田雅彦さんにお話いただいたのが、去年から今年の初めにかけて『新潮』で連載された最新長編小説『黎明期の母』について。5月末に『カタストロフ・マニア』と改題され刊行予定です。
「善意や人道、こういうものは共有されているはずだと思うのですが、今、どうやらされていないんですね。こういう原理原則をもう1回再構築しないといけない時期にきている。これはある意味文明の崩壊だと思います。そうしたことを前提としている文明が滅亡していると思った。だからこの小説の設定として、文明が滅亡したあとのビヘイビアのことを書こうと思ったんです」
『カタストロフ・マニア』では、シマダミロクという青年を主人公に、すべての文明が停止したカタストロフ後の世界と人々の暮らしが描かれます。これは、島田雅彦さんなりに震災や戦争のあとを見据えた作品となっています。
「私たちは本当に知ったはずなんです、3月11日以降、震災のあとに。一時的に震災ユートピアみたいなものがあったし、あの瞬間から何ヵ月間は、我々はとてもいい人だったのではないでしょうか。我々が発揮した、お互いに助け合おうとした善意を忘れるべきではないんです。ここが原点であり、信じてよいだろう。何が起きてもここを原点に始めれば、たぶんすべてはうまくいくはずだ。だから滅亡しても何も恐れることはない、ということを申し上げたいのです」
お話されながら景気よく杯を重ねられ、言葉も次第に熱を帯びていきます。 島田雅彦さんが一緒にワインを飲んだ、文学史にも残る著名な作家の方々との交流秘話をはじめ、青春小説から現代社会の考察まで、限られた時間ながら幅広いお話をしていただきました。なかには教育についてなど、ハッとさせられるお話も多く飛び出しました。
軽妙なユーモアをまぶしながらの、島田雅彦さんの透徹したお話は、ときに真面目で、ときに辛辣。たまに飛び出す爆弾トークに笑わされながら、島田雅彦さんのお人柄にも、ワインにも酔いしれる一夜となりました!
『新潮』2016年2月号
最新長編小説『カタストロフ・マニア』(『黎明期の母』を改題)を新潮社より5月31日に発売予定。
 
ワインショップ・エノテカ 銀座店 カフェ&バー エノテカ・ミレ
東京都中央区銀座6-8-3 銀座尾張町 TOWER 2階
TEL 03-3573-1531 / FAX 03-3573-1532
E-mail Ginzasec_shop@enoteca.co.jp
営業時間
ショップ 11:00~21:00
カフェ&バー エノテカ・ミレ 11:00~21:00(L.O.) 22:00(CLOSE)
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