速報!2018年シャンパーニュの出来栄え

シャンパン

ボルドーやブルゴーニュのヴィンテージについてはこと細かに記憶していても、シャンパーニュのヴィンテージとなると比較的無頓着な人が少なくない。

ノンヴィンテージかプレステージ・キュヴェという両極端な日本のマーケットではそれも止むなし。ノンヴィンテージでは収穫年は意味をなさず、プレステージ・キュヴェは最良の年と決まっている。

とはいえ、5年後くらいから市場に出始める2018年ヴィンテージのことは、記憶の片隅に留めておくべきだ。

文句なしの素晴らしさ!

ブドウ

2018年10月、いつものとおりシャンパーニュ地方の取材に出かけた際、ルイ・ロデレールの副社長兼シェフ・ド・カーヴであるジャン・バティスト・レカイヨンは、満面の笑みを浮かべてこう言った。”Absolument Exceptionnel !(文句なしの素晴らしさ!)”と。

そこでまず、昨年9月7日にCIVC(シャンパーニュ委員会)が出した公式声明を紹介することにしよう。

早熟で高品質、量的にも満足:シャンパーニュ地方における収穫は想定外の結果をもって終了した。最も早いエリアで収穫は8月20日に開始。8月中の収穫開始は過去15年で5回目となる。

例年にないほど雨ばかり降り続いた冬が過ぎ、4月からは日差しに恵まれ、過去10年の平均を大きく上回る高い気温を記録した。この例年にない天候のおかげで、ブドウの樹は急速に生育。理想的なコンディションのもと開花し、成熟が進んだ。

そして収穫の時を迎えると、ブドウの房は完璧な健康状態でたわわに実り、平年と比べて糖度は高く、芳香成分も豊かだった。収穫はもちろん手摘みで行われ、時折、朝の気温がかなり低い日もあったものの(8月26日のランスは0℃)、夏のような天候のなか静かに展開された。

全セクターにおいて商品化可能な規定収量である10,800kg/haを達成。

さらにその上、今年の素晴らしい収穫によって、ブドウ栽培農家およびシャンパーニュ・メゾンはリザーヴワインを再構築することが出来た。これにより、今後不安定な天候の年が訪れても、問題なく対処できるだろう。

果汁の品質は将来生まれるキュヴェにとって素晴らしい兆候を見せている。冬から春にかけての試飲を通し、素晴らしいヴィンテージであることがはっきりするだろう。

この公式声明を裏付けるように、ルイ・ロデレールの2018年の収穫は、平均11.5度の高い糖度を記録。その一方酸は低めで、糖酸比でいえば1959年に似ているという(筆者が過去に経験した1959年のシャンパーニュはどれも、50年の熟成に耐える素晴らしい出来である)。

質も高く、量も豊富なため「いろいろな実験ができた」とジャン・バティストは語った。醸造における亜硫酸の添加量の削減、デブルバージュの時間短縮、自生酵母による自然発酵、赤と白のコトー・シャンプノワ(注1)など試せたそうだ。

(注1)シャンパーニュ地方で造られる非発泡性ワインのこと

醸造、アッサンブラージュにひと工夫

シャンパーニュ畑

年が明け、3月と4月の2回に分けてシャンパーニュ地方を訪問した。各メゾンでは2018年ベースのアッサンブラージュが決まった時期であり、この季節になると前年の、つまり今年は2018年のヴァン・クレール(瓶詰め前のベースワイン)を試飲することができる。

シャンパーニュはブドウの熟度が高ければよいわけではない。フレッシュネスのためにはバランスのとれた酸も欠かせない。あるメゾンではリンゴ酸の低さが気にかかり、一部のワインに敢えてマロラクティック発酵を施すことを避けたという。

そのメゾンでクラマン村のシャルドネを試飲してみると、なるほどグレープフルーツのアロマが顕著で、テクスチャーは柔らかく、糖度の高さがうかがえた。一方、モンターニュ・ド・ランスでも北向き斜面に位置するヴェルジー村のピノ・ノワールは、しっかりしたストラクチャーながらフレッシュネスも十分。

2018年は相対的に日照量の少ないクリュのブドウがアッサンブラージュの鍵を握ったようである。

また別のメゾンのノンヴィンテージでは、なるべく酸のしっかりした2018年のワインで構成しつつ、リザーヴワインの量を例年よりもわずかながら少なめにアッサンブラージュ。こうすることでキュヴェ全体が重くなるのを避けたという。

質、量ともに恵まれた2018年とはいえ、醸造およびアッサンブラージュでは各メゾン、多いに知恵を絞ったようだが、これには2003年や2009年など近年続く暑い年の経験が生かされている。

レゼルヴ・アンディヴィデュエルとは何か?

ブドウ

最後に、収穫量についても触れておきたい。

シャンパーニュの規定収量は毎年CIVCが決めている。2018年の規定収量は公式声明にもある通り、前年の2017年と同じ1ヘクタールあたり10,800kg。しかしながら2018年はこれに加え、最大4,700kg/haのレゼルヴ・アンディヴィデュエルが認められた。

このレゼルヴ・アンディヴィデュエルとはいったい何だろうか?

シャンパーニュの安定した品質のために、リザーヴワインが重要なことはご存知のとおり。そこで収穫翌年に瓶詰めされる分と独立して、将来ノンヴィンテージにアッサンブラージュされるリザーヴワイン用の収穫量がレゼルヴ・アンディヴィデュエル(略してRI)として加算することが認められる。2016年、2017年とシャンパーニュ地方は霜害続きで収穫量が少なく、その穴埋めとして2018年は4,700kg/haのRIが認められたのだ。

ただしこのRI、上限が決まっていて各メゾン累計8,000kg/haが最大である。つまりこれまでに6,000kg/haのRIを申請したメゾンの場合、2018年は2,000kg/haのRIしか認められない。ところがこれには裏技があり、質の劣る17年のリザーヴワインを蒸留すれば、その分を上質な2018年のワインで補うことが許されているという。

したがって、多くの生産者が上限いっぱいにあたる15,500kg/haの収穫をしたはずだ。

どの生産者も潤沢なリザーヴワインを蓄えたうえ、ヴィンテージはもちろん、ロゼやプレステージ・キュヴェも瓶詰めした2018年。あの長命で知られる1959年ヴィンテージの再来となるのか。

それが判明するのは5年以上先の話である。