ワインのミネラル感って何のこと?

現代ワイン界最高の知性と評されるJancis Robinson女史によると、ワインを表現する言葉「ミネラル感」は2000年代後半から使われ始めたテイスティング用語だそうです。

しかし、多くの人は「ミネラル感のあるワイン」がどんなワインを表しているのか、実際はよくわかっていないのではないでしょうか?

今回は、そんな謎のテイスティング用語ミネラル感についてのお話をします。

ミネラル感とは?

ミネラル感とは何なのか?

期待をさせてしまい申し訳ありませんが、実はその答えを誰も知りません。というのも、ミネラル感という言葉に定義はなく、専門家の間でも共通の認識がないのです。

その為、専門家にとってミネラル感を定義することは、ここ数年のホットトピックでした。

実際に(※)マスター・オブ・ワインのSam Harrop氏が、ワインジャーナリストなどの専門家を対象に行った「ミネラル感とは何か?」というアンケートでは香りという人、味という人、さらにはワインを褒める要素Xだという人などに意見は分かれたそうです。

あなたにとってのミネラル感とは何ですか?

(※)ワイン業界において最も名高い資格。有資格者は世界で約340名ほどしかいない。

ミネラル感を感じる香り

ミネラル感は香りだと言う人にとって、「ミネラル感のある香り」は以下のような表現をされる香りではないでしょうか。

①石油香

②火打ち石

③マッチを擦ったような香り

しかし、残念ながらこれらの香りは、土壌に含まれるミネラルと直接関係はないようです。

石油香はブドウの果皮由来で生成されるTDN(トリメチルジヒドロナフタレン)という成分、その他の香りは醸造に由来する硫化物BMT(ベンゼンメタンチオール)の香りだと特定されています。

ミネラル感を感じる味わい

一方、ミネラル感を味に感じるという人にとって、「ミネラル感のある味わい」は以下の特徴がないでしょうか。

①高い酸味

②絶妙な苦味

③塩味

②、③は同じ成分が原因と考えられています。その成分はコハク酸と言われる有機酸。また、①も総量として有機酸(コハク酸を含む)が多いということを示しています。

ブドウが海に近い場所で造られているから、ワインに塩分が含まれているわけではないのです。

酵母により生成されたコハク酸が主となり、他の有機酸とのバランスで塩味のように感じると言われています。

コハク酸は貝類の主な旨味成分で、単体で感じるとやや塩気のあるような苦い味わいです。

ワインを褒める言葉X

プロでさえミネラル感を「ワインを褒める言葉X」として使用している可能性があります。

言葉に言い表せない、美味しいワインを褒めるときに使う言葉という認識があるのかも知れません。

ミネラル感についてわかっていること

上記のようにミネラル感という言葉の定義は人によって異なり、曖昧でつかみどころのない表現です。そこで、現在までに科学的にわかっていることをいくつかご紹介します。

ミネラル感という表現が用いられやすいワインの傾向

イギリスのワイン評論家Oz Clarke氏は自著GRAPES&WINESで、ミネラル感についての事実として以下のようなことを挙げています。

①灌漑されて育った浅い根を張ったブドウから造られる新世界のワインよりも、旧世界のワインに感じる。

②スクリューキャップの普及により、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランに多く感じられるようになった。

③成熟度が低いヴィンテージのワインの方がよりミネラルを感じさせる。

スクリューキャップは硫化物を発生させやすい栓、また成熟度が低いヴィンテージは味わいのバランスとして強い酸味を感じさせます。やはり硫化物と高い酸度との関係はありそうですね。

土壌成分は直接関係しない

土壌に鉄分が含まれているから鉄の香りがする。石灰質が含まれているから、石灰の香りがする。

一昔前に言われていたこのような事は、残念ながら科学的にありえないようです。

土壌中に特定のミネラルが豊富だからといって、ブドウがそれらを大量に吸い上げ、果汁中に人間が感知するほどの濃度になることはありません。

植物は必要な栄養素を、必要な分だけしか吸収しないからです。

また、もし果汁中のミネラルが豊富だったとしても、それは酵母にとっての栄養分が多いということ。

さきほど挙げた火打ち石の香りなどの硫化物は、酵母が発酵するのに苦しんだ際に発生させる成分です。

つまり、皮肉なことにミネラル豊富なブドウ果汁から造られたワインは、果実味が全面に出たミネラル感の少ない味わいになってしまいます。

まとめ

「ミネラル感」という表現がいかに抽象的な言葉かお分かりいただけたでしょうか。

もしあなたがワイン愛好家でテイスティングコメントを披露する機会があるなら、取扱いには少し注意が必要な言葉かも知れませんね。

また、上述したように土壌成分との直接的な関係は否定されていますが、特定の土壌に感じる一貫性のある味わいはプロの間でも共通の認識があり、土壌がワインの味わいに影響するということは間違いのない事実。

今後のさらなる研究が気になるところです。