老舗日本料理店「なだ万」赤坂ジパング 支配人に聞く! 和食にワインを合わせるコツ
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自宅でワインを飲むとなると、和食に合わせるという方も多いのではないでしょうか。といっても、自己流で合わせてみても何となくしっくりこない、と思っている方も多いはず。
今回は、創業180余年以上を誇る老舗日本料理店、なだ万が運営する「赤坂ジパング スーパーダイニング」の支配人でシニアソムリエとして数えきれないほど多くのゲストにワインをオススメしてこられた横尾 正樹氏に、和食にワインを合わせるコツをお伺いしました。
目次
世界中のワインを合わせることができるのが、和食
大学卒業後外資系のホテルに務めた後、2002年になだ万に入社し、16年に渡りサービス一筋で活躍されている横尾氏。「ワインのことを勉強するのが楽しくて仕方がない」という横尾氏は2005年にソムリエ、2009年にシニアソムリエの資格を取得し、現在も試飲会があるとそこに出かけてはワインの最新情報を集め続けているそうです。そんな同氏によると、実は和食こそ、世界中のワインと合わせて楽しむことができる懐の深い料理なのだとか。
「イタリアンに行くとやはりイタリアワイン、フレンチに行くとフランスワインを飲みたくなりますよね。その国の郷土料理に合う各地のワインが揃っているので、その国のワインが合うのは当然です。ところが和食の場合はそういったセオリーがないので、合わせるワインを自由に選ぶことができるのです。」
なるほど、もちろん、日本でもワインは造られていますが、フランスやイタリア各地の郷土料理とワインの組み合わせほどには発展していません。ですがそれがデメリットではなく「自由」と捉えると、和食とワインの世界はもっと広がるのかもしれません。
実はシャブリではない? 刺身に本当に合うワインとは
和食の定番料理と言えば、魚介の刺身。ご自宅で楽しむ方も多い料理ですが、ワインを合わせるとなると、ぴたりと合う銘柄が意外とないと思っている方も多いのではないでしょうか。横尾氏に、刺身に合わせやすいワインの代表を聞いてみました。
「刺身に合わせやすいのはシャルドネですね。
特に、樽ではなくステンレス熟成をしたシャルドネがオススメです。…と、お話するとフランス北部の銘醸ワイン、シャブリが合うのではと思われる方も多いかもしれませんが、実はミネラル分豊富なシャルドネは風味が強すぎて合わせにくいこともあります。
やさしく繊細な味わいの刺身には、シャブリよりももう少し南の産地で造られる、丸みのあるシャルドネがオススメです。例えば、個人的にはイタリアのシャルドネを合わせるのが好みです。
また、当店では冷凍ものなどを使わず、自家製の料理がほとんどなので、やさしい味わいが特徴です。そんな料理には、実は酸やミネラルが際立った冷涼な産地のワインよりも、丸みのある南の産地のワインの方が合わせやすいんですよ。」
赤ワインしか飲まない!という人にオススメするワイン
和食を食べたい、けれどワインなら赤ワインがいい、という人も多いと思いますが、そんな時にはどんな赤ワインをオススメしますか?
「赤ワイン1本で通す場合は、断然ピノ・ノワールをオススメすることが多いですね。様々な食材を使う和食に合わせやすいということももちろんですが、ピノ・ノワールは香りが華やかでインパクトが強いので、最初の一口でゲスト同士の距離が縮まるという効果もあります。そして合わせる料理が変わったり、時間が経過すると共にワインも変化したりして、テーブルにドラマが生まれるというのもおもしろいですよ。」
なるほど、味わいだけでなく、香りの華やかさなども合わせるポイントになるとはおもしろいですね。もし肉料理に赤ワインを、と言う場合はどのようなワインがオススメでしょうか。
「和食は、醤油や味噌にみりんや砂糖を合わせたような甘辛い味付けの料理が多いので、甘みとスパイシーさのあるスペイン産のテンプラニーリョをオススメすることが多いですね。同じような理由で、カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンなども肉料理によく合います。」
マリアージュは味だけで完結しない
「以前シャンパーニュのクリスタルとお寿司を楽しんでいらっしゃる外国人のお客様がいらっしゃって、その組み合わせは本当に羨ましかったです! マリアージュには、味わいだけでなく、料理とワインの格やイメージを合わせることも大切です。
例えば、ルイ・ロデレールのブリュット・プルミエと当店のスペシャリテ、生雲丹プリンもオススメの組み合わせです。高級食材の生雲丹にコンソメジュレを合わせたメニューは見た目にも美しく、華やかなシャンパーニュと合わせるとワクワク感も加わって、より素敵なマリアージュになると思います。
また、フォアグラを使った茶碗蒸しには、カリフォルニアのシャルドネもよく合います。」
生雲丹プリン コンソメゼリー
フォアグラ茶碗蒸し
頭でっかちにならない
「和食は、多種多様な素材が集まってできている料理じゃないですか。ですから、それぞれピンポイントで素材にワインを合わせるというよりも、外的要素から合わせるワインを選ぶようにしています。
例えば私は、今日の10人のゲストの会はどのような会なのか、ということを考えます。どんな方がいらっしゃっていて、どんな目的の会なのか。お店の雰囲気や空間を含めて、頭でっかちにならずに、合わせるワインを選ぶことが大切です。」
和食には繊細なワインを合わせなければいけないのでは、という先入観がありましたが、まるみがあるワインを合わせる、華やかなワインを合わせるなど、意外な組み合わせを教えていただき、とても勉強になりました。また、素材だけでなく様々な要素を考慮してワインを選ぶというヒントは、実際に数多くのゲストにワインをおすすめされてきたソムリエならではの視点ですね。
100種以上を揃える赤坂ジパングのメニューには、洋の要素を取り入れた和食も多数あり、様々な国や地域の食文化を吸収しつつ発展してきた和食の多彩な魅力を体現しています。和食には、世界各国のワインを柔軟に合わせる楽しみがあるということがよくわかりました。これからはもっと自由に和食にワインを合わせていきたいですね!
横尾氏、ありがとうございました!
取材協力:赤坂ジパング スーパーダイニング
赤坂ジパング スーパーダイニング
【住所】〒100-0014 東京都千代田区永田町2-14-3 赤坂エクセルホテル東急14階
【営業時間】
レストラン 17:00~23:00 (L.O. 22:30)
バー 17:00~23:00 (L.O. 22:30)
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