100点を連発するカリフォルニアのトップワイナリー「ドミナス・エステート」

ドミナスのオーナーファミリーとワインメーカー

オーナーファミリーのシャルロット・ムエックスさん(左)と、ワインメーカーのトッド・モステロ氏(右)

ペトリュス、オザンナ、ベレール・モナンジュなどボルドー右岸のスターワインを育てあげた世界屈指のワインメーカー、クリスチャン・ムエックス氏。同氏が1980年代にカリフォルニアで創設し、今やカリフォルニアのトップワイナリーに数えられるのがドミナス・エステートです。

今回、創業者クリスチャン・ムエックス氏の愛娘であるシャルロット・ムエックスさんが、ワインメーカーのトッド・モステロ氏と共に初来日!シャルロットさんは南アフリカに移住し16年間にわたり野生動物専門の獣医として活躍中で、来日もワインのプロモーションも初めて。親日家である父親のクリスチャン氏より「初めてのプロモーションは日本で。」とアドバイスがあり、今回の来日が実現しました。

今回は、最新2015年ヴィンテージのワインをはじめ、ドミナスのラインナップを味わいながら、ワイン造りについてお話を伺いました。

建築家からワインメーカーの道へ

トッド・モステロさん

アメリカ、南カリフォルニア生まれのワインメーカー、トッド氏はもともと建築家を目指して大学で勉強していましたが、ワインと運命的な出会いによって進路を変えたという異色の経歴の持ち主。フランスでワインを勉強したいと考えた彼はすぐにフランスに渡り、ボルドー大学でフランス文学を学ぶ傍らブドウ畑のマネジメントを学び、最終的にはボルドー大学でワイン醸造学の修士学位を取得しました。

大学卒業後は、シャトー・オー・ブリオンやジャン・ピエール・ムエックス、チリのアルマヴィーヴァなど、錚々たるワイナリーでワイン造りに携わった後、約10年前にドミナス・エステートで働き始めました。

世界一ではなく「パーフェクトなワイン」を造る

ブドウ畑

ドミナス・エステートの畑 ※小さく見えるのがトッド氏(左)とクリスチャン氏(右)

トッド氏は昔、クリスチャン氏に「君はどんなワインが造りたい?」と聞かれ、逆にクリスチャン氏に「あなたはどんなワインが造りたいのですか?」と聞いたところ、「パーフェクトなワインが造りたい。」と答えられたというエピソードを話してくださいました。

トッド氏は当時「世界一のワインを造りたい」と意気込んでいたそうですが、一番を目指すということは、ワインに順位をつけること。ボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュなど世界中に偉大な産地がある中、そんなことには何の意味もないということを悟り、当時のトッド氏は自分の考えを恥じたそうです。

また、クリスチャン氏が言う「パーフェクトなワイン」を造るということは、他者ではなく自分との闘いでもあります。自問自答し続けながら、常に良いワインを造り続けなければなりません。こうして、ワイン界のレジェンドと言われるクリスチャン氏の姿勢に感銘を受けたトッド氏は、自分でも「パーフェクトなワイン」を造りたいと思うようになったそうです。

「花火のように一瞬」なタイミングを見極める

ブドウの粒

ブドウを100粒入れて重さを計る道具を使って、ブドウの熟し具合をチェックすることも

パーフェクトなワインに必要なのは、完璧な状態で熟したブドウ。トッド氏曰く、ブドウのピークは「花火のように一瞬」だそうで、その瞬間を狙って収穫ができるように細心の注意を払っているそうです。

現在ドミナス・エステートには35の区画がありますが、収穫の2ヶ月前くらいから徐々にブドウの成熟度のチェックを始め、収穫の直前になってくると1日2回の頻度で、ブドウをプレスしたり、重さを計ったり、ジュースにして成分を見たりしながら成熟具合を確認していくそうです。

「ブドウを収穫した後にワインメーカーができることはない。」とトッド氏が言うように、それまでの畑仕事の全てが注ぎ込まれたブドウを収穫するタイミングを見誤るとその後の修正はできないそうで、どれだけ収穫のタイミングに注力しているかということが伝わってきます。

ブドウには決して水を与えない

ブドウの根っこ

(左)灌漑をしなかったブドウ樹の根っこ、(右)灌漑をした根っこ

ドミナス・エステートのワイン造りで最もユニークな取り組みといえば「ドライファーミング」が挙げられます。1年中乾燥しており、秋はほとんど雨が降らないと言われるナパ・ヴァレーでは水不足が深刻な問題となっており、ほとんどのワイナリーが灌漑(多くが点滴灌漑、つまりブドウの樹に少しずつ水を与える設備が普及)を行っています。そんな中、クリスチャン氏はワイナリー設立当初から灌漑は絶対にしないと決め、ドライファーミング(灌漑をしない、つまり人工的に一切水を与えずブドウを育てること)を実践してきたそうです。※

灌漑をしないことの大きなメリットは、ブドウの根っこの育ち方。上記写真を見ていただければわかるように、灌漑をしないブドウの樹は、地下深くにある水分を求めて下に向かって垂直に根を伸ばします。一方で、灌漑をしたブドウの樹の場合、地上近くに撒かれた水分を求めて、根を水平に伸ばすことになります。地中深くに伸びたブドウの樹は、水分だけでなく、ミネラルや養分などを吸い上げることができるようになるそうです。

湿度が10%を切ることもあるほど乾燥したナパ・ヴァレーでドライファーミングを実施しているワイナリーはほぼ皆無とのこと。マヤカマス山に面しており、山が貯水した水分の恩恵を受け、さらに砂利質の下に粘土質の土壌を保有する恵まれた畑だからこそ、ドミナス・エステートではドライファーミングが実践できるそうです。

※一部例外があり、樹齢3年までの若木には地中深くにある水分を吸い上げる力がないため、状態を見ながら水を与えるそうです。

100点を獲得したグレートヴィンテージ

ドミナス2015

今回テイスティングしたのは、来春リリース予定の最新2015年。

2015年のドミナスは『ワインアドヴォケイト』誌で100点を獲得したグレートヴィンテージです。トッド氏によると2015年は冬に雨が降ったものの、生育期の春も夏も雨が少なかったためブドウの樹は大きくなり過ぎることなくほどほどに育ち、バランスの取れたブドウが育ったそうです。

ワインは深みのあるミディアムルビー色。非常にフレッシュなブルーベリーやブラックカラントのアロマに、スイートハーブのニュアンス。ナパのワインにありがちな、煮詰めたフルーツのようなニュアンスは全くありません。凝縮した果実味とみずみずしい酸味、活力に満ちた味わいと驚くほど長い余韻が印象的で、トッド氏が「私にとってパーフェクトなワインとは、光り輝いていて飲んだ時にリフト(持ち上げる)してくれるワイン」と仰るように、エネルギーに満ちた味わいは、飲む人の気持ちをすっと持ち上げてくれるような魅力に溢れています。

お値打ちな第3のワイン

オテロ2015

こちらは、ドミナス・エステートで造られる3番目のワイン、オテロ。価格はドミナスの1/5以下ですが、実は、ドミナスの畑全35区画から収穫したブドウを別々に醸造してワインにし、樽で9カ月熟成した後にバレルテイスティングをして、どの樽をドミナスやセカンドのナパヌック、そしてオテロになるかを決定しているとのこと。つまり樽熟9カ月まではドミナス、ナパヌックと全く同じ造り方をしているのがこのオテロ、という何とも贅沢でお値打ちなワインなのです!

こちらも、来春発売予定の2015年を試飲させていただきました。

ワインは輝きのあるミディアムルビー色。チェリーやレッドカラント、花のチャーミングなアロマ。旨味を伴うジューシーな酸と、キメ細かなタンニンが特徴的です。トッド氏の表現を借りると「青春時代の淡い恋心」のようなワインだそうです。繊細でみずみずしくピュア、確かにそんな雰囲気をもった忘れがたい味わいです。

これまでのオテロも十分に美味しかったのですが、2015年はチャーミングさに深みと複雑さが加わり、ワインとしての品質がワンランク上がった印象。テイスティングしたスタッフもその進化に驚いていました。

こちらのオテロ、リリース当時は日本限定のワインとしてエノテカだけが輸入していましたが、徐々に他国でもその存在が知られるようになり、今は複数の国で販売しているとのこと。2015年の品質の高さに、今後ますます人気が高まりそうな予感です。

ワインボトル5本

ドライファーミングに代表されるフランス伝統のブドウ栽培と、カリフォルニア仕込みの最新のテクノロジー、そして旧世界と新世界双方で経験を積んだワインメーカー、トッド氏の才能。

ワイン界のレジェンド、クリスチャン・ムエックスが心血を注いで築き上げた土台に、それらが掛け合わされた現在のドミナス・エステートのワインは、すでに「パーフェクトなワイン」に近い存在と言えますが、今回のテイスティングを通じて、我々の期待を遥かに上回る進化の可能性を秘めていると感じることができました。

そのポテンシャルを存分に感じることができる最新2015年のリリースは来春予定です。ワインラヴァーの皆さん、入荷をどうぞお楽しみに!