奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?

これまで何度かお話ししてきましたが、テイスティングはワインとともに変化、発展を遂げてきました。近年は英語圏のプロフェッショナルの台頭により、さらに変化していっています。
特に味わいの表現は甘み、酸味、アルコール度といった要素よりも、官能的、触感を表す用語が主体となりつつあります。また表現するよりも理解する、分析する、判断する、という方に重きが置かれているようです。
そこで、かなり軽視されるようになった印象をもつのが、外観についてのコメントです。あるマスターソムリエは「外観などみる必要はない。大切なのは香りからだ」と言うほどです。確かにコメントをする際に「外観は濃いめのルビー色で…」と必ずしも言う必要はありません。近年、コンクールでも「フラッシュコメント」といって、そのワインの本質だけ捉え、コメントするというテクニックも重視されるようになっています。生産者が行うセミナーなどで、コメントを求められた時に、「外観は…」から始めてしまうのは無粋といえば、無粋でしょう。「そんなこと聞きたいんじゃないけど、、、」という顔をされてしまいます。
それでは外観はもう見る必要がなくなったのかというと、そうではありません。外観には情報が詰まっているからです。香りをとるのに苦手意識がある方、感覚から結論へ落とし込むのを得意としない方にとって、外観は嗅覚(香りを捉える)をサポートしてくれるものだと考えています。
コナンドラム・レッド2014は、濃縮感のある濃いダークチェリーレッドですが、色調にグラデーションがみえます。これはよくみられることではありません。このように、いかにも成熟度が高いブドウが用いられたとみられるワインにおいては、色調は一様に濃く、2014年であれば、縁にはっきりと紫の色がみえるものです。しかしこのワインは、中心から縁にかけて異なる色の層がみえます。これをグラデーションといいます。このグラデーションはワインの重要な情報を示します。ワインは若いうちはマット(一様)な色調をしていますが、熟成とともにグラデーションがみえてきます。中心にはまだ若さ、活力を示す濃い色調、縁にかけて発展を示す明るいオレンジからレンガ色がかった色調です。飲み頃を示すといってもよいでしょう。しかし、このワインはまだ三年目。若いワインです。これはブドウ品種のブレンド(アサンブラージュ)からもたらされるものだと推測します。
黒ブドウでも、明るい朱色のものから、紫がかったもの、色素が豊富な黒みの強いものまで、様々です。単一ブドウ品種のワインの場合、色調は一様ですが、ブレンドにより複数の色調を備えます。色調にグラデーションを与えるとともに、バランスがとれるというか、極端な色が和らぎます。このワインは色調には、黒みも、紫も、際立っていません。香りの密度が高く、チェリーリキュール、カカオ、エスプレッソ、杉、ジンジャー、鉄分質と、やはりヴァリエーションがあります。味わいはクリーミーで、甘みと苦味のバランスが特徴ですので、すき焼き、角煮、ブルーチーズ、ガトーショコラなど幅広く、楽しむことができそうです。
CONUNDRUM(コランドラム)
ケイマス・ヴィンヤーズで知られるカリフォルニア、ナパ・ヴァレーの伝説的な生産者ワグナー・ファミリー・ オブ・ワインが造る赤。「コナンドラム=謎」という名の通り、様々なブドウをブレンドしていながら使用品種は 非公開というユニークなコンセプトで造られるフードフレンドリーなワインです。
「グラデーション」を感じるワイン
コナンドラム・レッド/ コナンドラム(アメリカ カリフォルニア)
3,500 円 (3,780 円 税込)