第29回 テンション

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公開日 : 2018.3.25
更新日 : 2023.7.12
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奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?

テンション

テイスティング用語を解説する、この連載もはや29回を迎えます。この企画の打ち合わせをした時は、「まあまあできるかな?」思いつつも、ネタがつきないか、疑心暗鬼でした。しかし、そんな心配は不要でした。テイスティング用語は主として、フランス語が日本語に訳され、使われるようになりました。特に田崎真也さんがテイスティングコメントを体系的にまとめて紹介したことで、私を含めて、コンクールに出場するソムリエのほぼ全員が仏和コメントをしていました。それが、「Sous Bois 森の下草」「Herbassé ハーブの香り」などです。

現在、ワイン業界はフランス語主導から、完全に英語主導へとスイッチしました。そして英語による用語も広く使われるようになり、ワインを様々な観点から表す用語も日々増えています。それらは以前に比べ、かなり洗練され、仏語派の私でも使い易さを感じてしまいます。

Tension テンションは、最近になってよく聞かれるようになった言葉です。「テンションが高い」など気分の高揚を意味する認識が強いと思いますが、「緊張、張力」という意味もあります。ワインの場合には、香りや味わいにキリッと張りつめた印象がある、と解釈ができるでしょうか。「凜とした印象」とも言い換えることができると思います。「ゆるやか」の反対といったほうが分かりやすいでしょうか。テンションは、ミネラル香、酸味がある、引き締まったボディ、といった、香りや味覚要素とは少し違ったもので、あくまでも印象、雰囲気を表すものと私は解釈しています。エレガント、気品がある、といった人物像の表現です。緊張感のある人、凛とした人、そういう印象を与えるものです。初めて聞いたのは、2000年頃。あるシャンパーニュメゾンの方からでした。非常に面白い言い方だなと関心すると同時に難解すぎて、テイスティング用語を貪欲に取り入れる私でも使うのには躊躇をしました。それが近年、特に英語圏の方々からよく聞かれるようになったのです。Tensionはフランス語でもあるのですが、英語としてのほうが解釈が進んだのです。

このように、フランス語の語彙としてすでにあったものが、英語という世界語として使われることによって、その汎用性が高まることがテイスティング用語でも、よく起きているのです。

ルイ・ロデレールブリュット・ナチュール 2009

ほんのりベージュをおびたイエローゴールド、エレガントな香りの立ち上がり、よいテンションがある。洋梨やリンゴのコンポート、スモーク、金属的なミネラル感、バタートースト。スムースエントリー、かつクリーミー、中盤で豊潤な広がり。同時に豊かで溌剌とした酸味が味わいをストレートに伸ばしてゆき、長い余韻をつくる。シャンパーニュはギフトに最適ですが、このシャンパーニュは、贈る相手が「凛とした」雰囲気をもっている人に最適です。また食事でも、背筋が伸びるような、煌びやかなダイニングルームのレストランが相応しいですね。

「テンション」を感じるワイン

2009年 ルイ・ロデレール ブリュット・ナチュールフィリップ・スタルクモデル(フランス シャンパーニュ)

15,000 円 (16,200 円 税込)

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