第28回 ヴェジェタル

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公開日 : 2018.3.25
更新日 : 2023.7.12
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奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?

1 甘み

よいワインというのは時代を超えて普遍的なものですが、評価基準というのは常に更新されてゆきます。ワインが地酒として楽しまれていた時代は、その土地に合うよう、家族の食卓で楽しめるように、十分に熟成させて、渋みがやわらかくなったものがあるべき姿でした。イタリアのリゼルヴァやリオハのグランレゼルヴァなどがその代表といえるでしょう。それらのワインは酸化熟成により、動物的な香りを放ち、それが「郷愁」として飲み手を惹きつけたのでしょう。

しかし、現代では動物的な香りは、「ブレット」と呼ばれる評価へと変わり、腐敗酵母、揮発性フェノール、および酸化的な醸造による「欠陥」とも解釈されるようになっています。オーストラリアなどで醸造を中心に学んだプロのテイスターたち、そんな香りをかぐやいなや、「OUT!」とグラスを下げさせてしまうほどです。少し行き過ぎのような気がしますが。さて、逆もあります。ネガティヴなイメージだった表現、評価が、ポジティブに変わることもあるのです。「 ヴェジェタル」は、文字通り、野菜、草などの香り、つまり未熟香として評価されていました。近年では、紅茶、枯れ葉、樹皮、タバコなど複雑性を与える香りをヴェジェタルとするようになり、野菜や芝生など青臭い香りは、カベルネ・ソーヴィニヨンやソーヴィニヨン・ブランなどに比較的よく含まれる「ピラジン」という新たな解釈が生まれ、区別されたのです。生産者の方と話していると、自らのワインを「ヴェジェタル」と遠慮なくコメントしています。昔、「失礼にあたるから、生産者を前に、ワインをヴェジェタルと表現するのは控えるように」と師匠から教わったことを思うと、隔世の感があります。

また、タバコや紅茶などの香りは熟成香として捉えることが多いのですが、若いうちからも備えるワインもあります。このようなヴェジェタルの香りをもつワインは熟成のポテンシャルが高い、という評価をする造り手もいらっしゃいます。よいワインのキーワードのひとつにまで発展しているわけです。

名手コーニョによる、バローロ・カッシーナ・ヌオーヴァ 2011は、明るいガーネットオレンジ。香りは表現豊か。プラムのコンフィ、鉄分質、ドライローズ、ナツメグ、ジビエ。さらに複雑さを与えるヴェジェタル(タバコ、枯れ葉、炭)。味わいはしなやかで、かつストラクチャが強く、熱さも感じます。大変緻密で豊かな渋みは、ヴェジェタルの深みのある香りと重なり、長い余韻をつくります。イタリア料理ファンにはたまらない季節がやってきましたね。白トリュフです。白トリュフを味わうには最高のワインです。30分ほど前にデカンタに移して、大ぶりのグラスでお楽しみください。

「ヴェジェタル」を感じるワイン

バローロ・カッシーナ・ヌオーヴァ/ エルヴィオ・コーニョ(イタリア ピエモンテ)

6,000 円 (6,480 円 税込)

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