奇怪な用語が飛び交うワインテイスティング。フルーツや花ならまだしも、スパイスにミネラル、焦げ香??しまいには動物臭?! ですが、これにはきちんと意味があるのです。ソムリエ目線で、毎回難解なテイスティング用語や表現などを解明! あなたもイメージを膨らませてテイスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか?

近年の世界のワイン生産および消費において、特筆すべき伸びをみせているのがスパークリングワインです。力強い味わいのものから、さわやかな味わいのものへ嗜好が転換している、醸造技術の発展、伝統国大手メーカーの進出、健康志向(辛口嗜好)、料理の傾向(軽く、素材重視な)など様々な理由が考えられますが、伝統国、ニューワールド問わず、スパークリングワインは好調です。
特に伝統国にその成長ぶりを顕著にみることができます。シャンパーニュのような高額なものだけでなく、フランスのクレマン、スペインのカヴァ、イタリアのスプマンテ、オーストラリアやイギリスのスパークリングも注目です。イタリアは、全土でスパークリングワインを産出することができ、いずれも好調です。特に、プロセッコは品不足、原料不足に悩まされるほどです。アスティ、ランブルスコも再ブームを巻き起こしました。そしてフランチャコルタは古くより別格的な存在で、いまもその輝きを放っています。
本連載の第1回目で、ルイ・ロデレールクリスタルについて書かせていただいたコラムでは、スパークリングワインにおける「シャンパーニュの別格たる所以」にてついて触れました。シャンパーニュは歴史、文化、そのブランド力など別格であることは間違いないのですが、その人気と品質において、おびやかす存在といえるのがフランチャコルタです。イタリアでは多くのDOP(銘柄)においてスティルワインとスパークリングワインの生産が認められていますが、フランチャコルタはスパークリングに特化しています。マルケーゼ・アンティノリのキュヴェ・ロワイヤルは、鮮やかなイエローゴールド、大変キメの細かい泡立ちです。香りは開いていて、潰したリンゴ、パン・ド・ミー、ジャスミン。加えて、スパークリングワインではあまり感じられない、コリアンダー、サンダルウッドのようなスパイス、そしてミラベルの香りがあり、深みを与えています。
ミラベルは、黄すもも(プラム)のことで、フランスではアルザス地方名産ということもあり、アルザス・リースリングやピノ・グリで感じられる香りとして認識されています。白ワインの表現であまり使われることはなく、果実の成熟度の高さ、香りの凝縮感、深みを示します。シャンパーニュにおいても、ミラベルの香りは稀で、高品質かつ、長期熟成を経たヴィンテージにおいて感じられるものです。そのミラベルの香りがスパークリングワインから感じられるのですから、品質の高さが伺えます。味わいは、フレッシュ感にあふれ、透明感を与えるストレートな酸味が、余韻で心地よい苦味と調和し、味わい全体をいつまでも長く引き締めます。アペリティフとしても楽しめ、食事を通して味わうこともでき、日本料理からエスニック料理もオールラウンドに楽しめる「ユニヴァーサルな」スプマンテです。
「ミラベル」を感じるワイン
マルケーゼ・アンティノリ フランチャコルタ・キュヴェ・ロワイヤル/ モンテニーザ(イタリア ロンバルディア)
3,500 円 (3,780 円 税込)