シャンパンボトルのラベルに小さく書かれている「NM」や「RM」などの文字。
何のことを示しているか、ご存知ですか?
今回はシャンパンに必ず記載されているこの2文字のアルファベットの意味について、ご紹介したいと思います。
目次
「NM」や「RM」は生産者について教えてくれている
この2文字のアルファベットは、生産者の業務形態を表す業務記号を示しています。
シャンパンボトルには、これに続いて各生産者にあてがわれている生産者登録番号が記載されおり、表示することが義務づけられています。これにより、そのシャンパンの生産者が大手メーカーなのか小規模生産者なのかなどの情報が分かります。これらの他に「CM」「MA」「RC」「SR」があります。
それぞれの読み方と意味
それぞれの読み方と意味をご紹介します。
NM:ネゴシアン・マニュピラン
生産者から購入したブドウや果汁、原酒を醸造してシャンパンを造る大手メーカーや個人がこれに当たります。自社畑を所有している場合もあり、シャンパンの生産者の大半を占めています。モエ・エ・シャンドン、クリュッグ、ヴーヴ・クリコ、サロン、ボランジェなど。
RM:レコルタン・マニュピラン
自社畑で収穫したブドウを使用し、醸造も手掛ける生産者のこと。多くが小規模生産者です。生産量も少ないため、人気の高いメゾンのシャンパンは入手が困難なことも。ジャック・セロス、エグリ・ウーリエ、マキシム・ブラン、ポール・デテュンヌなど。
CM:コーペラティブ・ド・マニュピラン
生活共同組合のこと。組合員である生産者が栽培したブドウで造り、組合のブランドとして市場に出荷されます。ニコラ・フィアット、ボーモン・デ・クレイエールなど。
MA:マルク・ダシュトゥール
有名レストランやホテルなどが生産者に依頼して造るプライベートのブランド。有名レストランのタイユヴァンやトゥールダルジャン、有名ホテルのリッツやペニンシュラが有名メゾンに造らせたシャンパンに記載されています。
RC:レコルタン・コーペラトゥール
ブドウ栽培農家兼協同組合員のこと。加入している組合から製造過程の原酒や出荷準備ができているシャンパンを買い取って、自社ブランドとして販売する場合に記載されます。
また自社畑のブドウを使用しているものの、組合の醸造機器を使用する場合もRCの記載となります。クロード・カザル、シャンシーラなど。
SR:ソシエテ・ド・レコルタン
ブドウ栽培業者団体のこと。同じ団体に属している会員の畑で収穫されたブドウから造られたシャンパンに記載されます。アンドレ・クルエなど。
「NM」と「RM」の味わいの違い
大手メーカーが手掛ける「NM」のシャンパンの強みは、何と言っても毎年安定された味わいであることと生産量が多いことです。
特に、毎年リリースするノンヴィンテージ(NV)のシャンパンは多くのワインファンが口にすることからメーカーが自信を持って送り出しているため、味に差が出ないよう、ストックした複数のリザーブワインをその年に造られた一次発酵済みの果汁とブレンドして安定化を図っています。
一方で「RM」は自社畑のブドウのみでシャンパンを造るため、その土地の特徴であるテロワールが如実に現れるという魅力があります。生産量は少なくコアなファンが多いため、人気メゾンのシャンパンは入手困難となることが多いですが、他にはない味わいを楽しむことができます。
「NM」「RM」それぞれのオススメアイテム
「NM」「RM」それぞれのオススメアイテムをご紹介します。
ルイ・ロデレール(NM)
自社畑を所有している人気メゾンのルイ・ロデレール。国内外の多くの芸能人が好きなシャンパンメゾンとして挙げており、中でも1万円を切る価格のブリュット・プルミエは多くのワインファンに飲まれています。芸術品とも言われるほど精巧に造られたシャンパンは、酸味や大人の風味をたずさえたゴージャス&クールな仕上がりです。
リザーブワインはオークの大樽で2年から5年間熟成させたものを使用。セイヨウサンザシ、トースト、アーモンドのような香ばしくコクのある風味が果実味と絡み合い、絶妙な味わいを生み出しています。
ポール・デテュンヌ(RM)
モンターニュ・ド・ランス地区のグラン・クリュであるアンボネイ村に位置している、老舗の家族経営シャンパンメゾンであるポール・デテュンヌ。平均樹齢35年から40年という古樹から生み出す壮大なシャンパンは全て、グラン・クリュで収穫されたブドウから造られています。
205Lという小さめのシャンパーニュ産オーク樽で熟成されており、焼きリンゴや炒ったアーモンドなどが香る力強い味わいとなっています。
まとめ
シャンパンの大まかな味わいの傾向を知りたいという人は、この業務記号をチェックしてみるといいかもしれませんね。
もちろん、「RM」なのに毎年安定したNVのシャンパンをリリースしていたり、「NM」なのに自社畑のテロワールの特徴が見事に現れていたりするシャンパンだってあります。業務記号を確認して、「なるほど」と思ったり「意外!」だと思ったりするのも、またひとつの楽しみ方ではないでしょうか。
参考:小林史高監修『シャンパン&スパークリングワイン完全ガイド』池田書店