ワインにはなぜコルク栓が使われているのか?

ワインは特別な酒です。理由は数あるアルコールの中で、唯一コルクで栓が打たれているからではないでしょうか。

今日に至るまで、いったいどのような道のりをコルクが歩んできたのか見てみましょう。

コルクとは

木目調のその栓はどんな材質でもいいわけではなく品種が決まっているのをご存知でしょうか。

学術名Quercus Serverと呼ばれる樫の木が使われているのです。この樫の木は地中海性気候一帯で生育しており、南仏、イタリア、スペインなどが有名です。中でも世界最大の栽培量を誇るのがポルトガルで、世界の70%のコルクは同国で産出されているのです。

2000年前後にはイギリスのスーパーマーケット、セーフウェーやマークス・アンド・スペンサーが中心となって「コルクは森林伐採につながる」と非難する声もありましたが、実際は樹齢25年以上の樹を9年から12年おきに剥いで使うので、「コルク=環境に悪い」といのは早合点だったようです。

コルクの歴史

コルク自体は約2000年前~4000年前にギリシャですでに使われていたのではないかといわれていますが、ワインの栓として使われるようになったのは1700年代のことだったとか。

そもそもコルク栓を打つためにはガラス瓶がないと成り立たたず、その瓶自体が1600年代に開発されたのです。誕生秘話はいくつかあり、どれが正しいのかはっきりしないようです。(愛好家がたまたま発見したとか、スペインの聖職者が巡礼中にコルクで栓をしたところ長期熟成に耐えうることに気づいた…などです)。

それまでは樽から直接注いで飲んだり、オリーブオイルを表面に垂らしたりしていたようなので、決して長熟できるような貯蔵条件ではありませんでした。しかしガラス瓶とコルク栓が誕生によって、長期熟成能力を発揮するようになったこと、運搬性が高まり遠くまでワインが運ばれるようになったこと、何よりもスパークリングワインが誕生するなど、ワイン史に大きな貢献を果たすこととなったのです。

コルクの問題点

このようにワイン史に革命を起こしたコルクですが、いつの日か大きな問題が指摘されるようになったのです。それがTCA由来のブショネ(Cork Tinto)です。

このブショネに影響されたワインは湿った新聞紙のような好ましくない香りを発します。生産者も情熱をこめて丁寧にワインを造っており、最初から「ブショネを出したい」と思ってコルク栓を打っているわけではないのです。しかし、どうしても一定の割合でこの欠陥が発生し、そのツケを消費者が払わされるようになったのです。

代替栓の台頭

そのような中、コルクに変わる代替栓を探そうというのは自然の流れで、人工樹脂やスクリューキャップが台頭していきました。

特にスクリューキャップの浸透が著しく、2009年には世界の15%、ニュージーランドに至っては現在99%がスクリューキャップで占められるようになりました。

コルクの逆襲

コルク業者もスクリューキャップの躍進をいつまでも指をくわえてただ見ているわけにはいきません。ここ数年間、TCAを感知できないスーパーコルクが次々と開発されています。

たとえばDIAM、TwinTop®です。最も新しいのがポルトガルの世界最大のコルクメーカーアモリム社が2016年に発表した「NDテック」(NDは「non-detectable(感知できない)」の意味)です。

このコルクならばブショネの原因になるTCAが0.5ナノグラムを超えることは決してなく、アモリム社も「ブショネが完全にないコルク」と胸を張っています。(0.5ナノグラムはプールに目薬を1滴落とすような量です)世界のプレミアムワインでも瞬く間に導入されており、ボルドー右岸のシャトー・ラ・コンセイヤントもそのうちの1つです。

もしNDテックのデメリットをあげるなら、ほかの栓と比べて圧倒的に高価ということではないでしょうか。

合成コルク     €70‐250
スクリューキャップ €100
DIAM        €170-200
NDテック               €500

※1000本辺りの栓の値段です。

コルク vs スクリューキャップ

これらの新しいコルクの発売に加え、2017年イギリスのオックスフォード大学のCharles Spence教授が興味深い実験結果を発表しました。

全く同じ赤ワインをそれぞれコルクとスクリューキャップで打栓された容器に詰め替えて、被験者140人に飲んでもらったそうです。その所、中身は全く同じなのに113人はコルクで打栓されたワインを「美味しい」と答え、残りの27人だけがスクリューキャップのワインを支持したそうです。

この実験が明らかにしたことは、ワインの味覚は、飲み手はワインを口にした時の直接的な風味だけでなく、栓などの視覚的要素が味わいまでに影響を与えているということです。

最後に

前述のコルクNDテックでさえ一長一短があるので、両手をあげて「コルク万歳!」とは言い放てるわけではありません。

しかし、ソムリエナイフを使ってコルクを開けるまでの時間は何とも優雅なものです。実際、筆者もアカデミー・デュ・ヴァンというワインスクールでソムリエを目指す受講生対象に抜栓のレッスンを担当していますが、ただ開けばよいとは考えておらず、「どんな風に開けたらお客様にエレガントに見えるか」「よい時間を過ごしていただけるか」ということまでにも気を配っています。

そのコルクを扱う所作はソムリエの間で受け継がれてきたものでもあり、やはりワインを飲むときの楽しみの一つであることは間違えないでしょう。

※データはJancis RobinsonのPurple Pageより