チーズにはアニメでも馴染みのある大小の穴があります。このチーズらしさとも言える丸い穴は「チーズアイ・チーズの眼」とも言われます。このチーズアイは、チーズの製造過程で出来るもので、大きく2種類の穴があります。
今回は、このチーズの穴がどう造られるのかご説明します。意外に知らないチーズの豆知識なので、新たなチーズの面白さを発見してみてください。
チーズは微生物の働きで熟成する
チーズの穴の正体を紐解く前に、チーズの製造過程の熟成で欠かせない「微生物」の存在を知る必要があります。
チーズはワインと同じく、熟成により味わいに変化が生じる生きた食べ物です。製造過程で使用される微生物は、カビ(青カビ・白カビなど)、酵母や細菌があります。
細菌と聞くと難しそうですが、よく知られている「乳酸菌」などのタンパク質を分解する菌です。チーズの風味や味わいに直結すると言っても過言ではないのが、使用される細菌の種類です。
乳酸菌の他には、ウォッシュチーズの湿り気のある表皮を造る「リネンス菌」や、チーズの風味を造る「プロピオン酸菌」があります。あまり聞き慣れないプロピオン酸菌。実は、この細菌がチーズアイを作る正体です。
チーズの穴は大きく2種類
細菌が造る丸い穴
チーズの穴は、製造過程で使用される細菌によって出来上がります。アニメの印象も強い大きく丸い穴のあるチーズは、プロピオン酸菌を加えて造られたエメンタールチーズです。
プロピオン酸菌を乳に加え高温熟成させることにより、酢酸が生成され、チーズに炭酸ガスが発生し穴が出来ます。プロピオン酸菌を用いて造られた穴は、約1㎝~数㎝ほどです。この穴は、形も綺麗な円形をしています。
“酢酸”を生成するだけに、やはり味わいにも「酸っぱさ」が特徴です。この大きなチーズアイが見られるチーズの代表が、スイスのエメンターラー(エメンタール)、オランダのマースダム、ノルウェーのヤールスバーグです。乳にプロピオン酸菌を加え、味わいの風味を造ります。酸味は強すぎることはなく、穏やかな風味なので、サラダなどに使用されます。
エメンタールチーズは、チーズフォンデュにも使用されるチーズです。プロピオン酸菌を働かせるためには、塩分も抑える必要があるため、とても優しい味わいです。塩分も控えめで、味わいも穏やかなハードチーズなので、栄養価が高く素晴らしいチーズだと言われています。
プロピオン酸菌以外にも、乳酸菌も熟成中に穴を造る場合があります。穴は大きいものではなく、プロピオン酸菌の穴よりも小さな穴である場合が多いです。こちらも細菌によるチーズの穴の正体です。
製造過程で造られる不均衡な穴
もう一つは、「メカニカルホール」と呼ばれます。こちらも製造工程で造られるチーズの穴ですが、細菌が造る穴とは見た目が異なります。チーズは、カードと呼ばれるミルクプリンのように緩やかに固まった状態で型に入れ、水分を抜いていきます。
そのカードを型に重ねる際に、カード同士の隙間に空気が入り込んでしまった状態です。他には、製造中の温度や熟成中による過程で、穴が出来る場合があります。
メカニカルホールは、先ほどのプロピオン酸菌による穴と比べると、楕円形やいびつな形の小さく不均衡な穴が特徴です。断面で比べてみても穴の違いがよく分かります。メカニカルホールは、ハードやセミハードのチーズなどによく見掛けますが、長期熟成させるチーズには、あまり多くは無い方が良いと言われています。
まとめ
チーズの特徴でもあるボコボコとしたチーズの穴。穴を生成しているのが、微生物の存在であることは驚きではないでしょうか。
このチーズの穴には、水分が溜まることがあります。これは、チーズアイに溜まった「チーズの涙」と呼ばれます。大きなチーズアイやチーズの涙など、身近なチーズを手に取り実際に見掛けると、ついつい品質不良なのかと疑ってしまいがちですが、これがチーズの特徴だと分かると面白いですよね。
ワイン同様、チーズも生きている食べ物なので、新たな発見が面白さに繋がります。ぜひ、チーズの穴を見比べて、味わいの違いも感じてみてください。